コロナ禍を生き抜く経営~コロナ対策は三局面でとらえよ!

先行きが見えないコロナウイルス感染症危機(以下、コロナ危機)で、多くの企業が厳しい状況に直面しています。

過去のバブル崩壊では、金融資産の暴落に伴う金融機関や企業B/Sの悪化をきっかけに、企業→消費者に影響が広がったのですが、今回は、一部生産活動への影響があるものの、感染回避のための消費急減が主な要因です。

そのため、まず不要不急の(接触を伴う)消費活動である宿泊・旅客輸送等が影響を受け、さらに外食や娯楽産業等へと広がっています。

そのせいか、BtoC企業の危機感が大きいと感じる反面、BtoB企業は、そこまで危機感を抱いていないようにも感じられます。

しかし、コロナ危機が長引けば、消費の鈍化が川上の企業群にも甚大な影響を与えるのは間違いなく、金融危機を併発する懸念もくすぶっています。

全ての企業が真の危機感を持ってコロナ危機に対応する必要があります。

勿論、社員等への感染を防ぎつつ、需要急減に対応するのが喫緊の課題ですが、コロナ危機への対応は感染の収束では終わりません。

むしろ、その後を含めた長期に亘るコロナ危機が与える影響への覚悟が必要です。

ここでは、コロナ危機を

の三局面に分け、その影響等を考えます。

①コロナウイルス感染が収束(ピークアウト)するまで

感染収束時期が、企業の一番の関心事でしょう。
現状、多くの企業で売上が見込めない事態になっています。

非対面・少接触型の取引を拡大する向きもありますが、全体での売上激減は避けられません。

売上が見込めず、営業活動もままならぬ以上、企業にとって、固定費の削減による最低限の収益確保・赤字幅の圧縮努力は不可避です。

典型的な固定費は、人件費・家賃・水道光熱費・リース料・広告宣伝費・租税公課等です。
資金繰りの面ではこれに借入返済等が加わるでしょう。

業況悪化に際し、これらの支出を抑えるため、人件費・租税公課等の制度支援は速やかに利用すべきですし、一部政策要請も出ている借入返済・水道光熱費・家賃・リース等についても早急に免除・猶予を検討・交渉すべきです。

私の知る会社は、緊急事態宣言が出たその日に、ほぼ全ての従業員を休業とした他、金融機関への返済猶予に加え、家賃・リース料の減免・猶予も依頼し、一定の成果を上げています。

従業員の収入が減る休業には抵抗もあるでしょうが、経営と雇用を維持するために必要なら、躊躇なく判断すべきです
(従業員も外出しなければお金を使いません。ローンがある方は銀行側への猶予交渉をすべきです)。

それでも出る赤字を補填するため、政府系金融機関の緊急融資の活用は有意義だと思いますが、これは赤字補填資金(単なる負債の積み上げ)であることは認識しておく必要があります。

この借入金に手を付ける前に、ぎりぎりまで固定費を抑え込んだ上で、自社の資金が尽きる、または債務超過になる時期をしっかりと認識し、場合によっては廃業すらも選択肢として検討すべきです。

現に、今回の危機に際し、自己資本が毀損する前にと、廃業を決められた会社もあります。

②コロナ収束後の需要の回復局面

感染が収束すれば、気持ちは少し明るくなるかもしれませんが、経営はむしろ厳しくなるかもしれません。

まず、一般に、資金需要は売上増加時期に増えます。

①の段階である程度資金的な余裕を持って②の局面を迎えなければ、資金に困窮してしまいます。

また、コロナに対する特効薬でも開発されない限り、回復の足取りは相当重くなります。

早期に、売上が損益分岐点に届かなければ長期にわたる赤字、ひいては廃業・倒産を余儀なくされます。

更に、今回大きく減少した多くの需要は元には戻りません。

例えば、テレワーク等の普及は、景気回復の足取りの重さも相まって、宿泊や旅客輸送、外食等のニーズを不可逆的に減少させます。

それ以外も、感染影響が長引けば、行動習慣や生産工程の変化等により元には戻りにくくなります。

従って、同じ商品・サービスを供給し続けるなら、従来以上に固定費や原価を下げるか付加価値を上げる努力が必要ですし、新たな需要に合わせ内容を変える必要もあります。

③需要回復後の世界

景気回復の一段落後も、以下のような社会構造の変化が続く可能性にも留意が必要です。

リスク感度の上昇

少なくとも今後10年単位で、国や人々は感染症等の発生に対して敏感になるでしょう。

近年の感染症流行では、さほど大きな出入国規制や行動規制等はありませんでしたが、今後は”新たな感染症”との情報だけで、物や人の流れが大きく抑制され、企業や人はそうした事態に備えた態勢を取ることとなります。

サプライチェーンの見直し

リスク感度の上昇に伴い、巷でも言われるようにサプライチェーンが見直されることでしょう。

これまでコストパフォーマンス極大化を目的に作り上げられたサプライチェーンは、米中対立や今回の事態で危機に弱いことが露呈しました。

また、食料品についても、一部の国では輸出に規制をかける保護主義的な動きが強まっています。

これを受け、サプライチェーンを単純かつ冗長にすると共に、需給に合わせて一定の地域内に留める動きは強まるでしょう。

その結果、グローバルな人と物の動きは従来よりも抑制されます。

大量生産・大量消費の終焉

現在のサプライチェーンは消費者の“無限”の欲望を前提に、多少のリスクはいとわず、効率的にものを安く大量に供給するために構築されました。

であれば、これの流れは(環境保護の動きも相まって)見直される可能性があります.

規模の利益を失った人・物の輸送はコスト高となり、海外旅行や車等、大量生産を前提に供給されている高額商品を、普通の人はなかなか手に入れなくなるという貧富の差の拡大も懸念されます。

物→サービス化の加速

上記を踏まえると、これからは人なり物なり、リアルな物体の移動を減らす傾向が強まるでしょう。

その結果、方向性としては二つ、グローバルでは、ネットなどを通じた非対面での情報流通が高まる一方で、逆にローカルでは、対面での物や情報のつながりが強まるかもしれません。

“③需要回復後の世界”は、先の話で空想の域を出ません。

過去の疫病感染の原因を見ると、多くはグローバル化なり人間の生息域の拡大が大きな原因です。

今回のコロナ危機は、人類の発展の一つの試金石なのか、それとも拡大への警告なのか。

歴史的な転換点の一つになりかねない大きな出来事ですので、経営者の方々には、足元も当然ながら、その先を見据えたかじ取りを考えていただきたいと思います。

平成バブル以降の様々な経済危機との比較で、今回のコロナ危機の、もしかすると唯一の救いどころは、“全員が被害者”ということかもしれません。

過去の危機は、震災のように地域が限定され直接の被害者と支援者の区分が明確であったり、各種バブル崩壊のように”銀行が悪い””不動産屋が悪い””IT長者が悪い”といった他責で捉えることが多かった気がします。

今回は、皆が被害者である以上、先ずは自ら頑張る、そして辛くなれば声を上げ、少し余裕のある人が手を差し伸べることでしか、この危機は乗り越えられないと思います。

日本の商売の源流には”三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)”という名言があります。

全員の危機だからこそ、皆が原点に戻り、皆で前に向かうことを、アタックスグループとして少しでもサポートしたいと考えています。

筆者紹介

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株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
松野賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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