大瀬良大地投手~大黒柱としての存在へ!【第97回】

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大瀬良大地投手~大黒柱としての存在へ!【第97回】

2018年のプロ野球ペナントレースは、オールスター戦による折り返し直前までやってきました。どのチームも年間総試合数の半分以上を既に消化しています。ここまでの戦いを振り返ってみると、パリーグは最下位の東北楽天ゴールデンイーグルスを除く5チームが混戦状態となっており、セリーグは首位の広島東洋カープを除く2位以下の5球団が、日替わりで順位が入れ替わるような大混戦となっています。

しかし首位に立っている広島東洋カープも連覇を達成した一昨年・昨年のような圧倒的強さで他を圧している訳ではなく、他のセリーグ5球団の熾烈な星のつぶし合いに助けられているような一面も見られます。そんな中で前半戦のチームを支えた功労者は間違いなく大瀬良大地(オオセラ・ダイチ)投手です。投球回数も勝ち星も防御率も奪三振もすべてチームNO.1です。今回はそんな大瀬良投手を取り上げさせていただきます。

大瀬良投手は平成3年(1991年)6月生まれの27歳、長崎県大村市出身の右投右打の投手です。中学時代の途中まで過ごした鹿児島県霧島市スポーツ少年団で野球を始められましたが、高校は長崎日本大学高校に進学され、高校3年生の夏の全国大会予選では、その年のセンバツ大会で全国制覇を成し遂げた長崎・清峰高校の今村猛投手(現広島東洋カープ)に投げ勝ち、夏の甲子園に出場されています。甲子園では菊池雄星投手(現埼玉西武ライオンズ)を擁する岩手の花巻東高校と一回戦で対戦し、無念の敗退となっています。(ちなみにですが、その年の花巻東はベスト4まで進出されています)

高校卒業後は九州共立大学(北九州市八幡西区)に進学されました。硬式野球部では1年生の春のリーグ戦から主戦投手として活躍され、大学4年間の通算では57試合に登板して38勝5敗、防御率1.07という好成績を残され、福岡六大学リーグの最優秀選手賞(MVP)、防御率1位、ベストナイン等々、タイトルを総ナメにされています。また併せて日米大学野球選手権大会の大学日本代表に選ばれたり、2013年に台湾で行なわれた「BASEBALL CHALLENGE 日本vsチャイニーズ・タイペイ」の試合では、プロに交じってアマチュアながら日本代表に選出される等、大学NO.1右腕としての評価を確固たるものとされました。

そして迎えた2013年秋のドラフト会議では、東京ヤクルトスワローズ、阪神タイガース、広島東洋カープの3球団から1位指名を受け、抽選の結果、広島東洋カープに入団されることとなりました。ちなみにドラフト1位の大瀬良投手に与えられた背番号は、かつて炎のストッパーと呼ばれた津田恒実投手(1993年7月・32歳にて逝去)がつけておられた14番でした。

プロ入り後、初年度は開幕一軍メンバーに選ばれたのみならず、先発陣の一角として先発ローテーションに組み込まれ、4月半ばにはプロ初勝利、5月初めにはプロ入り初完投勝利を挙げられました。一時期勝てない時期があったものの、9月初旬にはプロ初完封勝利、シーズン通算では10勝8敗の好成績で新人王のタイトルも獲得されました。

2年目のシーズンは開幕ローテーション入りは果たしたものの、不安定な投球で勝ち星に恵まれず、5月初旬の初勝利後もなかなか勝ち星をあげられない状態の中、チーム事情もあって6月からは中継ぎに配置転換されました。6月後半に初ホールド、8月後半には初セーブをあげるなど、シーズントータルでは51試合に登板して3勝8敗20ホールド・2セーブ、防御率3.13という成績でした。トータルではそれなりの成績を挙げておられるのですが、シーズン最終戦となった本拠地での中日ドラゴンズ戦の8回に登板して3失点で敗戦投手となり、この試合の敗戦によってチームが3年連続のクライマックスシリーズ進出を逃したことにより、試合終了後ベンチで号泣されている姿が印象に残っています。

プロ入り3年目の2016年は右肘の故障でシーズンの前半を棒に振り、後半から主に中継ぎとして活躍し、チームの25年ぶりのリーグ優勝にもそれなりに貢献されたのですが、北海道日本ハムファイターズと戦った日本シリーズの第3戦では、大谷翔平選手にサヨナラとなるタイムリーヒットを打たれて敗戦投手となる等、ご本人にとっては不本意と感ずるシーズンであったのかもしれません。

そして4年目となる昨シーズンは、再び先発ローテーションに復帰し、新人の年以来となる二桁勝利(10勝4敗)をあげる等、二連覇に貢献もされました。しかし1年後輩にあたる薮田和樹投手(15勝3敗)、2年後輩にあたる岡田明丈投手(12勝5敗)の活躍の陰で、地道に自らの役割を果たしておられる存在、というのが私自身の印象でもありました。

