人に優しい「千葉オイレッシュ」【第112回】
千葉県君津市に千葉オイレッシュ株式会社がある。場所は東京駅からアクアラインを走り鴨川方面に向かうバスに乗り、2時間ほど行った正直交通不便な中山間地である。
当社の主事業は再生油の製造販売で、小さなマーケットはいえ、業界では有数の企業である。設立は1981年、現社長である野村進一氏が脱サラし故郷に帰り起業している。
野村社長は、大学卒業後、メガバンクに就職したが、次第に老いていく両親の面倒を見るためと、過疎化が進む故郷を再生したいと、あえて故郷での起業を選択したのである。
もともとが銀行員ということもあり、急成長・急拡大という業界や経営をあえて避け、当時、競合相手のいなかった資源の再生ビジネスに着目し「ゆっくり・着実」に経営を進めてきた。
この結果、現在、社員数は21名という規模ではあるが、創業以来、リストラ等一切せず、創業以来黒字経営を持続している。しかもその利益率は5%をはるかに超えている。
当社がこれまでぶれずゆっくりではあるが、着実に成長発展してきた理由は多々あるが、最大の要因は「人、とりわけ社員に優しい経営」に、愚直一途かつ真剣に取り組んできたからといえる。
例えば、当社は超ガラス張り経営で、損益計算書や貸借対照表といった決算書はもとより、月次ベースのそれも全社員にオープンである。加えて言えば、当社では社員持株会もあり、全社員が株主でもある。
また、賃金や福利厚生の面でも従業員を幸せにしたいという思いが強く、従業員1人当たりの月平均残業時間はなんと8時間以下である。これは野村社長が、「残業は本人だけでなく、帰りを待っている家族にも申し訳ない…」と年々減少させてきたからである。
ちなみに肝心の賃金はというと、従業員1人当たりの年収でいえば約673万円である。余談であるが、当社では社員を支える家族に感謝するため、社員の家族にもボーナスが支給されるという。
ともあれ、こうした野村社長の熱い社員思いの経営こそが、従業員やその家族に安心感を与え、会社への高い信頼感を生んできたのである。
ちなみに従業員満足度の1つの証である従業員の「離職率」はというと、なんと創業以来実質ゼロ%という。
こうした企業の存在を見せつけられると、企業の盛衰は全て経営者の背中と心にかかっていると言わざるを得ない。