小笠原慎之介投手~さあ開幕戦、飛躍のスタート台へ!【第92回】

小笠原慎之介投手~さあ開幕戦、飛躍のスタート台へ!【第92回】

2018年のプロ野球がまもなく開幕します。キャンプ・オープン戦と準備を整えた各チームは、これから長い戦いに突入します。特に昨シーズンは下位に低迷したチームほど、開幕ダッシュを目指して準備に余念がないに違いありません。

かつてセリーグでは、落合博満氏が監督を務めておられた頃を中心に、11年連続のAクラス、うち四度のリーグ制覇を成し遂げる等、中日ドラゴンズがとても強い時期がありました。しかし世代交代がうまくいかなかったのか、ここ5年間はずっとBクラスに低迷しています。そんなチームに希望の星となり得る選手が現れたようです。この選手が主力として一年間活躍できれば上位への躍進も決して不可能ではないように思われます。今回は、今シーズン大いに活躍が期待される中日ドラゴンズの一人の選手を取りあげさせていただきます。その選手の名は、小笠原慎之介投手です。

小笠原投手は1997年10月生まれの20歳、神奈川県藤沢市出身の左投左打の投手です。中学時代から逸材として注目され、進学された東海大相模高校では1年の春からベンチ入りされています。甲子園には2年生の夏、3年生の夏と二度出場され、2年生の夏は初戦敗退だったものの、3年の夏には決勝戦で仙台育英高校の佐藤世那投手(現オリックス・バファローズ)と投げ合い、同点の9回表に優勝を決める勝ち越しソロホームランを打ち、完投で優勝投手となられました。甲子園通算では26回3分の1を投げて防御率3.08、23奪三振という成績を挙げておられます。その後の2015WBSC U-18ワールドカップの日本代表メンバーにも選出され、そこでも2試合8イニングを投げて防御率0.00の成績で、日本チームの準優勝に貢献されました。

そしてその年の秋のドラフト会議で中日ドラゴンズから1位指名を受け入団を決められましたが、前年限りで退団されていたかつてのエース川上憲伸投手の背番号11を継承しての入団であり、いかに期待されての入団であったかがわかります。

プロ1年目の2016年は開幕から二軍生活でしたが、5月の末に一軍に昇格し、交流戦の福岡ソフトバンクホークス戦で初登板、5回を投げて1安打1失点の好投を見せ、初勝利の権利を持って降板されたのですが、後続投手が打たれて初勝利はならず、結局9月4日の対読売ジャイアンツ戦で嬉しいプロ初勝利をあげておられます。結局1年目は、15試合72回3分の1を投げて2勝6敗、防御率3.36という成績でした。ご本人も周囲も満足のいく成績でなかったことは確かですが、高卒1年目で70イニングの実戦登板機会を得て、曲がりなりにも2勝するという貴重な経験を積まれた1年目でした。

そして2年目の昨シーズンは、前年秋に手術をされた左ヒジの影響もあって開幕こそ二軍スタートでしたが、5月には一軍に復帰し、夏場には打ち込まれて再び二軍降格という時期もあったものの、シーズンを通して22試合に登板(うち先発19回)、119回を投げて5勝8敗、防御率4.84、105奪三振という成績でした。ご本人も納得のできる成績でなかったことは確かなようですが、それでもシーズン後半には6試合連続のクオリティスタート(先発投手が6回以上を投げて3失点以内)で締めくくり(この間3勝2敗)、確かな手応えもつかまれた1年であったと思われます。

前述した通りチームは5年連続でBクラスに低迷し、2シーズン連続で2ケタ勝利投手が出ていない現状の中で、小笠原投手は今シーズン(2018年)はチームトップの成績を残したいと明言しておられます。元々ゆったりしたオーバースローのフォームから最速150kmの重い直球と決め球であるチェンジアップ、スライダー、カーブを駆使する本格派タイプの投手ですが、昨シーズン終了後からは更なるレベルアップを目指して、右足を上げた際にややひねりを加える動きを取り入れたり、下半身の使い方を見直すことで、よりパワーを伝えられる形へのフォーム修正に取り組まれています。それを確実にモノにする為、2月の沖縄キャンプでは徹底した投げ込みをされたようです。