そして迎えた今シーズン、大瀬良投手は開幕3戦目となる本拠地での中日ドラゴンズ戦からシーズンをスタートされました。初戦は5.1回を投げて2本のホームランを打たれるも初勝利。以降4月は勝ちと負けが交互にやってきて3勝2敗。ホームランを打たれるケースが目についたり、四球を出すケースも目についたりで、決してものすごく調子が良かったようには思えませんでしたが、昨年・一昨年とチームを支えた他の先発投手陣の調子が上がってこない中、5月は4勝負けなしで初の月間MVPを獲得、6月も3勝1敗で、6月22日に早くも今シーズンの10勝目(両リーグ最速)をあげておられます。

投手を評価する尺度として最近はQS(クオリティ・スタート)という指標がよく使われます。先発投手が6回以上を投げて自責点3点以内に抑えたかどうかを見る指標で、点を取ってくれるかどうかに拘わらず、先発投手が自らの役割を果たしているかどうかを判断する指標です。大瀬良投手はここまで15回先発して12回のQSを達成しており、これは両リーグ通じてのトップ、セリーグではNO.1の記録(7月8日現在)です。地道に粘り強く自らの役割を果たす大瀬良投手が、他の投手陣の調子が上がりきってこない状況の中で、チームの大きな支え手として存在感を増しておられる、というのが現在首位をゆく広島東洋カープの実態です。

では今シーズンの大瀬良投手は一体何が良くなったのでしょうか。ある野球評論家の方は二段モーションの解禁が良い方向に影響したと指摘されています。大瀬良投手ご自身が二段モーションで投げていた時期はなかったようなのですが、上体が突っ込む悪癖が調子を落とす原因となっていたことから、これを正す為に右足一本でステップしながら遠投を繰り返す中で、右足に体重を乗せ左手を高く上げ段をつけて投げる投球フォームに改造されたことが奏功されたようです。

悪癖が改善できただけでなく、直球の威力が増し、フォームが安定したことで低めのコントロールの精度も良くなられたようです。それともうひとつは、ご本人が「マウンドであたふたしなくなった」と自己分析されている、精神面での成長が大きなポイントになっておられるようです。これまでは「抑えて当たり前」と思われる下位打線にストライクが入らず四球を出したり、味方の野手のエラーでピンチが広がったような場面では、エラーをした味方選手を気遣うあまり「抑えなければ」という気持ちが強くなり過ぎ、気持ちが先走って投球が単調になることが結構あったようです。

要するに、性格的に状況をネガティブに捉えがちな一面を持っておられたのだと思われます。シーズンの序盤ではこうした一面が顔を覗かせることもあったようですが、勝ち星を重ね、チームの中での存在感を増していかれるにつれ、大瀬良投手が元々持っておられる心配性という性格は、現状に満足しない向上心に変わってこられているようです。

広島東洋カープというチームの戦い方を見ていると、野球のチーム運営において投打のバランスがいかに大切かということがよくわかります。更に投打のバランスにおける「投」の部分だけをみても、昨年の最多勝(15勝3敗)の薮田投手が前半戦を終えて2勝1敗(投球回数24.2回)、一昨年のMVPジョンソン投手が5勝2敗(投球回数75.1回)、同じく一昨年最多勝(16勝3敗)タイトルを取った野村投手が4勝2敗(投球回数47.2回)、大瀬良投手を除くとなんとか支え手の一員となっている先発投手は岡田投手(6勝3敗、投球回数84.1回、防御率4.27)ぐらいです。

この状況でも首位をガッチリ守り抜いているのは、投手部門に関して言うと前半戦の中軸となった大瀬良投手(10勝4敗・・リーグ1位、投球回数98.2回・・リーグ4位、防御率2.55・・リーグ3位)の存在と、最終局面を壊さない中﨑翔太投手(33試合登板、0勝0敗21セーブ・3ホールド、防御率2.53)の存在だと思われます。

前半戦の最終登板場面で、ジョンソン投手と野村投手が後半戦の復活を予感させるような素晴らしい投球をされました。こうやって凌ぎながら凌ぎながら戦力のバランスを整えていくのが強いチームなのだろうな、今の広島東洋カープを見ているとそんなことを思わせてくれます。投打共に、個々の選手がチーム状況に応じて何をすべきか、どういう役割を果たすべきかをしっかり把握できているようで、まさに成熟した大人のチームとしての強さを感じさせてくれます。

ただこのまま広島東洋カープに独走されてしまっては、面白くも何ともありません。セリーグの他の5球団の奮起を期待したいものです。そんな中で大瀬良投手には、後半戦も先発投手の柱として、チームの大黒柱として、もっともっと存在感を高めていただきたいと思います。そして広島東洋カープがこのままリーグ三連覇を達成されるのなら、今年こそCS(クライマックス・シリーズ)を勝ち上がり、日本シリーズでパリーグの覇者を倒して日本一となられることを祈りたいと思います。そして、そのステージに大瀬良投手が仁王立ちされている姿を今から楽しみに待ちたいと思います。

(おわり)
2018/7/11

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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