村上宗隆選手~夢を運ぶホームランバッター【第118回】

村上宗隆選手~夢を運ぶホームランバッター【第118回】

2019年のプロ野球ペナントレースは、各球団の残り試合数が10数試合となっており、いよいよ大詰めです。
セパ両リーグの優勝争い、クライマックスシリーズへの出場権をかけたCS争いも熱を帯びていますが、今回は優勝争いともCS争いとも全く無縁ではあるものの、なんとも魅力的な一人の若手選手を取りあげさせていただきます。

その選手の名は、東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手です。
村上選手は2000年2月生まれの19歳、188cm・97㎏という立派な体格に恵まれた、右投左打の内野手です。
2019年9月8日(日)現在、村上選手の成績は、出場130試合(チームの全試合に出場)、打率.228(リーグ31位、規定打席到達者の最下位)、ホームラン32本(リーグ4位)、打点90(リーグ2位)、失策数15(リーグ2位)、三振数169(リーグ断トツ1位)となっています。

この成績にはもちろん賛否があることでしょう。
高卒2年目の現時点の村上選手は粗削りで確実性も低く、おまけに守備も下手クソです。しかし芯に当たればどこまで飛んでいくのだ、と思わせる大きなホームランを打つことの出来る魅力あふれるバッターです。

球場に集まる東京ヤクルトスワローズのファンの方々は、もうチームの勝敗はともかくとして、村上選手の一打席一打席を楽しみにしておられるようです。
それはヤクルトファンでなくとも、野球に関心のある多くのプロ野球ファンの心をワクワクさせてしまう、惹きつけられるような魅力です。

それではここで村上選手のプロフィールを簡単にご紹介したいと思います。

ご出身は熊本市、5歳から野球を始め、進学された九州学院高等学校(熊本市)では1年生から一塁手のレギュラーに定着し、1年生の夏の甲子園に3番打者として出場されるも無安打で初戦敗退でした。
結局高校時代、2年生以降は捕手として活躍されましたが、甲子園に出場されたのは1年生の夏の一度だけでした。
高校時代は通算52本のホームランを打ち、九州のベーブ・ルースとの異名をとる程の強打者でした。

そして2017年秋のドラフト会議で、清宮幸太郎選手(現北海道日本ハムファイターズ)を抽選で外した東京ヤクルトスワローズは、外れ1位で村上選手を指名し、読売ジャイアンツ・東北楽天ゴールデンイーグルスとの3球団競合に競り勝ち交渉権を獲得しました。

ドラフト1位として村上選手の入団が決まった時には捕手としての入団でしたが、当初より打力が期待されての獲得であった為、即座にコンバートされ、登録も内野手として入団されています。

入団1年目の2018年は鍛錬の場として二軍のイースタンリーグが主戦場でしたが、ここで98試合に出場して打率.288、70打点、17本塁打、16盗塁という好成績を残されました。
6月には月間MVPを受賞し、7月にはフレッシュオールスターゲームにも出場される等、着実に階段を上っていかれました。
そしてシーズン終盤の9月16日に一軍に昇格し、6番・三塁手として先発出場すると、初打席で初本塁打を打つという離れ業で鮮烈な一軍デビューを果たされました。

こうして高卒1年目のシーズン、確かな足跡を残された村上選手でしたが、ご本人には満足という様子はまるで無く、1年目の契約更改後の会見では「手応えはないです。一軍で打つにはどうすればいいかを考えてやっていかないといけない」と発言され、見つめる先は一軍の舞台での活躍しか眼中にないことがヒシヒシと伝わってきました。

1年目のシーズン終了後は主に若手選手が集まる宮崎でのフェニックスリーグに参加、引き続いての松山での秋季キャンプ、台湾でのウィンターリーグで実戦経験を積み、その後は青木宣親選手らとの合同自主トレーニングに参加と、ほぼ休みなく野球漬けのオフを過ごされました。

そして2月のキャンプに入ってからも連日10時間を超える猛練習をこなされました。
村上選手ご本人のうまくなりたいという思いと、なんとしてでも村上選手を一人前のレギュラーに育て上げたいという首脳陣の熱い思いが伝わってきます。

