田嶋大樹投手~目指せ!弱小チームから日本の大エースへ【第96回】

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田嶋大樹投手~目指せ!弱小チームから日本の大エースへ【第96回】

2018年のプロ野球は、雨天中止となった数試合を残して交流戦もほぼ終了し、再び同一リーグ内での戦いへと進んでいきます。当シリーズでは、前回新戦力として読売ジャイアンツの岡本和真選手を取りあげさせていただきましたが、今回も新人王レースを繰り広げるルーキー選手(2年目以上の新人王有資格者も含む)を取りあげさせていただきます。

昨年は埼玉西武ライオンズの源田壮亮選手、中日ドラゴンズの京田陽太選手と野手に逸材が目立ちましたが、今年はパリーグではオリックス・バファローズの田嶋大樹(タジマ・ダイキ)投手、セリーグでは横浜DeNAベイスターズの東克樹(アズマ・カツキ)投手、東京ヤクルトスワローズの中尾輝(ヒカル)投手と投手陣に逸材が目立ちます。これら若手選手の中から、今回はオリックス・バファローズの田嶋大樹投手を取りあげさせていただきます。

田嶋投手は栃木県宇都宮市のご出身で、1996年(平成8年)8月生まれの21歳、左投左打の投手です。佐野日本大学高等学校時代は、1年生の秋からベンチ入りし、3年春の甲子園ではエースとしてチームをベスト4まで導かれました。前回(第95回「今、覚醒しつつある長距離砲」)も書きましたが、この甲子園大会では二回戦の奈良・智辯学園高校戦で、今をときめく読売ジャイアンツの若き4番・岡本和真選手と対戦しておられます。高校卒業時点で同年のドラフトの有力候補との呼び声も高かったようですが、高校時代に怪我が続き体力不足であったことを痛感されていたことや、社会人としての礼儀を身につけたいとのご本人の希望もあって、プロ志望届は出さず、社会人野球のJR東日本に進んでおられます。

JR東日本では、2年目にU23ワールドカップに出場、3年目には第28回アジア選手権大会にも出場され、決勝戦で5回無失点の投球で優勝に貢献されMVPも獲得しておられます。都市対抗野球大会では2試合連続完封勝利をあげ、ベスト8進出に貢献されました。こうして社会人NO1左腕との評価を得て昨年秋のドラフト会議に臨まれましたが、オリックス・バファローズと埼玉西武ライオンズが1位指名で競合、オリックスが抽選の結果交渉権を獲得し、田嶋投手はオリックス・バファローズの一員となられました。

入団後は春季キャンプに一軍メンバーとして参加され、プロでどの程度通用するかのテストの意味合いもあったと思われるオープン戦でも、3試合に登板して1勝1敗、防御率3.07という結果を残して、開幕一軍入りを自らの力で手繰り寄せられました。そしてプロデビュー戦は、3月31日の開幕2試合目の福岡ソフトバンクホークス戦で先発投手という役回りで手にされました。福岡ソフトバンクホークスは昨シーズンのパリーグ覇者であり、日本一にもなったチャンピオンチームですから、こんなチームを相手とする開幕三連戦にデビュー戦の機会を与えられること自体、いかに田嶋投手が期待される存在であるかがよくわかります。

「さすがに立ち上がりは気持ちが前に出過ぎて力んでしまった」とご本人も語っておられましたが、それでも「3回以降は本来のピッチングをすることが出来た」と述べられたとおり、5回を1安打(本塁打)1失点という結果でした。田嶋投手が降板した時点では1対1の同点でしたが、降板後の6回表の攻撃で味方打線が勝ち越し、田嶋投手にプロ入り初登板・初先発・初勝利がプレゼントされました。そして、この勝利は12球団の新人一番乗りとなる初勝利でもありました。

プロ2戦目となった4月7日の埼玉西武ライオンズ戦では、4回途中8安打6失点KOという苦い経験をされましたが、3戦目・4戦目の先発マウンドは登板間隔を少し開けてもらうことで、調整もうまくいって2連勝。先発4戦目となった4月30日以降は一週間に一度の先発ローテーションを守り通しておられます。5月中に5勝(2敗)まで勝ち星を伸ばされましたが、6月10日の神宮球場での東京ヤクルトスワローズとの試合では、序盤から雨が降りしきるコンディションの中で、ボールの制御がきかず、6与四球・7被安打で自己ワーストの8失点で3敗目を食らうという残念な結果となっておられます。

