高橋礼投手~目指せ!令和のサブマリン・エース【第111回】

高橋礼投手~目指せ!令和のサブマリン・エース【第111回】

2019年のプロ野球が開幕して3週間が経過しました。
4月14日の日曜日をもって各チームとも同一リーグ内の5球団との対戦が一巡しました。

まだ序盤の序盤が始まったばかりですから、この段階で順位云々を語ることは全く意味をなしませんが、あえてひとつだけ言うと、セリーグを三連覇中の広島東洋カープの調子があまり上がらず、セリーグ内の相手5球団との対戦ですべて負け越し、序盤の一回り15試合を4勝11敗という、全く意外な展開となっています。

一方パリーグは、同じく同一リーグ内5球団との対戦を終えて、昨年の日本シリーズの覇者・福岡ソフトバンクホークスが9勝4敗2分と順調な滑り出しを見せたな、と思ったのも束の間、6カード目の敵地に乗り込んでの千葉ロッテマリーンズとの三連戦ではよもやの三連敗と、ちょっと意外な展開となっています。岸孝之投手・則本昂大投手という二人のエースを欠きながら首位に立つ東北楽天ゴールデンイーグルスの躍進といい、全般的に混戦模様の様相です。

そんな序盤戦の戦いの中で活躍の目だった選手も何人かおられますが、そんな選手たちの中から今回は福岡ソフトバンクホークスの高橋礼(レイ)投手を取りあげさせていただきます。

ソフトバンクファンの中では「玄界灘のサブマリン」と呼ばれ、ちょっとは名の知られた存在の選手ですが、一般的な野球ファンの中での知名度は、これから全国区にのし上がっていこうとしている若手有望株の下手投げ(アンダースロー)投手です。

高橋投手は千葉県松戸市のご出身で、1995年11月生まれの23歳、右投右打の投手です。
地元のリトルリーグのチームで硬式野球を始め、中学3年時のチームのコーチのアドバイスで上手投げから下手投げに転向されています。
その後、専修大学付属松戸高等学校から専修大学へ進まれています。

高校時代に甲子園出場の経験はありませんが、大学時代は1年生秋のリーグ戦から登板し、2年生の秋までに8勝をマーク。2年生の夏にはユニバーシアードの日本代表にも選出され、日本チームの金メダル獲得にも貢献されています。

しかし、その後フォームを崩して4年生の春まで混迷の時期を過ごされましたが、最後の秋のリーグ戦で見事に復活、ドラフトでの指名を得るまでの存在となられました。

大学時代の高橋投手は長身(188cm)から長い手足をしなやかに潜らせて浮き上がってくる、実に美しいフォームで東都大学のリーグ戦にデビューされましたが、肝の据わった度胸満点のマウンドさばきは当時から少し目立っていたようで、将来のプロ野球選手としての片鱗を示されていました。

そして2017年秋のドラフトでは、上位指名という前評判はほとんどなかった中、福岡ソフトバンクホークスは敢然と2位で指名、素材を見抜く目の確かさを示されました。

入団初年度の昨シーズン、開幕は二軍で迎えられましたが、4月10日にはチームの同期入団の新人選手の中では最速の一軍昇格を勝ち取り、4月22日の札幌ドームでの初登板を先発で飾られました。

相当緊張されていたようで、自分の良さを出せず、やりたい事も出来ず、一軍の雰囲気に飲まれ、結局4回を投げて被安打5・自責点3のほろ苦いデビューでした。しかしそのデビュー戦で実力不足を痛感し、その時の悔しさがその後の練習や試合に気持ちを入れていく原動力となられたようです。

結局1年目の昨シーズンは12試合に登板(うち先発3試合)し、投球回数30回、0勝1敗・防御率3.00という結果でしたが、埼玉西武ライオンズと戦ったCSファイナルで2試合、広島東洋カープと戦った日本シリーズでも3試合の登板機会を得ており、着実な進化を見せた1年目でした。

更にはまだ未勝利の身で、かつ辞退した選手の代役としての追加召集ではありましたが、昨秋の日米野球の侍ジャパンメンバーにも選ばれていますし、今年3月の「侍ジャパンシリーズ2019」のメンバーにも選出される等、周囲からの評価が先に進む形で迎えた今シーズンの開幕でした。

