東海バネ工業~値段は自分で決める中小企業【第105回】

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東海バネ工業~値段は自分で決める中小企業【第105回】

大阪市に本社がある「東海バネ工業」という社名の中小企業がある。大阪市に本社がありながら「東海」と名乗るのは創業者が岐阜県出身で郷土への思いが強かったからという。

当社の主製品は社名の通り、全国に約3,000社あるバネメーカーの1社である。周知のように、バネ業界は自動車、電機・機械といった組立型企業の典型的な下請産業で、事実、約3,500億円と言われるマーケットの約85%は、これら産業の量産物の受注生産をする中小企業である。

しかしながら、当社の実態は、これが同じバネメーカーかと思うほど異色である。

その最大級の違いをあえて言えば次の2点である。第1点は当社の生産するバネの数で、その大半が1個から5個である。多品種少量どころか多品種微量である。しかもその依頼の大半は「こういうものが欲しいが・・・」と言ったポンチ絵程度であり、図面などはない。結果、当社のバネづくりは、ほとんど全てが設計開発からのスタートである。

ちなみに、当社がこれまで手掛けた代表的商品は「スカイツリーの耐震用バネ」「人工衛星の姿勢制御のバネ」明石海峡大橋の免震用バネ」等、まさにオンリーワン的商品である。

現在の取引先は年間約900社、これら企業から依頼される商品アイテムは約3万件、平均単価は約5万円、リピーター率はほぼ100%という。当然のこととして、取引先1社への依存度は限りなく小さくなる。

しかしながら、こうした経営スタイルは、創業当初からではなかった。それどころか現社長である渡辺氏が、請われて当社の後継社長として入社するまでは、当時としては珍しい多品種少量生産型のバネ工場ではあったが、取引先に振り回されるような経営で、業績も赤字が出ない程度といった状況であった。

そこに後継者がおらず、ただ縁戚という関係で、渡辺氏が入社し、現在のビジネスモデルに変えていったのである。

きっかけは、今から約40年前のドイツやフランスの部品メーカーの経営であったという。そこでの最大の学びは、訪問した工場は部品メーカーでありながら、設計開発力を持ち、優秀な職人が高賃金で雇用されていたことである。

当時の大半の日本のバネメーカーは、設計開発力はなく、セールスポイントは設備力・低コスト力であり、それを実現するため、いかに人件費を下げるか、という経営スタイルであったので驚きであったと言う。

帰国後すぐに全社員を集め、全ての社員の高賃金と、働き甲斐のある魅力的な職場づくりを実現するために、ビジネスモデルを根本的に変革すると宣言し、ゆっくりではあるが着実に全社員を巻き込みながら、改革を進めていったのである。

こうした努力が実り、今や当社の受注価格は「いい値」であり、結果としての当社の業績もすこぶる高い。いやはや驚くべき中小製造業である。

 

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