地銀の経営危機と金利の上昇~今、経営者が備えるべきこと

厳しい地銀の現状

本年8月28日に、金融庁の金融行政方針が発表されました。

ここ数年来、金融庁は地銀のビジネス環境の悪化に警鐘を鳴らしつつも、その自律的な改革・改善を誘導してきましたが、ここにきて制度面からも地銀の業績改善を後押ししようとしているようです。

地銀に対する主要な施策は以下のようなものです。

1.独禁法適用除外:
地方サービス維持を前提に地域シェアが高くなっても合併承認

2.業務範囲の拡大:
一定の条件のもと、事業会社の議決権保有制限の緩和

3.早期警戒制度:
収益性改善が見込めない金融機関に対し業務改善命令

4.預金保険料率:
健全化のインセンティブとして、健全性に応じた可変料率導入

収益力向上に向けた1.2.のようなアメを与える一方で、3.4.のようなムチも取り入れることで、地銀が収益強化に向けた具体的な取り組みをすることを促しているのです。

これを見ると、金融庁は地銀の統合を進めようとしているようにも見えますが、果たしてそうでしょうか?

実は金融庁も人口の減少という未曽有の危機に対して、明確な解を持っている訳ではありません。

金融庁の遠藤長官も、5月の講演の際に、“経営統合は時間稼ぎ”、“答えがあるわけではないが、何か手を打たなければ未来はない”と率直に危機感を語っていました。

地銀の状況はそれほどまでに厳しいのでしょう。

地銀の利鞘低下の原因

金融行政方針に、地銀の利鞘の推移が乗っています。
2007年の2%弱から2018年には1%程度にまで一貫して下がり続けています。

銀行の採算悪化の原因として、低金利・マイナス金利が挙げられる場合もあります。
しかし、ゼロ金利は2013年(当初は1999年からで一時的に解除)以降、マイナス金利は2016年以降ですから、これらは利鞘の低下の直接の原因とは言えません。

わたしは、収益環境の厳しい金融機関が、貸出ボリュームの拡大を図って利鞘を削ったボリュームの拡大競争を進めたのが最大の原因だと思っています。

足許でも地域によっては中小企業に対して0.5%を切るような金利水準を提示しているケースも散見されます。昔であれば超優良企業向けに適用していた優遇金利です。

こうしたことを続けている限り、地銀の利鞘の縮小は今後も進行していくでしょう。

一方で、運用残高に対する経費比率は地銀平均で0.8~0.9%程度ですので、利息では殆んど経費を賄えておらず、これ以上の利鞘圧縮は大きな経営上の問題となります。

一方で地銀の貸倒率は?

更に、これも金融行政方針に記載がありますが、一貫して減り続けていた貸し倒れが足許増加に転じています。

貸倒率(信用コスト)は2008年から下がり続けここ数年はほぼ0%だったのですが、2017年から上昇に転じ、2018年は0.1%程度となっています。

僅かな上昇ではありますが、上述の地銀の収益率からみるとかなり大きな影響を及ぼすものとみられます。

貸し倒れの今後の動向は不透明ながら、これまで景気拡大局面が続いて来ていることや世界情勢などからは、今後上昇しても不思議ではありません。

こうした環境下で、地銀がいつまでも低利攻勢を続けられるとは考えられません。

経営者が備えるべきこととは

冒頭の金融庁の方針に絡めて言えば、多くの地銀はいずれ(たとえ時間稼ぎに過ぎなくても)合併による経費率引下げと同時に金利適正化(引き上げ)による収益確保に向かわざるを得ないでしょう。

そうしなければ、金融庁による業務改善命令が待っています。
もちろん、画期的な収益モデルを作り上げる銀行もあるでしょうが、一部に限られることでしょう。

金融庁も、地銀統合に伴う地域独占などによる金利引き上げには目を光らせているものの、適切な融資の対価としての金利の上昇は認容している節があります。

一方で、企業側は下手をすると、すっかり低金利の環境に慣れきって、借入のコストをきちんと認識していないケースも多いようです。

是非、経営者のみなさまは、金利が高くなったり、調達環境が多少悪化したりしても、しっかりと収益を計上し、資金繰りを回していけるのか、自社のビジネスモデルを常に検証いただければ、と思います。

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筆者紹介

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株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
松野賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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