山川穂高選手~益々の活躍が期待されるスラッガー【第89回】

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山川穂高選手~益々の活躍が期待されるスラッガー【第89回】

毎年2月1日にプロ野球の各チームは一斉にキャンプを開始しますが、長いシーズンは実質的にこの日から始動します。まさに球春の到来です。若手選手にとっては開幕を一軍メンバーとして迎えることが出来るか、目一杯アピールする場であり、ベテラン選手にとっては一年間戦える体力を作り込む場となります。一軍メンバーではあるが、誰もが認める不動のレギュラーという立場にはない中堅選手にとっては、ポジション争いに打ち勝ち、自らの存在をアピールする場であり、己を鍛錬する場でもあります。

私は今シーズン、ある選手の活躍を大いに期待しています。その選手は昨年の後半だけを見ると、ずっと試合に出続け、チームにも大いに貢献されました。しかしまだ一年間フルに出場した上で、誰もが認める実績を残された経験がありません。そういった意味では、このスプリングキャンプからオープン戦が、自らの存在をアピールする重要な場であり、一年間フルに戦える体力を身につける鍛錬の場としても極めて重要な場であると思われます。今回は、私が期待するその選手を取り上げさせていただきます。その選手の名は埼玉西武ライオンズの山川穂高(ヤマカワ ホタカ)選手です。

山川選手は1991年(平成3年)11月生まれの26歳、沖縄県那覇市のご出身で、主に一塁・三塁を守る右投右打の長距離ヒッターです。沖縄県立中部商業高校、北東北大学野球リーグに所属する富士大学(岩手県花巻市)と進学され、2013年秋のドラフト会議で埼玉西武ライオンズから2位指名を受け、入団されています。

高校時代は甲子園への出場はなかったものの通算27本塁打を打ち、大学では1年生の春から4番を務め、2年生の時には日米大学野球選手権大会の日本代表に選ばれ、そこでも第1戦で満塁ホームランを打つなど、長距離バッターとしてはアマチュア球界では名を知られた逸材として、プロへの道を選ばれました。

山川選手は入団時の体重が108kgの巨漢であり、同じチームに所属する中村剛也選手とそっくりな体型、守備位置も同じということから、中村選手の愛称である「おかわり君」にちなみ「おかわり2世」の愛称で親しまれています。

山川選手は100kgを超える巨漢の体型からはちょっと想像しにくいですが、50mを6秒2で走るかなりな俊足であり、バック宙返りが出来るほどの身軽さも身につけておられます。子供の頃に始めた書道は8段の腕前で、スポーツ選手にしておくのがもったいないような達筆の持ち主であり、大学生の頃から独学で始めたピアノでクラシックの名曲を楽譜なしで数々弾けるほどの器用な一面も持っておられるようです。この器用さで、実は大学時代から山川選手は後にチームメートとなる中村剛也選手のバッティングフォームを動画を見ながら収得されたようで、今もかなり似たフォームをされています。

ただし中村選手と似ているのは外見だけで成績は遠く及ばず、入団後の最初の2年間はプロの分厚い壁にはじき返され、とても苦労されています。入団1年目の2014年は出場14試合、2年目の2015年は1試合の出場に終わっています。しかし二軍では、1年目にイースタンリーグの本塁打王を獲得するなど、片鱗は見せ始めていましたし、1年目の一軍戦でたった3本しか打てなかったヒットのうち2本はホームランと、当たれば飛ぶというスラッガーの魅力の片鱗も伺わせておられました。

そして3年目の2016年、二軍で64試合に出場して22本塁打で二度目のイースタンリーグ本塁打王となる一方、一軍でも49試合に出場し、139打数36安打、打率.259、32打点という成績をあげられましたが、ここでも36本のヒット中14本がホームランと、当たれば飛ぶスラッガーの魅力を見せつけられました。いよいよ山川選手がブレークするのかな、と思わせた昨シーズン(2017年)でしたが、すんなりとはそうはなりませんでした。

