部品を言い値で製造販売する中小企業【第91回】

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部品を言い値で製造販売する中小企業【第91回】

先般、大阪市に本社がある「T社」の豊岡工場にお伺いした。
従業員数は、全社で90名、生産品目は各種ばねである。ここまでは全国に約3,000社ある、どこにでもあるような「ばね屋」と思われるかもしれないが、その実態はこれがばね屋かと驚くべき企業である。

その代表的な特長を2 点述べると、第1 は、当社の生産品目は極端な多品種微量のばねである。ちなみに当社が生産するばねの平均ロットは、3個から5個である。しかもその品種は年間ベースで3万アイテムである。

第2の特長は、取引先の多さである。年間取引先は900件(社)、最大の取引先でも依存度は1%程度である。正に多品種微量独立型の中小企業である。筆者はこれまで多くのモノづくり中小企業を訪問調査しているが、これほど多くの企業と対等に取引している企業も珍しい。

こうした経営は、結果として、取引先との上下ではなく、対等の関係性を形成することに成功し、その業績も1944年の設立以来一度も赤字を出していないばかりか、常に好業績である。ちなみに全国の同業者は約75%の企業が赤字、売上高経常利益率が5%以上の企業はほとんどない。

もとよりこうした経営は当初からではない。それどころか、現社長が社長に就任する前までは、どこにでもある下請型のばね工場であった。

好不況や円高の度、繰り返される取引先の理不尽な取引を解消しない限り、自分はもとより従業員やその家族の幸福の創造等できないと判断し、視察したドイツのばね屋をモデルに、時間をかけ、今日の経営体を創り上げたのである。

つまり、それを実現するためには人財教育と福利厚生の充実し、技術力を高めるとともに、他社がやりたくないスーパーニッチの市場にターゲットを絞り込んだのである。

当社の製品はすべて高度技術が無ければ開発生産できないばねであることに加え、数量は微量、かつ短納期対応であり、正に「鬼に金棒」といった企業である。

「単価はどうして決めているのですか…」、と質問すると、答えは「言い値です…」であった。では「高いと言われ、値引きを要請されたらどうしますか…」と質問すると、答えは「では、よそでやってもらってくださいと瞬時に断わります…」とまで言い切った。

角度を変え、「仕入先・外注さんへの発注単価はどうしているのですか…」と重ねて質問をすると、社長は、平然と、「提出された見積書どおり支払いをします…、自分が散々嫌な思いをしてきたことを外注企業にやるわけがありません…」と。

当社こそ超円高の時代が求めるモノづくり中小企業そのものである。

 

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