手厚い巡回 サービスを行う補聴器販売業 -株式会社琉球補聴器

経営

西浦道明のメルマガ 2018年4月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載44回目の今回は、沖縄県那覇市で医療機器・補聴器・聴能訓練器等の販売、修理を行う、株式会社琉球補聴器(以下、R社)の池クジラぶりを見ていきたい。

R社は、1987年、現社長の森山賢氏(以下、M氏)の父、森山勝也氏が設立した。

家電や音響機器販売の会社に就職し補聴器を担当したが、社長の突然の死後、事業を引き継いで独立することになった。

当初、市場が小さく、お客さんは来ないし、取引先に挨拶に行っても相手にしてもらえず、創業者は、独立したことを後悔する毎日だった。

それでも、難聴に苦しむ方々の姿を日々目の当たりにすることで、いつしか、「この人たちを救いたい」という使命感が生まれた。

補聴器は、現在、日本国内5600店で取り扱われている。

しかし、その多くは眼鏡との併売である。

R社のある沖縄県内でも、補聴器専業はR社含め、わずか2軒しかない。

R社は、創業以来補聴器専業で黒字を続け、現在、沖縄県内で7店舗を展開、約70%のシェアを持つ。

では、R社が市場で高く評価されているのはなぜだろうか。

1つ目は、同業では類を見ない巡回サービスの成功である。

補聴器専業店の多くはパパママ・ストアで、待ちの体制から脱却できない。

また、眼鏡との併売ではお客様への手厚いフォローが難しい。
しかも、補聴器を使用するお客様の多くが高齢者で、滅多に店を訪れない。

そこでR社は社員を積極採用、お客様を一軒一軒訪問して手厚いサービスを提供することにした。

社員1人当たり、毎日15~30件のお客様を訪問、その人の聴覚や環境、好みに合わせた補聴器のフィッティング・修理などを行っている。

2つ目は、現社長M氏が社員たちと使命感共有に成功したことである。

創業者の父が、家庭を顧みずに猛烈に働いていたため、少年時代のM氏は父を大いに嫌っていた。

そんなM氏に大きな転機が訪れた。母が57歳の若さで他界したのだ。

母への恩返しが出来なくなったM氏は、母の愛したものを自分も愛そうと考えた。

ところが、母が愛していたのは創業者の父だったことに気づく。

M氏の足は自然と沖縄に向かい、父の会社に入った。

しかし、なかなか素直になれず、「自分は帰って来て会社に入ってやった」という気持ちが常にあり、それが社長就任4年目に行った全社員泊まり込みの研修で、大きな問題を起こすことになる。

社員全員から無記名で「あんたが社長だったら私は入社しなかった」「社長には愛情がない」「社長のリーダーシップが弱い」「社長は本音で語り合える社風を作っていない」「相談役(創業者)と社長では想いに差がある」「社長の考えも姿勢も甘すぎる」と激しく叩かれたのだ。

M氏は、社員たちを前にして膝をつき、大粒の涙をこぼしながら謝った。

M氏は、「自分への批判は、自分に変わって欲しいという期待の裏返しだ」ということに気づき、これまで抱いていた負の気持ちを感謝の気持ちに変えていった。

それを機に、会社・社員を大切にしようという気持ちが芽生え、父が作った理念をベースに、2年がかりで社員と共に社訓を作った。

毎朝約1時間朝礼を行い、社訓を社員たちと共有し、一体感を高めている。
 
R社は、顧客への手厚い巡回サービスとそれを実行する社員の使命感により、沖縄のお客様から高く評価されている。

R社は、これまでの業界には存在しなかった「沖縄で唯一手厚い巡回サービスを行う補聴器販売業」(池)のクジラになった。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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