事業承継税制の落とし穴~適用は慎重に!第2弾

2018/2/8執筆のコラム
「事業承継税制の落とし穴~適用は慎重に!」の続きです。

前回は、今年の税制改正で使い勝手がとても良くなった「事業承継税制」を利用する際の検討ポイントをご紹介しました。
具体的留意点は次の5つでした。

1.組織再編実行の可能性があるか確認してください。
2.後継者の納税資金を確保してください。
3.後継者以外の相続人にも、遺留分対応、納税資金の確保などへの配慮が必要です。
4.相続人以外を後継者とする場合は、遺留分対応、相続税申告書の開示などが必要になります。
5.特例を活用して複数の後継者に株式を承継する場合は、株式が分散してしまいます。

しかし、本税制の留意点はこれだけではありません。

6. 組織再編の時期に注意

後継者は贈与日時点で役員就任後3年を経過している必要があります。
しかし、組織再編をした場合の後継者の役員就任期間は“再編後”の法人での就任から計算されるため、3年の就任期間を充足できない場合があります。

7.対象会社が外国会社株式を所有している場合

(1) 従業員の人数
子会社、孫会社、曾孫会社に外国会社がある場合には、その対象会社に5人以上の従業員が在籍していることが必要となります。

(2) 猶予額の計算
猶予額の計算は、その対象会社が所有する外国会社株式については、所有していないものと仮定した株価で計算します。

8.効果の検証

実際の猶予申請の手続きは複雑です。
適用に際し効果をしっかりと把握しておかないと、取消事由による経営上の制限や届出書の提出などの事務手続きの割には効果が得られなかった、ということもあり得ます。

9.贈与税の納税猶予を適用する場合

(1) 贈与株式数に注意
同じ贈与者からの同銘柄の株については、一度しか贈与税の納税猶予を受けられず、相続税の納税猶予も受けられません。

事業承継 参考:
アニメ動画で学ぶ「事業承継の基本」~村井税理士に聞いてみよう~|社長の知恵袋

また、代表者が直前に有していた株式数に応じ、贈与しなければならない株式数が決められています。

(2) 後継者の選び直しは困難
贈与後5年経過後であれば後継者が代表者から外れても取消事由には該当しません。

しかし、別の問題として、後継者には既に多くの株式を承継済みですので、その人を代表者や取締役から外すことは困難です。税制適用如何に関わらず、後継者選びは慎重にすべきです。

10.相続税の納税猶予を適用する場合

(1) 相続開始直前
相続税の納税猶予を適用する場合には、相続開始直前までに後継者が役員となっている必要があります。

(2) 相続開始後
相続開始後、8ヶ月の認定申請期間内に、自社株に係る遺産分割が決定している必要があります。

(3) 納税猶予の適用
後継者(候補)が相続人でない場合、先代からの贈与や遺言がないとその者に自社株が承継されないため、納税猶予は適用できません。

まとめ

以上、幾つか留意点を述べましたが、筆者は「事業承継税制を利用すべきではない」と言っているわけではありません。

「事業承継税制は得だから」「税制改正によって使いやすくなったから」と言って、安易にこの制度を利用すべきではない、と考えているのです。

あくまでも手法の一つとして、メリット・デメリットをしっかりと把握した上で利用するか否かを検討頂きたい、ということです。

前回も申し上げましたが、いずれにせよ、まずは現状を分析し、何が問題であるのかを把握した上でその解決策を検討することが必要です。

また、その解決策を実行する課程で発生する新たな問題についても事前に考慮しておくなど、総合的な視点で検討することも重要です。

「拙速な判断にはリスクあり」と、あらためて肝に銘じていただきたいと思います。

筆者紹介

アタックス税理士法人 社員 税理士 村井 克行
1987年 南山大学卒。「会計税務の知の集結と事例の体系化」を確立すべく立ち上げた「ナレッジセンター室長」を務めた後、現在は、組織再編や相続対策など、最新の税法・会社法の知識を生かした永続企業のための総合的な支援業務に従事。誠実で緻密な仕事ぶりは多くのオーナー経営者から高い評価を得ている。
村井克行の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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