コッコファーム~元は養鶏農家

経営

熊本県の阿蘇のふもとの菊池市に株式会社「コッコファーム」という社名の中小企業がある。主事業は食品スーパーやレストランそしてバナナ園の経営などである。

当社の創業は今から42年前の1969年現会長である松岡氏が夫婦で鶏400羽の養鶏場からスタートしている。

松岡会長は地元の農家の長男であったが農家の後継を嫌い、高校卒業後都会にあこがれ、上京している。そこで11もの職業を転々とする中、結局、故郷の良さ・農業の良さに気づき、再び故郷にUターンし、農業で一旗あげることを決意する。

市場調査を重ねるとともに、子供のころ両親が飼っていた鶏の卵に着目し「コッコファーム」を社名とした。また経営理念もそれに合わせ、「温かい卵を直接お客様のもとに…」とし、朝、産み落とされた卵を温かいうちにお客様に直接届けることをビジネスとしたのである。

つまり、JAや問屋あるいは食品スーパーなどを通さない新鮮な卵の直販方式である。

もとよりこれだけでは差別化が不十分なので、より品質の高い卵を産んでもらうため安全・安心な飼料の製造に注力している。ちなみに当社の卵は1個当たり30円前後である。

創業当初は、朝、産んだばかりの卵をトラックに積み込み、夫婦で行商をして歩いたが、知名度不足もあり苦労の連続であった。

しかしながら、良い餌を使っているということもあり、次第に口コミで評判が広がっていき、供給をはるかに上回る注文が拡大していく。

こうした中で、松岡会長は販売方式を、これまでの「行商方式」から「集客方式」に変えることを決意する。つまり、卵関連商品を一堂に展示販売する食品スーパーのオープンである。

ただ卵を中心とした食品スーパーだけでは集客力が不十分と考え、お世話になった地域の農業者に呼びかけ、共同販売する「物産館」とするとともに、卵料理を中心としたレストランと、オーナー制の「バナナ園」も開設し、この空間を「たまご庵」という名の「テーマパーク」としている。

こうした努力と地域住民の高い支持を受け、その業績は年々高まり、今や売上高で25億円、従業員数は160名、鶏は10万羽を数えるまでに成長発展している。

農林水産省の「食料需給表」をみると、わが国の食料自給率は、今から50年前の1960年当時、79%であったものが、2009年統計をみると、僅か40%にまで低下している。

アメリカが128%、イギリスが70%、ドイツが84%、フランスが122%、そしてイタリアが62%であるということを考えても、わが国の食料自給率は危険な水準であり、「コッコファーム」のような元気なビジネス農業体の出現が強く期待される。

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筆者紹介

坂本光司

アタックスグループ 顧問
経営学者・元法政大学大学院教授・人を大切にする経営学会会長  坂本 光司(さかもとこうじ)
1947年 静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授、法政大学大学院政策創造研究科教授、法政大学大学院静岡サテライトキャンパス長等を歴任。ほかに、「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞審査委員長等、国・県・市町村の公務も多数務める。専門は、中小企業経営論、地域経済論、地域産業論。これまでに8,000社以上の企業等を訪問し、調査・アドバイスを行う。

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