高額な役員退職金が認められた判例に学ぶ!~そのカギは“貢献度”

役員退職金

今年の4月、ある税務訴訟に関する東京地裁の判決がでました。

この裁判は、泡盛の酒造会社が支払った「役員報酬」及び「役員退職金」について、沖縄国税事務所(以下、国税当局)が不相当に高額であるとして損金算入(税務上の費用への繰り入れ)をみとめなかったことを不服とし、処分の取り消しを求めたものです。

東京地裁は、役員報酬は過大であるとしましたが、役員退職金は「不相当に高額な部分があるとはいえない」とし、納税者の主張をみとめました。

役員退職金額の算出方法

高額な役員退職金について納税者側の主張が認められた判決は少ないため、この判決は世間の注目を集めました。

役員退職金が税務上の費用として妥当な額かどうかの判断には、一般的に以下の算式が用いられます。

最終報酬月額×勤続年数×功績倍率

当該会社も上記算式に基づき、代表者(創業者)に6億7千万円の退職金を支払いました。
これに対して、国税当局は、支払額が類似する会社との比較において高額であると主張しました。

具体的には、最終報酬月額について、同種の事業で規模が類似する法人を約30社(比較会社)抽出し、比較会社各社の役員報酬の最高額の平均報酬額を限度としてこれを超える部分は不相当に高額であるとしました。

ちなみに、比較会社の抽出にあたっては、沖縄県と熊本国税局管内で、売上規模が1/2以上2倍以下の酒造会社を選択しています。

しかし裁判所は、比較会社の代表者の報酬額には、高額なものと低額なものがあり代表者が当該会社の経営や成長に相当の貢献があることを考慮すれば、比較会社の平均額ではなく最高額を超えない限りは不相当とは言えないとし、納税者の主張をみとめたのです。

国税当局側は控訴しなかった(会社側は控訴)ため、退職金については確定しました。
国税当局は、敗訴は比較会社の金額にバラつきがあったためであり、平均額を使った手法が否定されたわけではないとして控訴を見送ったと思われます。

いずれにしても、画一的ではなく個別事情を斟酌し判断すべきとの判示は、現場に寄り添ったものといえます。

承継時にも気を付けたい退職金

事業承継を進める中で、先代の代表者の退職金問題は避けて通れません。

先代が創業者であれば、一般的に勤続期間は長く上記算式をあてはめると、退職金の額は高額となりやすいものです。

高額な退職金は税務署の調査で問題となると心配する向きもありますが、代表者の企業経営や成長への貢献を過去の利益等からしっかり説明できるようにしておくことが重要です。

アタックス税理士法人(東京・名古屋・大阪)では、役員退職金の問題など事業承継に関わる様々な課題に対しご支援を行っております。お気軽にお問合せください。

筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
愛知吉隆の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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