開幕当初こそ一軍ベンチに入っておられましたが、結果を残せずファーム落ち。しかし7月8日に再昇格すると、その日のうちに代打ホームランを打ち、以降はスタメンに定着するだけでなく、終盤は4番を任され、8月9月と二ヶ月連続でパリーグの月間MVPに選出されるなど、一気に開花されました。前半戦で試合に出場されていませんので、出場試合数は78試合にとどまったものの、242打数72安打、打率.298、61打点、23本塁打という成績をあげられました。

ここでも注目すべきはホームランで、山川選手の242打数23本塁打、本塁打率10.52という数字(1本の本塁打を打つのに要した打数)は、パリーグのホームラン王である福岡ソフトバンクホークスのデスパイネ選手の13.66、セリーグ・ホームラン王のゲレーロ選手(昨シーズン中日ドラゴンズに在籍、今シーズンより読売ジャイアンツに移籍)の13.40をも凌ぐ記録です。

仮に、の話ではありますが、もし山川選手が一年間試合に出続けていればデスパイネ選手、ゲレーロ選手以上のホームランを打つことも可能だった訳で、まさに努力だけではどうにもならない、遠くへ飛ばすという天賦の才能が備わった方のようです。

こんな天賦の才能に恵まれながらも、プロ入り当初芽の出なかった山川選手が、ここへ来て大きく開花できた要因は何だったのでしょうか。そのひとつは、中村剛也選手のマネを完全に辞められたことにあったようです。体型は似ていてもお二人の打ち方は全く違うようで、そのことに気づき自らの身体の特徴に合った打撃フォームを模索し始めたところから、大きく開花されたようです。即ち中村選手は下半身を使って腰を中心に回転させ、ボールを前で裁いておられるのに対し、山川選手は上半身とリスト(手首)の強さを生かして、体に近いところにポイントを置いて遠くに飛ばす打法のようです。そして結果が出るにつれて「僕はこれでいいんだ」と思えるようになったことで、打席の中で自分とではなく、相手投手とだけ戦うことが出来るようになったことが更に好結果につながったように思う、とご本人が語っておられます。まさに何かをつかみとられたように思われます。

近年プロ野球の打者を評価する基準として出塁率と長打率を足したOPS(On-base Plus Slugging)という指標を目にすることが多くなりました。打者の総合指標として用いられることが多く、一般的に9割以上あると優秀、一流選手の証しとされています。ちなみに昨年規定打席を上まわった打者の中でOPSが9割を超えているのはセリーグに3人(鈴木誠也選手、筒香嘉智選手、丸佳浩選手)、パリーグに2人(柳田悠岐選手、秋山翔吾選手)しかいません。10割を超えているのは柳田悠岐選手一人だけです。そんな中で規定打席不足ではあるものの、山川選手のOPSは1.081(出塁率.420、長打率.661)でした。山川選手は2018年シーズンの目標として、このOPS10割超えを宣言しておられます。その為にも一年間試合に出続け、規定打席をクリアした上で、それなりの打撃成績を残してもらいたいものです。規定打席をクリアしてOPS10割超えが達成できれば、まさに一流の領域への仲間入りが実現されているものと思われます。

本当に強いチームは故障者やケガ人が出ても、少々の想定外が起ってもチームの根幹はゆるがないものです。その為にはチームとしての層の厚さが絶対に必要です。レギュラークラスの中で同等レベルの選手が試合の出場をかけて激しく競い合うことが、チーム力を底上げし、チームの層の厚さを増すことにつながります。埼玉西武ライオンズがかつての黄金時代の輝きを取り戻す為には、山川選手がリーグを、そして日本を代表するような選手を目指して切磋琢磨し、それに負けじと、同じポジションを守るメヒア選手(2014年ホームラン王)、中村剛也選手(過去ホームラン王6回)が激しく闘志を燃やすことだと思われます。

山川選手にとって決して楽な道のりではありません。チーム内の熾烈な競争を勝ち抜き、ケガなく1年間を戦える体力をつけ、好不調の波をなくしてコンスタントに成績をあげ続けていただきたい、そして自らの手で、実力で4番の座をもぎ取っていただきたいと思います。シーズンの開幕は3月30日ですが、キャンプ中から動向を注目させていただきます。2018年シーズン、山川穂高選手のご活躍を心よりお祈りしています。     

(おわり)
2018/1/30

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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