宮城大弥投手~限りない可能性を秘めた若武者!【第147回】

宮城大弥投手~限りない可能性を秘めた若武者!【第147回】

2021年のプロ野球は3月26日(金)よりセパ両リーグ一斉に開幕しました。ただ今も続く新型コロナウィルス感染症の影響で外国人選手の来日が遅れたり、一部のチームで選手に感染者が出たことで急遽の選手の入れ替えはありましたが、何はともあれ無事にスタートを切りました。

まだ始まったばかりですが、前回当コラムで取り上げさせていただいた三浦大輔新監督率いる横浜DeNAベイスターズがなかなか勝てず、2引分けを含む6連敗の後、ようやく9戦目で今シーズンの初白星をあげることが出来ました。こんな苦しい状況の中で、今シーズンよりチームに加わったドラフト2位入団の新人選手・牧秀悟選手の素晴らしい活躍が目につきます。

ただ今シーズンは牧選手の他にも、各チームの新人選手あるいはこれまで出場機会が少なくまだ新人王の資格を保有している若手選手(支配下登録5年以内で、投手なら前年までの一軍の登板イニング30イニング以内、打者なら一軍での打席数60打席以内)の活躍が目立ちます。そんな溌剌とした若手有望株選手の中から、今回は高卒2年目、まだ19歳の宮城大弥(ミヤギ・ヒロヤ)投手(オリックス・バファローズ)を取り上げさせていただきます。

宮城投手は2001年8月生まれの19歳、沖縄県宜野湾市の出身、左投左打の投手です。プロ入り後の球団公式発表で身長171㎝・体重80㎏と、決して大柄な選手ではありませんが、沖縄県では少年時代からかなり名の知れた選手で、中学時代に侍ジャパンのU-15代表に選ばれ、福島県で行なわれた第3回WBSCベースボールワールドカップに出場、侍ジャパンの準優勝に貢献されています。

その後、高校は私立の興南高校に進学されましたが、スーパー1年生として入学されたばかりの春からベンチ入り、その夏の沖縄大会ではリリーフで準決勝までの全試合に登板し、決勝戦で初先発。13奪三振・無四球・1失点完投という見事なピッチングで、1年生ながらチームを甲子園出場へ導かれました。

2年生の夏にもチームを甲子園に導きましたが、この二回の甲子園ではそれぞれ1回戦、2回戦で敗退されました。そして3年連続出場のかかった3年生時には、沖縄大会の決勝で沖縄尚学高校に延長13回、押し出しのフォアボールで敗れ、無念の結末となってしまわれました。

この決勝戦で投じた球数は229球、大会全体では2回戦から5連続完投で、合計球数は681球に及んだようです。宮城投手にとっては残念な結果でしたが、当時を振り返って「プロに入ってからも投げる体力はあの時のまま落ちていないと感じていますし、あの夏を投げぬいたことが自信にもなっています」と語っておられます。

夏の県予選の後はWBSC U-18ベースボールワールドカップの代表メンバーに選ばれ、アメリカ戦、台湾戦、韓国戦で登板の機会を手にされましたが、目立つ活躍は出来ませんでした。U-15代表戦、3年夏の県予選、U-18代表戦といつも肝心な最後の1勝を逃してきた感があった宮城投手でしたが、「絶対に負けられない試合で勝ち切る」ことを課題にプロを目指すことになります。

2019年秋のドラフト会議の話題は、夏の甲子園で準優勝した星稜高校の奥川恭伸投手(現・東京ヤクルトスワローズ)と甲子園出場の経験はないものの160㎞超の速球を投げる大船渡高校の佐々木朗希投手(現・千葉ロッテマリーンズ)に集中していました。

宮城投手は、複数球団の指名が重複した奥川投手・佐々木投手に比べると、あまり目立つ存在ではありませんでしたが、プロのスカウトの評価は高く、同じくドラフト1位でオリックスバファローズから指名を受け、念願のプロへの第一歩を記しておられます。