第3クールの初日には317球もの投げ込みをされたとの報道がありました。投手のフォームを作り込んでいく過程は人それぞれのようですが、小笠原投手のような投げ込んでフォームを固めるタイプの投手は、ボールを多く投げ込み体が疲れてくると、理想的なフォームで投げていなければ、いいボールがいかなくなるものだそうです。余計な力が抜けて、体の無駄な力を使わずにいいボールを投げることにより、望ましい形(フォーム)を体に染み込ませていくようです。更には球数が進むことにより、下半身を使わないといい球は投げられないようで、こうした過程を経て、ご本人の追求しておられる理想のフォームが固められていくようです。

こうして迎えたオープン戦でしたが、小笠原投手は四度の先発で20イニングを投げて3失点、防御率1.35という安定した数字を残されました。ただ3月30日(金)の開幕戦の一週間前、各チームの開幕投手候補がズラッと名を連ねた3月23日の千葉ロッテマリーンズ相手のオープン戦に小笠原投手も先発されたのですが、3回を投げて1安打1失点も一回・二回と連続して先頭打者を四球で出すなど計3四球と反省点もかなり残った内容でした。小笠原投手ご自身が熱望しておられた開幕投手の座は微妙になったのかなとも思えましたが、3月25日のスポーツ紙の報道では開幕投手確定との記事が各紙に出ましたので、多分3月30日の広島東洋カープとの開幕戦のマウンドに立たれることはほぼ確実と思われます。実現すると、これは20歳173日で迎えることになるそうで、球団の最年少記録を更新する快挙となるようです。

野球チームに限らず組織にとって、将来のある若い人の活躍は組織全体の活性化という点で極めて意味のあることのように思えます。競技は違いますが、女子プロテニスの大坂なおみ選手、スポーツ競技とも違いますが、将棋の藤井聡太六段の活躍は競技全体に世間の耳目を引きつけてしまっています。若いという事は長く続く未来があるということであり、観ている者にもっと強くなるかもしれない、もっとうまくなるかもしれないという期待を抱かせてくれます。言い換えれば夢を感じさせ、ワクワクさせてくれる高揚感を持たせてくれます。若くて技量に優れた期待の星を育てることはチームを活性化させますし、中心となる軸を据えるという意味では基盤を底上げすることに直結します。

しかし期待の星は簡単には育ちません。無理やり人為的に作った中心選手では長くは続かないものです。一方で監督に使いたいと思わせ、使ってみたら一発で答を出してくれるイキのいい選手、そんな選手がチームを支える真の中心選手になっていくのだと思われます。ポジションは違いますが、2試合連続のサヨナラホームランで「神ってる」という流行語まで生み出した広島東洋カープの鈴木誠也選手、高卒2年目で放ったプロ入り初ホームランを満塁ホームランで飾り、一気にレギュラーの座を不動のものとした読売ジャイアンツの坂本勇人選手など、チームを支えるスター選手は監督の起用にキッチリ答を出した選手たちです。そういった意味では、高卒3年目の開幕を開幕投手として迎える小笠原投手は、まさにスターとして一気に階段を駆け上がる扉に手をかけるところまでやって来られました。

小笠原投手はインタビューに答えて、あと2年のうちに圧倒的な存在になりたいと語っておられます。何故あと2年? それは同い年で大学へ進学した選手たちがプロ入りしてくるのが2年後であり、その時に世代NO.1として圧倒的な存在でいたいとの思いからだそうです。また同じインタビューで「誰か意識している選手は?」と問われると「松坂さんです」と答えられたそうです。インタビューの記者は当初意味がよくわからなかったそうですが、「松坂さんは圧倒的でした。春夏連覇して、いきなりプロでも活躍して、だから同世代の選手たちが松坂世代というフレーズで呼ばれるんです。でも誰も小笠原世代とは言いません。それは僕がまだまだだからなんです」という趣旨のことを話されたそうです。

自分が力をつけ、圧倒的な存在感を誇示できる、そんな選手になりたいという強い意志と矜持が感じられます。主力投手として一年間ローテーションを守り抜き、最低でも二ケタの勝ち星をあげてチームの躍進に貢献してもらいたいものです。まず何はともあれ、3月30日の広島東洋カープとの開幕戦、小笠原投手の投げっぷりを大いに注目して見守らせていただきます。

頑張れ、小笠原慎之介!

(おわり)
2018/3/26

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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