しかし一週間後の6月17日の横浜DeNAベイスターズ戦では、名誉挽回となる好投を見せ、1ヶ月近くなかった白星を6勝目として手にされました。この試合では、1回先頭打者に対し球がばらついて四球を出されましたが、直後に右足の踏み出しをクィックモーションで投げる時のように変えることでリズムをつかまれ、二回1死後からの6連続を含む9三振を奪い、7回を投げて本塁打による1失点だけの好投でチームの快勝に貢献されると共に、修正能力・対応能力の高さを見せつけられました。

田嶋投手は182㎝・77㎏という体型で、サイドスローに近い低めのスリークォーターの、やや変則気味の投球フォームで投げられます。最速153㎞の直球と変化球は主にスライダー、カットボールを武器にされていますが、他にもカーブ、チェンジアップ、フォークといった球種も投げられます。又、ユニフォーム姿からはあまりわかりませんが、左肩がシャツ姿になった時にははっきりわかるぐらいの「なで肩」になっておられるようで、「なで肩」ゆえに可動域の広さからボールに力がより伝わりやすく、ギリギリまで左腕が体に隠れて独特のところからボールが出てくる為、打者から見ると非常にタイミングが取りづらいという特徴を持っておられるようです。

しかも右打者にも左打者にも内角にきっちり直球を投げ込める精神的な強さも持っておられます。プロ野球で投手をしておられた野球評論家のお一人は、新人が大先輩の打者や外国人の懐を突くことはなかなか出来ないものだが、それは「ぶつけたらどうしよう」という気持ちが頭をよぎるからだ、という趣旨のことを言っておられます。ただ内角を突かないと打者に踏み込まれて変化球にも対応されてしまう為、勝てる投手は内角をきっちり突いてくるものだそうで、そういった意味でも、田嶋投手は勝てる要素を既にしっかり身につけておられるのだと思われます。

オリックス・バファローズの昨シーズンのチーム成績は63勝79敗1分でしたが、この63勝のうち左投手が記録した白星はわずか8勝、先発投手についた白星に限ると5勝という実態でした。従ってチームとしては、ある程度計算のできる左投手を獲得することが、喫緊の補強ポイントであったことは間違いありません。ドラフト戦略として競合覚悟で社会人NO1左腕の田嶋投手に1位指名をかけたことは正しい選択であったと思われますし、併せて新外国人投手として左腕のアンドリュー・アルバース投手を獲得したことも理にかなった的確な補強でした。(交流戦終了時点で、アルバース投手8勝1敗、田嶋投手6勝3敗と期待通りの成績を挙げられています)

しかし開幕から10試合の序盤戦のチーム成績は2勝8敗という惨憺たるもので、しかもこの2勝は前述した田嶋投手の1勝とアルバース投手の来日初勝利によるものでした。昨シーズンまでの主力ローテーション投手であった金子千尋投手・西勇輝投手・山岡泰輔投手・Bディクソン投手がこぞって不振であったことが、この大きなつまづきの要因です。しかしここへきて、これら昨季までの主力投手たちの調子が整うと共に、チーム成績も上昇してきており、交流戦終了時点では勝ち負けは貯金の状態にあり、4年ぶりのAクラス浮上も十分可能な位置につけています。

田嶋投手はチームのローテーション投手の一角という位置づけから、今やチームの浮沈を左右する大きな支え手の一翼を担う存在となるまでにチーム内のポジションを上げておられます。とは言っても入団1年目の新人投手であり、夏場を乗り越えてペナントレースを乗り切る為には、ここから先こそ投手コーチや監督の手腕が問われます。体調の状態に合わせての登板間隔の調整や球数の管理など、まさにチームマネジメントの問われる局面に入っていきます。どちらかと言えば弱小球団というイメージのあったオリックス・バファローズ球団は、田嶋大樹投手という宝物を大きく大きく育てていただきたいものです。

田嶋投手ご本人は、プロ入り初年度の目標を「二桁勝利と新人王」と公言されていますが、現時点での6勝は既に二桁勝利を射程圏内に入れつつあるようにも思えますし、二桁勝利をあげれば当然のように新人王も有力な候補となることは間違いありません。しかし田嶋投手には今年の新人王もさることながら、もっともっと大きく日本を代表するような投手として活躍していただきたいと願っています。願わくは2年後の東京オリンピックで、日の丸をつけた日本のエースとして君臨していただきたいものです。これからの大いなるご活躍を願ってやみません。

(おわり)
2018/6/20

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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