自主廃業企業の経営資源を承継する!~休廃業・解散増加時代の事業承継のかたち

日本の中小企業の事業承継問題がクローズアップされる中、今年のはじめに商工リサーチから「2018年 休廃業・解散企業の動向調査」が報じられました。

それによれば、

2018年の休廃業・解散件数は46,724件と前年よりも14%増加、
一方で倒産(法的整理・私的整理)は8,235件と前年よりも2%減少

と、後継者不足等により業績が悪化する前に自主的に廃業を選択する経営者が増加していることが伺えます。

自主廃業企業の実態

実際、廃業時の資金収支はどうなっているのでしょうか?
興味深い情報が2018年度版の中小企業白書に掲載されていました。

まず、廃業するときにかかる費用についてですが、廃業した会社のうち36%は100万円以上、また15%は500万円以上の費用がかかったようです。

登記等の手続き費用のほか、設備や在庫の処分、契約解約の違約金等がその内訳です。

これらの費用は廃業時に支払わなければならない負債(借入金や仕入債務等)をすべて返済した上での支出ですので、廃業時には多くの資金負担が必要となることがわかります。

廃業する事業の「価値」が見過ごされている

次に、廃業時の経営資源の他社への引継ぎによる収入ですが、不動産等の換価が可能なもの以外に
(1)従業員・(2)販売先・(3)設備
の3つのポイントが中小企業白書に指摘されていました。

(1)従業員

廃業する会社から再就職・独立を希望する従業員は39%で、
そのうち廃業する経営者の支援により再就職・独立が決まったのは51%でした。

結果、現経営者の関与で就業する従業員は全体の20%程ですので、
廃業する事業からの人材流出が多いことがわかります。

(2)販売先・顧客

廃業時に継続的に取引がある取引先・顧客は63%で、
そのうち66%で他社に引継がれていますが、
譲渡した対価をもらっているのは6%しかありませんでした。

また、引継がれていない顧客が34%もあり、
その理由も「引継ぎをするという発想がなかった」が最多と、
引継ぎに対する意識が低く、事業から多くの顧客が流出していることがわかります。

(3)設備(不動産を除く)

廃業時に設備を所有していたのは全体の63%で、
そのうち54%が他社に引継がれていますが、
譲渡した対価をもらっているのは25%しかありません。

また、引継がれていない設備も46%あり、
その理由も「引継ぐ価値があるとは思わなかった」が最多と、
こちらも引継ぎに対する意識が低いことが伺えます。

3つの経営資源を次世代に引き継ぐ

ここで考えたいのは、廃業時にこれまでの経営資源をバラバラに引き継いでしまえば、それぞれの価値にしかなりませんが、この3つの経営資源を組み合わせれば、ひとつの事業となり価値が増加する可能性があるということです。

受け取る側にとってみれば、これらの3つの経営資源が揃っていれば、すぐにでも事業が始められる、既存事業とのシナジー効果が期待できる等、多くのメリットがでる可能性があります。

廃業する側にとっても、対価にプラスαの価値(M&Aではこれを「のれん」といいます。)が認められる可能性があります。また、従業員や顧客にとっても、雇用や取引が継続するというメリットが生まれます。関係者すべてにとってプラスになるのです。

当社でも廃業時の経営資源の引継ぎをM&Aという形でサポートさせて頂くことがあります。

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例えば会社全体では赤字なのですが、黒字になっているセグメント(取引先や商品、それに関連する従業員や設備)のみを取り出してM&Aを行った結果、引継ぐ会社が見つかるとともに思いがけない価値が認められ、廃業側と引継側ともにWIN―WINとなった事例が多くあります。

このように廃業時に経営資源をまとまった形で引継ぐことは、廃業側は廃業費用の圧縮になりますし、引継側は実質M&Aのメリットを効率的に享受することができます。

逆にこれが行われないと、その会社がこれまで培ってきたノウハウや経営資源がなくなってしまうことになります。これが中小企業の事業承継の主流になってしまうと日本経済にとって大きな損失となります。

今の中小企業の経営者の年齢でもっとも多いのは69歳だそうです。今後はこれらの年代の方が引退される中で、廃業を選択する経営者も増加することが見込まれます。

中小企業の事業承継や廃業リスクに備えて、公的機関も手厚い支援策(例:事業引継ぎ支援センター、事業承継ネットワーク、事業承継関連施策等)を用意して貴重な経営資源が次世代に引き継がれるよう後押しをしています。

これからの中小企業にとって、公的支援を活用しながら廃業を考えている会社から経営資源を譲り受けることは、大きなビジネスチャンスにつながるのではないでしょうか。

アタックスグループでは、売り手・買い手のどちらかのアドバイザーとなって、中小企業のM&Aのサポートを行っています。
M&Aに関するご相談がございましたらお気軽にこちらからご相談ください。

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筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次
1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
池ヶ谷穣次の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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