宮崎敏郎選手~チームへの貢献に徹する5番打者【第80回】

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宮崎敏郎選手~チームへの貢献に徹する5番打者【第80回】

2017年のプロ野球は7月も終わりを迎え、もう後半戦に差し掛かっています。パリーグは東北楽天ゴールデンイーグルスと福岡ソフトバンクホークスの2チームが激しい首位争いをしていますが、一方のセリーグは広島東洋カープがぶっちぎりの独走状態となっており、もはや興味はクライマックスシリーズへ進出する残り2チームはどこになるか、といった方向へ移り始めています。

そうした中でチーム力を整え、一時は単独2位にまで順位を押し上げてきたのが横浜DeNAベイスターズです。今回は、その横浜DeNAベイスターズで躍進の原動力として活躍されている一人の選手を取り上げさせていただきます。その選手の名は宮崎敏郎選手です。

まず宮崎選手のプロフィールですが、1988年12月生まれの28歳、佐賀県唐津市のご出身で、右投右打の内野手です。1988年生まれというのは、駒大苫小牧高校の田中将大投手と早稲田実業の斎藤祐樹投手が甲子園を沸かせたハンカチ世代の選手ですが、当時の宮崎選手には無縁の世界であったようで、唐津市にある佐賀県立厳木高校で投手・内野手として頑張っておられました。

高校名の「厳木」は「きゅうらぎ」と読むそうで、野球では全国的には全く無名の学校で、宮崎選手にも全国レベルの大会への出場経験はありません。

その後大分市にある日本文理大学に進学され、ここでは1年生の秋から三塁手のレギュラーに定着され、2年生・3年生の時には全日本大学野球選手権にも出場され、3年時には5番打者としてチームのベスト8進出に貢献されています。

こうして大学時代にようやく頭角を現わし始めたのですが、卒業後も野球を続けることを希望して受験した社会人チームへの就職活動ではことごとく不採用となられたそうです。原因は体が大きくなかったこと(現在の球団公称発表で172㎝、85kg)と守備力の評価があまり高くなかったことのようですが、10社以上の企業から不採用通知を受けた後、受け入れてくれたのが、セガサミーであったようです。

セガサミー硬式野球部での二年目にあたる2012年、東京第3代表として出場された第83回都市対抗野球大会の初戦・日本通運戦において、8回裏に逆転満塁ホームランを打ってチームの3年ぶりの勝利に貢献されましたが、これもきっかけの一つとなってその年の秋のドラフト会議で横浜DeNAベイスターズから6位指名を受け、入団されています。24歳でのプロ入りでした。

アマチュア時代、そしてプロ入り後も宮崎選手を知る周囲の方々は、異口同音によく練習をする選手であることを口にされています。華やかなイメージを持たれるプロ野球の世界ですが、宮崎選手はそのイメージとは対極のところで、地道にコツコツとグラウンドの土にまみれている、そんなイメージが持たれるぐらいの練習の虫のようです。

今年が入団5年目のシーズンとなりますが、ここまで決して順風満帆であった訳ではありません。入団1年目の5月に1軍デビューを果たされ、交流戦の時期には初安打、初打点、初本塁打も記録されてはいるものの、チーム事情から内野はショートを除く三つのポジションを守り分けながら少しずつ少しずつ経験を積んでいかれました。

一軍での出場試合数は1年目の2013年が33試合、以降2年目が5試合、3年目が58試合と推移し、昨年2016年のシーズンでは101試合に出場するところまでポジションをあげてこられました。

2016年は最終的には規定打席に届かなかったものの、打率.291・11本塁打・36打点を記録され、101試合中83試合でスタメン出場(一塁手20試合、二塁手36試合、三塁手27試合)、それも3番打者、5番打者としてそれぞれ24試合、36試合のスタメン出場を果たされる等、チームの打線の中でも重要な役割を担うまでになられています。

