お客様に親身に寄り添う -株式会社オオゼキ

経営

西浦道明のメルマガ 2015年11月

昨年来、当メルマガでは、自社独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している中堅中小企業をご紹介している。

連載15回目の今回は、サイズは少し大きいが、東京都内を中心に39の店舗を展開するスーパーマーケットチェーン、株式会社オオゼキ(以下、O社)の池クジラぶりを見ていきたい。

1957年創業のO社は、大型ショッピングセンターやコンビニエンスストア、ドラッグストア、さらにはネット販売など、多種多様な業態がひしめく食料品小売という市場で、売上高経常利益率7.8%という、同業の優良企業平均2.7%(共に2015年)と比べ、驚異的な高さを実現している。

ではO社は、なぜここまでの実績をあげることができているのだろうか。

「品揃え」に関し、大手スーパーはPOS管理で売れ筋商品を一括で仕入れ、仕入ロスと仕入価格の低減、そして業務効率化を図っている。

しかし、O社はまったく異なる。

「お客様が要望する商品があれば、たとえ一品からでもあらゆる方法で提供していく」ことにこだわり、ある意味、効率を捨て、同業の倍の商品アイテム12,000点/1店舗)を取り揃えている。

一方、「商圏」に関し、大手スーパーの多くが2km以内としているのに対し、O社は500m以内に狭めている。

O社は、0.1%という同業を圧倒するロス廃棄率の低さを誇る。

ロス廃棄率を抑えるには、お客様が求める商品を、効率的に仕入れ、効率的に売り切る必要がある。

O社は、商圏を狭め、商品アイテムと店員数を増やし、同業他社と比較して正社員比率を戦略的に高めることで、徹底的にお客様に親身になることにこだわった。

O社は「商圏500mのお客様の冷蔵庫がわり」という小さな市場(池)の圧倒的なトップ企業(クジラ)である。

O社の店舗は、世田谷や山の手周辺と、比較的高所得者が住むエリアに目立つ。

成城石井など、高級スーパーよりも、少し安い価格設定を戦略的に採ることで、500m圏内のお客様の来店頻度を高めている。

ただ、価格を安くしただけで、ロス廃棄率を驚異的に下げることはできない。

80万人いる「キャッシュバック会員」システムを使って、顧客の購買動向を時間単位で予測し、毎日、時間帯で商品陳列を変更し、0.1%のロス廃棄率を実現しているのだ。

商品の仕入れ権限が各店舗のバイヤーに委譲されていることも、低いロス率を実現する要因のひとつである。

その他にも、各店舗で販売価格を決めることが許され、粗利をコントロールできている。

O社は、お客様に親身に寄り添い、業界の非常識と言える方法で、「お客様が、欲しい時に、欲しいものを適正な価格で提供する」しくみを創りあげた。

そして、その結果、「池のクジラ」として、ここまで大きく、且つ強く、成長して来れたのではないだろうか。

  
  
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筆者紹介

西浦道明

アタックスグループ 代表パートナー
公認会計士 税理士 西浦 道明(にしうらみちあき)
1981年、株式会社アタックスを創業。中堅中小企業の経営の専門家として「社長の最良の相談相手」をモットーにしている。
東京・名古屋・大阪・静岡・仙台を拠点に、中堅中小企業の総合的なご支援に力を注ぎ、約200名のコンサルタントとともに日本に「強くて愛される会社」を一社でも多く増やすために汗をかく。
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