トップシェアの衛生用医療マスク -サンエムパッケージ株式会社

経営

西浦道明のメルマガ 2017年11月

2014年から当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載39回目の今回は、静岡県島田市で、サージカルマスク等の製造を行うサンエムパッケージ株式会社(以下、S社)の池クジラぶりを見ていきたい。

S社は、1966年、現名誉会長の三宅隆夫氏(以下、M氏)が、紙器加工・印刷業として創立したのが始まりである。

ちなみに、S社の社名のサンエムの由来は、「作って(make)、売って(marketing)、儲ける(margin)」という3つの英語の頭文字Mに基づく。

創業当初は、静岡市を中心とした静岡県中部の地場産業であるプラモデルやサンダルなどを入れる紙器を作っていたが、競争が激しい市場だったため、紙に代わる新素材を探していたところ、1968年、不織布に辿り着いた。

不織布は、紙と布の中間的な素材という斬新さがうけ、最初に、ポケットティッシュ入れを開発したところ大ヒットした。

この成功に大きな期待を感じたが、素材の特性を活かした商品開発ではなく、年間通した安定生産ができなかったため、医療用の紙マスクに生産を移していった。

しかし、その紙マスクも大型受注により生産数は大きくなったものの、ヨーロッパでは安価でグレードが低いものとして取り扱われていることを知った。

そこで、このままでは先がないと思い、グレードの高いマスクを作ろうと不織布を使ったマスクの開発を始めた。

それまでのマスクは、使用する度に洗って使うガーゼマスクが主流であり、不織布を使ったマスクは使い捨てできる点も高く評価され、医療用はもちろん、産業用、一般家庭用と様々なニーズに応え、その市場を拡大していった。

その結果、S社は国内の衛生用医療マスクではトップシェアを誇り世界でも有数のマスクメーカーとして現在では、1,000種類、年間5億枚を超えるマスクを生産している。

不織布マスクが主力商品の企業は世界でS社のみである。

S社が、ここまでシェアを拡大できたのには、大きく3つの理由がある。

まず1つ目が、自社開発の自動生産ライン・生産機械の開発だ。

M氏は「素人だからこそ常識にとらわれない発想ができる」と、これまでの手作業では生産能力に限界があると判断し、世界初の超音波自動縫製装置を開発した。

これにより、極めて気密性の高い加工が可能になった。

医療用マスクの世界的品質機関である「ネルソンラボラトリー」の検査でも高い評価を得ている。

2つ目は、徹底した品質管理。

医療にかかわる商品のため、安心感と信頼感を持ってもらおうと、人間の手が触れるのは材料の供給以外には発生させないとか、室内の気圧を高くすることで外からの細菌や虫、チリ等の侵入を防ぐ等、業界トップ水準のクリーンな環境を生み出した。

そして3つ目は、ニーズに対応した商品開発。S社は、販売は大手企業に任せ、モノづくり(OEM)に特化している。

マスクの性能・形態・サイズなど、お客様の要望や用途を聞き、お客様と同じ立場に立つことを心がけている。

そのため、お客様からは「S社に頼めば、どんなマスクでもそろう」という絶大な信頼を得ている。

M氏は「今後も国内の圧倒的トップシェアは堅持しつつ、全世界シェア・ナンバーワンを目指し、世界各国の規格に応じたマスクの開発・設計を進めていく」と話している。

S社は、これまで世の中になかった、新素材の不織布にいち早く着目し、加工技術が難しいと言われる不織布の加工を可能にするための設備開発や、お客様の徹底したニーズ把握で、お客様だけの仕様にこだわる製品をつくりだし、「不織布マスク市場」(池)を創り、その巨大な池クジラとなっている。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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