ただし宮城投手の1位は、オリックスバファローズが重複指名抽選を二度外した後の、俗に言う「外れ外れ1位」であり、規定の年俸の満額での契約となった奥川投手・佐々木投手に比べると、約半額の年俸契約でしたが、これが当時の率直な評価であったのだろうと思われます。

こうしてプロ1年目となった昨シーズン、宮城投手は鍛錬に明け暮れる中でウェスタンリーグで実戦経験を積み、着実に階段を上がっていかれました。最終的には、ウェスタンリーグ公式戦で13試合に登板して6勝2敗、防御率2.72という好成績を収めておられます。その結果、シーズン終盤になって一軍での登板機会を手にされました。

一軍では3試合に先発し、16イニングを投げて1勝1敗、防御率3.94でした。2020年入団の高卒新人投手のプロ初勝利一番乗りでした。この一軍での3試合は宮城投手にとって貴重な体験となったようで、中でも初のビジターゲームとなった埼玉西武ライオンズ戦が印象に残っておられるようです。

この試合、緊張して周りが見渡せなかったような状態で、結局点を取られ、負け投手にもなってしまったのですが、ここで何かを感じとることも出来たようです。キャッチャーの構えたところへ投げられた球では抑えることが出来、キャッチャーの構えと逆の球はほぼ全て打たれてしまったとのことでした。

ここをしっかり修正できれば一軍相手でもゼロに抑えられるはずだ、という確かな手応えと確信も掴むことの出来た試合だったようです。実はこの年の8月頃から、左バッターのインコースへの投げづらさを解消する為、プレートの踏む位置を従来の一塁側から三塁側を踏むように変えられたそうです。

これによって小さく見えていたストライクゾーンが大きく広く見えるようになったそうで、これならインコースを使えるなと、ご自身の中では確かな手応えとなっていかれたようです。こうして1年目のシーズンの終わり頃には納得のいくボールを投げられるようになり、それが1年目での初勝利に繋がっていったのだと思われます。

宮城投手は自分で考え自ら工夫をすることで、着実に進化をしていかれましたが、昨シーズン終了時以降の自主トレ、キャンプ、オープン戦を通じて、自らテーマを決めてひとつづつ課題を乗り越えていかれました。1年目の経験も踏まえ、コーチやチームの先輩たちともコミュニケーションをしっかり取って、自らのやりたいことを決められたそうです。

やりたかったことは二つあったそうです。一つ目はセットポジションでの投球、二つ目はアウトコースの真っすぐをしっかりコントロールする、ということだったようです。一つ目のセットポジションでの投球というのは、昨年1年を通じてセットポジションだとフォームもボールも安定しないと感じておられたようです。フォームが安定しないからボールも安定しない。

何故なのか、その理由を考えると、自分のリズムで投げられていないことに気づかれたようです。ランナーを背負っている訳ですから、当たり前と言えば当たり前なのですが、その中でも自分の間合い、自分のペースになれず、慌ててしまうことが多かったようです。そこで練習の段階からいつも場面を想定することを始められたとのことです。

想定する場面は、ランナー1塁、ランナー2塁、ランナー1、2塁の三つのケースです。この三つのケースに共通するのは、ランナーが視界に入っているということです。目に入ると気にもなる、ランナーに意識がいってしまうと投球が単調になってしまう。キャンプ中の取材では、今も克服へ向けての途上とのことでしたが、相当強く意識して対応しようとされています。

もう一つのアウトコースへの真っすぐのコントロールですが、宮城投手は右打者に対しても左打者に対してもインコースは突ける、というよりご本人は投げやすいと感じておられます。打者から遠くへ投げようとすると、外に抜け過ぎたり、逆に中に甘く入ったりするようで、これを克服するために投げ込みの段階から意識をされて取り組んでおられるようです。

また宮城投手はしっかりピンポイントにコースを狙えるようになることを意識して練習にも取り組んでおられたようですが、このことを意識し過ぎると体が硬くなり、逆にフォームの乱れにもつながる為、今は「あえてアバウトな意識で投げる」ことを心掛けておられるようです。これはチームの先輩たちとのコミュニケーションの中から、宮城投手ご自身がそういう意識を持つようになられたそうで、先輩との話は本当にタメになると語っておられます。

