現経営者の多くが団塊の世代ということもあり、 事業承継に関するご相談で、お付き合いのなかった先代や後継者の方と 新たにお目にかかる機会が増えてきています。

事業承継は大別しますと、社長や代表取締役という地位の承継も含めた「経営の承継」と「自社株の承継」とに分けることができます。しかし、分けられるからと言って、別々に検討すれば良いかというとそうではありません。

後継者が安定した経営を営むためには多くの議決権を確保すること、つまり多くの自社株を確保することが必要となります。

また、先代の財産のほとんどが自社株であるなど、他の(推定)相続人との関係で後継者が多くの自社株を確保することが 困難な場合もあります。このような場合には、自社株だけでなく、先代の他の財産についても併せて検討していかなければなりません。

つまり、事業承継に関する検討は、経営承継、自社株承継、先代の財産承継をセットで検討する必要があるのです。

後継者により多くの自社株を渡して、他の相続人との間での財産のバランスをとるには、自社株の評価は“低い”ことが望ましいのですが、この自社株評価は上場株式と違い、市場性がなく、極端な考え方をしますとM&Aでの売却や、会社を畳まない限り客観的な評価額を把握することはできません。

現実にこのような評価は不可能なので、国は相続税や贈与税を課す際の評価方法として財産評価基本通達で取引相場のない株式、つまり自社株の評価方法を定めています。

平成25年5月28日、国税庁よりこの自社株の評価に関する通達の改正が公表されました。オーナー家にとっての自社株の評価額は「類似業種比準価額」と「純資産価額」を組み合わせて算定することになります。

業種や総資産価額、従業員数、売上高より自社が「大会社」に該当する場合、通常“低く”算定される類似業種比準価額のみで評価することができますが、評価替後の総資産のうちに株式の占める割合が“特定の割合”以上になる場合(「株式保有特定会社」)には、“高く”算定される純資産価額(「S1+S2方式」も可)で評価します。

今回の改正は大会社におけるこの“特定の割合”を「25%以上」から、中会社や小会社と同様の「50%以上」に引き上げるというものです。大会社において類似業種比準価額で評価することができる可能性が高まるということになり、オーナー家にとっては喜ばしい改正です。

ただ、前述のとおり、本来は客観的な評価が望ましいところ、“特定の割合”以上であるか否かにより自社株の評価額が増減する、ということはそもそも良いのでしょうか?

昨今、グループ経営を意識した子会社化や海外子会社の好調な業績によって、総資産のうち株式の占める割合が高まっているという事例も多く見かけます。

オーナー家の株価対策重視が、経営的に“望ましい資本関係”を、“構築できない”、“維持できない”という事態を招いているとすれば、会社経営ひいては事業承継にとって、とても重要な問題であると考えます。

自社株にまつわる恐怖からの脱出法

筆者紹介

アタックス税理士法人 社員 税理士 村井 克行
1987年 南山大学卒。「会計税務の知の集結と事例の体系化」を確立すべく立ち上げた「ナレッジセンター室長」を務めた後、現在は、組織再編や相続対策など、最新の税法・会社法の知識を生かした永続企業のための総合的な支援業務に従事。誠実で緻密な仕事ぶりは多くのオーナー経営者から高い評価を得ている。
村井克行の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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