サンタクロース公認の除雪機 -フジイコーポレーション株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2019年9月

2014年から、当メルマガでは自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介しています。

連載61回目の今回は、新潟県燕市で、除雪機、草刈機などの製品の開発・製造・販売を行うフジイコーポレーション株式会社(以下、F社)の池クジラぶりを見ていきます。

F社は、今から154年前の慶応元年(1865年)、新潟県西蒲原郡小池村で創業しました。

現在の主力製品は除雪機だが、1972年、歩道の除雪を人手のみに頼っていた時代、農閑期の冬に生産できる製品として歩行型除雪機の製造を開始しました。

1983年、藤井大介氏が社長に就任。

以降、積極的に輸出するようになったところ、2007年、「サンタクロース公認除雪機」として、フィンランドのクリスマス財団から認定されるに至りました。

以来、F社のロゴマークはサンタクロースです。

では、なぜF社の除雪機がここまで評価されるのでしょうか。

まず1つ目は、世界でも有数な豪雪地の新潟で、設計から開発・製造まで全て自社で行ってきたことから、レベルの高い技術力が培われたことが挙げられます。

日本海側の雪は水分を多く含むため、積もると硬くなり、また湿った雪は重くて飛びにくい。

家庭用でも使えるような大企業が大量生産している汎用除雪機では、こうした硬くて重い雪には深く入り込みにくいのです。

大企業2社は、汎用除雪機に焦点を絞り、国内では80%のシェアを占めています。

これに対しF社は、国内・海外を問わず、対象顧客を業務用や豪雪地のヘビーユーザーに絞り、難易度の高い製品作りに取り組んできました。

国内では、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本各駅、国土交通省(東北地方整備局、北陸地方整備局、関東地方整備局、中国地方整備局)、航空自衛隊千歳基地、当別分屯基地、また海外では、南極観測基地(あすか基地、みずほ基地、イギリス、イタリア、アルゼンチン)などで導入されています。

本年も日本の基地に納入しました。

特に南極観測基地では、F社機の性能の良さを目の当たりにした各国基地が、同じものが欲しいと注文します。

F社が、当初から、まず有名な場所やユーザー等に除雪機を納品し、ハイエンド市場における信用を獲得、認知度の向上に努めてきたことが功を奏しています。

2つ目は人財育成。

F社には新入社員全員を対象にした「ものづくり道場」があります。

60歳を超えた社員が道場主となり、F社の業務内容の把握のため、職種を問わず、実際に溶接などの技術を活用した課題が与えられ、最終的には卒業作品を作成させています。

さらに、職人の技術・技能のベースとなる要素技術の国家資格の取得が推奨され、知識と技術の習得に極めて熱心なのです。

さらに、F社の製品は海外で活躍することも多いため、社内の「内なる国際化」にも取り組み、毎年の様に、外国人を受け入れ、技術者研修に対応することで、内勤者にも海外を体感させています。

海外を意識した社内の体質構築に繋がり、国際人財の育成に力を注いでいます。

F社は、世界中の豪雪地帯のニーズに対応して、汎用機では対応し切れない高性能・高品質な製品作りで国内外から高い評価を得てきました。

F社は、世界中のどんなに厄介な雪にも対応できる「サンタクロース公認の除雪機」という市場(池)を築き、そのクジラとなっているのです。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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