また併せてチームの先輩投手たちと話し合う中で、キャッチャーの構え方によっても見え方が変わることを知り、キャッチャーには普通に正対して構えるだけではなく、ちょっと左足を引いてクロスにした感じで構えてもらったり、キャンプの中では色々なことを試されたようです。キャッチャーとも話し合って、今も自分が投げやすい感じを模索しておられるようです。

入団早々で何も分からずキャンプも慌ただしく終わってしまった1年目と比べて、昨年1シーズンの経験を生かして、自分で考えていた課題やテーマにしっかり取り組み、オープン戦2試合でも計10イニングを投げて1失点と、シーズンを迎える準備を十二分に整えて開幕を迎えられました。

そしてシーズン開幕、宮城投手の初陣は開幕カードの二戦目、敵地メットライフドームへ乗り込んでの埼玉西武ライオンズ戦、前日の開幕戦をエース山本由伸投手で落とした後のプレッシャーがかかる試合でしたが、先発として7回を投げ、被安打5、8奪三振、2失点(自責点1)の見事な投球で3―2という接戦をモノにし、今季初勝利を挙げられました。

そして二度目の登板となったのは4月4日(日)敵地楽天生命パーク宮城で行なわれた東北楽天ゴールデンイーグルス戦でした。この試合の相手投手は楽天のドラフト1位ルーキー早川隆久投手でしたが、ドラフトでは4球団が競合となった最も注目を集めていたルーキーです。この時点で早川投手も既に今季1勝を挙げており、2勝目を掛けたお互い負けられない一戦でした。

試合は開始前から雨の降り続く中での試合となりましたが、結局投げ勝ったのは宮城投手。8回を投げて被安打2、5奪三振、失点0の圧巻の投球でした。試合では2点リードの4回に2四球と安打で二死満塁のピンチを招くも、後続を二ゴロで退け、ピンチ脱出。試合後、0-4で負けた敵将石井一久監督が「宮城投手の術中にはまった」と語られたそうです。

まさにキャンプを通じて取り組んでこられたセットポジションでの投球が功を奏した感じです。実は10代の投手が開幕カードで勝利投手となったのは、この球団では前身の阪急ブレーブス時代の1957年の米田哲也投手以来64年ぶりの出来事だったそうです。生涯350勝を挙げた米田投手も10代の開幕二戦目では負け投手になられたそうですから、今回の宮城投手の10代投手による開幕2連勝は球団史上初めての快挙でした。

オリックスバファローズというチームは、日本を代表する選手になりつつある山本由伸投手、吉田正尚選手を生み出したチームでもあるのですが、近年は投打がうまく噛み合わず、長らく下位に低迷しています。ただこのチームは、自ら考え自ら努力を怠らない選手にとっては、実に居心地のいい、やりやすい環境を整えてくれるチームであるように映ります。

宮城投手が元々持ち合わせている探求心とご自身の努力、併せてその才能を開花させる場をうまくチームが与えることによって、今まさに大輪の花を咲かせる寸前のところまでやってきたように思えます。そういった意味では、この選手はオリックスバファローズというチーム風土から生み出された選手のように思えてなりません。

宮城投手はまだ弱冠19歳、2年目のシーズンが開幕して2勝しただけの投手ではあるのですが、その先行きには限りない可能性を感じさせてくれます。今シーズンの目標として「一軍完走&二桁勝利」を掲げておられますが、この目標が実現されるなら、チームの上位進出も決して夢ではないはずです。

1年間の長いシーズン、ローテーション投手として投げ抜くことは並大抵のことではないはずです。体力は持つのか、相手チームから徹底的に研究されますが、それをはね返す研鑽を積まねばなりません。課題は山積みだと思われますが、そのすべてを跳ね返して、更に高みを目指して頑張っていただきたいものです。宮城投手のご活躍を願うと共に、オリックスバファローズの今シーズンの戦いぶりにも注目していきたいと思います。

(おわり)
2021/4/9

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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