オープン戦の最終戦(マツダスタジアムでの広島戦)に登板した高橋投手は粘り強い投球で、工藤監督の課した最終テストを自ら勝ち抜き、開幕ローテーションの一角を手にされた訳ですが、開幕カードの第3戦・3月31日(日)の本拠地・福岡ヤフオク!ドームでの埼玉西武ライオンズ戦が今シーズンの初戦でした。既に1戦目・2戦目を福岡ソフトバンクホークスが連勝して迎えた3戦目でした。

この試合、高橋投手は最速142㎞のストレートとカーブ、スライダー、シンカーで翻弄、強打者がずらりと並ぶ昨季覇者の西武打線を6回4安打、中村剛也選手のソロホームランによる1失点に抑える好投を見せました。
ただし6回表終了後の降板時には、まだ0対1で負けていたのですが、その裏柳田悠岐選手の逆転2ランホームランが飛び出し、その後リリーフ陣も無失点に抑えて、高橋投手に嬉しいプロ初勝利がもたらされました。
好投しても必ずしも勝ちにつながるとは限らない状況もある中で、高橋投手はツキも持ち合わせておられる投手なのかもしれません。

その後も4月7日の本拠地でのロッテ戦、4月14日の敵地での楽天戦と、ローテーションを守って投げ続け、それぞれ7回を投げ抜き、被安打2本ずつ、自責点0点・1点と実に安定した素晴らしい投球を続け、現時点で3勝0敗、防御率0.90という申し分ない成績を残されています。

ただ3回続けて好投が続いたことで、相手チームからのマークは格段に厳しくなるものと思われます。
そのマークをかいくぐって、これまでの3試合と同様の投球が続けられるのか、大いに注目されるところです。

それではここで高橋投手の投球について触れてみたいと思います。
高橋投手の持ち球の一番の武器はストレート、アンダースロー特有のホップしてくるように伸びる高めと右打者のひざ元に投げ込めるコントロールの良さが生命線のようです。

更には伸びてくるストレートと伸びてこないストレートの投げ分け、そこへスライダー、カーブ、シンカーを投げ込むことで相手バッターに的を絞らせない投球術を持った投手です。バッタバッタと三振をとるピッチャーではなく、ゴロの山を築かせるタイプの投手です。

更に高橋投手は捕手からの返球を受けるとすぐさま両足を広げて投球準備に入り、サインにうなずけば瞬く間に投げ込む、実にテンポが早く、小気味よく自分の間合いで投げていかれます。

これが味方の野手の守りにも好影響を及ぼしているようで、後ろで守る遊撃手の今宮健太選手は「高橋のピッチングはテンポがいいから守りやすい。集中しようと考える間もなく、みんなが1球1球に集中できていると思う。このことは攻撃にも少なからずいい影響を与えていると思う」と語っておられます。

まだシーズンは始まったばかりではあるのですが、今季の福岡ソフトバンクホークスでは怪我による故障者・離脱者がかなり目立ちます。
主な選手を挙げただけでも、投手陣で外国人のバンデンハーク投手・サファテ投手、石川柊太投手、中継ぎの岩嵜翔投手、野手では中村晃選手、グラシアル選手、江川智晃選手、そして4番を打っていた柳田悠岐選手といった方々が離脱中です。

ただこれだけ故障者・離脱者が出ても大幅にガタッと戦力ダウンという状況に陥っていないのは、まさに福岡ソフトバンクホークスの層の厚さであろうと思われます。

素材を見出し、自慢の二軍・三軍の制度の中で徹底的に鍛え上げ、場と機会を与えることで一軍で戦っていける選手を生み出していく。
まさにソフトバンク方式とも言えるチーム力整備のやり方ですが、高橋礼投手もこの仕組みの中から頭角を現した選手です。
チームが苦しい状況の中でこそ、チームの大きな支え手の一人として投げ続けていただきたいものです。

ご本人が言っておられるように「玄界灘のサブマリン」から「日本を代表するサブマリン」を目指してもらいたいものです。
高橋投手が目標として掲げる、かつての阪急ブレーブス黄金時代の大エース・山田久志投手のような直球で押せるアンダースローとして大輪を咲かせていただきたいものです。

まずは今シーズン、各球団の包囲網をはねのけ、一年間ローテーションを守り抜き、令和時代のエースとしての階段を上っていかれることを願っています。

(おわり)
2019/4/19

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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