こうして入団2年目となる今シーズン、オープン戦でも結果を残され、6番・三塁手として開幕スタメンを勝ち取り、以降チームの全試合に出場しておられます。

ただ小川監督はシーズン当初、村上選手の起用についてセリーグ5球団との対戦が一巡する4月14日までに村上選手が結果を残さなければ先発から外すことも考えておられたようです。
そうした中、村上選手は4月14日の巨人戦、4月16日の阪神戦で2試合連続の決勝ホームランを打つことで、小川監督をはじめとする首脳陣の信頼を勝ち取られました。

高卒2年目の村上選手が記録している32ホームラン、90打点がいかに凄い記録かというのは、高卒2年目以内に30本以上のホームランを打った選手がプロ野球史上たった3人しかいないことを見ても分かります。

1人目は今から66年前の1953年(昭和28年)に当時西鉄ライオンズの中西太選手が高卒2年目で打ち立てた36ホームラン・86打点、2人目は西武ライオンズの清原和博選手が高卒1年目の1986年に記録した31ホームラン・78打点の二例が記録として残るだけです。

4月生まれであった中西選手は記録を樹立した時は既に20歳でしたので、10代選手の記録ということになると清原選手以来2人目ということになります。

打点は既にこのお二人の記録を超えており、ホームランも清原選手の記録は超えています。
歴史的快挙を見届けたい一プロ野球ファンとしては、出来れば中西選手の36ホームランの記録も塗り替えて欲しいと願っています。

また30本を超えるホームラン数を少し角度を変えてながめてみると、昨シーズンのセリーグの規定打席到達者で打率3割を超えた選手は15人(ちなみにパリーグは5人)いますが、ホームランが30本を超えた選手は7人(うち外国人選手2人、ちなみにパリーグは4人・外国人選手無し)しかいません。

打率3割以上を打てば一流選手の証とされますが、30本を超えるホームランはもっと難易度の高いことが分かります。(ちなみに9月8日現在、今シーズン3割以上・30本以上打っている打者は、セリーグで7人・5人、パリーグで6人・4人となっています)

ここで村上選手のバッティングの特徴にも少し触れてみたいと思います。

何人かの野球評論家の方が共通して言われているのは、長打力と選球眼の良さ、勝負強さということです。
スイングスピードの速さを指摘される方もおられますが、これは元々の素養と併せてプロ入り後の猛練習の賜物と思われます。

ご本人はしっかり強く振ることを意識すると共に、相手がどんな投手であろうとも絶対に打ってやる、という強い気持ちで打席に立つことを心掛けているそうです。

また技術的には来た球に逆らわずにまっすぐ打ち返すこと、コースに逆らわないバッティングをすることを心掛けておられるようで、32本のホームランもライト・センター・レフト方面に広角に打ち分けておられます。
村上選手ご本人が「押し込む」という表現をされる逆方向(レフト方向)へも大きなホームランを打てることが最大の特徴と思われます。

現時点の村上選手のような穴の多い、確実性の低い打者をレギュラーとして使い続けるのは使う側にも勇気がいります。
山田哲人選手、青木宣親選手、バレンティン選手、雄平選手といった強打者揃いの打撃陣の中で、負担を一身に背負い込む立場に立つ必要がなかったことは大きなポイントです。

しかし小川監督、というよりヤクルト球団が村上選手を育てよう、一人前にしよう、近い将来の中心打者にしようという強い意志を持っていることが観る者にもはっきり伝わってきます。

ただいくら場を与えても、ある程度まわりを納得させる答を出さなければ使い続けることは出来ません。
村上選手は32ホームラン、90打点ではっきり答を出したからこそ、まわりを納得させているのです。

私はまさに、育てようという組織(チーム)とそれに応えようとする個人のあるべき関係性がここに見てとれるように感じました。

一部のスポーツ報道によると、村上選手を今シーズンの全試合で起用し続けてくれている、村上選手にとっての最大の理解者である小川監督が今シーズン終了をもって退任されるというニュースが流れました。

チーム成績という結果に対する責任をとられるのだと思われますが、小川監督が村上選手にとっては将来へ向けての土台づくりの最大の協力者であり、かつ恩師であったことは、これから先も何ら変わることはありません。

数年後、我々プロ野球ファンは「村上ってプロ入り2年目は32本のホームラン打って、90打点もあげたけど、打率.228で169三振もして、エラーも15個もしたんだってネ。今から見ると信じられないよね」って会話をしているような予感がします。
(下線部分は9/8時点の数字です)

これから先も、村上選手には観る者をいつも惹きつける、魅力あふれる選手であり続けていただきたいなと願っています。

(おわり)
2019/9/10

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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