万年筆博士の挑戦【第86回】

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万年筆博士の挑戦【第86回】

鳥取駅前の中心商店街を5 分くらい歩いた商店街の一角に珍しい店名の小さな文房具屋さんがある。

このお店こそ「有限会社万年筆博士」という社名の、小さな世界的企業である。

通常の文具店では、その扱い商品のほとんどは、大手ブランドメーカーからの仕入小売りが多いが、当店の仕入商品は実質ゼロ、当店が販売する全ての万年筆は、当店のスタッフ4 名による手作り商品である。

たかが万年筆と思われる読者がいるかと思うが、それは誤解である。というのは、その製造工程は約270 もあり、高品質な万年筆を一人で創れるようになるためには、15 年から20 年の修業が必要だからである。

業況もすこぶる好調で、営業活動もほとんど行っていないにも関わらず、その受注残高は常に1 年程度以上を抱えている。

ちなみに、気になる値段はというと、最低価格が5 万円、最高価格は30 万円、平均単価は11 万円という。それ以上の価格を求める顧客もいるが、そうした受注はあえて受けない方針という。

当社の創業は1945 年、現社長である山本竜氏の祖父が、東京での丁稚奉公の後、故郷鳥取に帰り家業としてスタートしている。創業当初は、大手ブランドメーカーの開発した商品の仕入れ販売や、特注モノの製造をしていた。

しかしながら、その後、ボールペンの拡大、アジア諸国等からの低価格万年筆の輸入等があいまって、年々量的にも価格的にも厳しい経営を余儀なくされていった。

こうした中、「このままでは潰れる…」と危機意識を募らせ、今日の業態に事業転換を果たしたのである。「世界に1 本しかない私の万年筆」の当初のターゲットは、万年筆に慣れ親しんだ団塊の世代であったが、素材に徹底的にこだわるとともに、商品に文化性・ストーリー性を付加したこともあり、今や若者にまでファンは拡大している。

こうした頑張る小規模企業の存在を見せつけられると、問題は「景気や円高といった外部要因にある」と嘆き悲しむ企業が多いが、そうではなく、問題は外ではなく「経営の考え方や進め方等、内部要因にある」といわざるを得ない。

こうした中小企業が多数派を占めたならば、わが国のモノづくり産業の未来は明るい。

 

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