しかしチームが初めて進出したクライマックスシリーズのファイナル広島戦を1勝4敗で敗退した後のラミレス監督の会見では「(4番の)筒香と勝負してもらえるような、次の(5番)打者が必要だと思いました」と指摘されるなど、飛躍の一方で監督の本当の意味での信頼を勝ち得るにはまだまだ課題も多いことを実感されたシーズンでもあったようです。

宮崎選手の打者としての最大の特徴は、そのバットコントロールの巧みさにあるようです。現役時代に通算2017安打を記録し、首位打者にもなったことのあるラミレス監督が「宮崎のバットコントロールはチームというより、セリーグの中でも一、二を争う。引っぱることも出来るし、流すことも出来る。バランスがとてもいい」と太鼓判を押しておられます。

この巧みなバットコントロールは独特なバッティングフォームから生み出されているようです。軸足の右足にほとんどの重心を乗せ、左足は添えるようにして踵(かかと)を浮かせている。構えのスタンスは極端に狭く、グリップを胸の下あたりの低い位置に置き、そこから投手の始動と同じぐらいのタイミングで早めに左足を高く引き上げる。右足に体重を乗せて軸回転していることで外のボール球を追いかけず、インコースのボールには下半身からクルッと回って押し込むという打法のようです。またグリップの位置が低いことで肩の力がストンと抜けて力まない点もいいところだそうです。

この宮崎選手の独特の打撃フォームですが、驚くべきは小学生の頃からほとんど変わっていないそうです。体の小さかった宮崎選手が少しでも遠くへ飛ばそうとする中で自ら試行錯誤を繰り返す中から編み出されたフォームのようです。

宮崎選手のバットコントロールの巧みさを示すひとつの数字があります。それは7月30日現在のセリーグの規定打席到達者の中での三振数が極めて少ない(30三振)ということです。

豪快にバットを振るタイプの打者なのですが、巧みなバットコントロールで三振は食わないようです。また2ストライクと追い込まれてからも厳しいボールをカットして粘ることが出来る為、チームメートで同じクリーンナップを打つ筒香選手、ロペス選手と比べても追い込まれてからのカウント別打率では高い結果を残しておられます。

宮崎選手の打つヒットの約7割がセンターから右方向に飛んでいるそうですが、これもインコースをうまくさばける技術を持っていることと、リストの強さと柔かさで逆方向にも強い打球が打てる、宮崎選手の持つ技術の為せる技のようです。

さてチームとして既に90試合以上を消化している今シーズンですが、ここまでの宮崎選手の成績は7月30日現在79試合に出場して打率.336、40打点、8本塁打という素晴らしい実績を残されています。ちなみにですが、打率の.336というのは現時点でのセリーグの首位打者です。

シーズン序盤で左脇腹痛のために10数試合の登録抹消による欠場がありましたが、5月の連休期間中に復帰されて以降はほぼ全試合にわたって5番サードのレギュラーとして固定されており、今や横浜DeNAベイスターズの不動のクリーンナップの一員となっておられます。昨年のクライマックスシリーズの敗退後にラミレス監督が言われた「筒香と勝負してもらえるような次の打者が必要」という、まさにその次の打者が確立できたことが現在のチームの躍進につながっていることは間違いありません。

プロ生活5年目を迎え、今まさに飛躍の時を迎えようとしている宮崎選手ですが、実は宮崎選手は入団二年目の年に大きな失敗を仕出かしておられます。

ご自身にとってそのシーズンの初の一軍登録を勝ち取った2日後に二塁手として出場した試合で、相手選手が打ったピッチャーの前にころがした犠牲バントに対し、投手が二塁に送球するものと思い込んで目をそらした為、一塁カバーに入った宮崎選手は一塁に投げられたボールを捕球できなかったという大ボーンヘッドだったようです。今回宮崎選手のことを色々調べる中で私自身もこの映像を見ましたが、少年野球の世界でも見られないようなシーンでした。

当時の中畑監督は「野球の世界にないボーンヘッド」と酷評し、即刻の二軍降格処置がとられました。さすがにこの時は宮崎選手も自分自身のプロ野球生活は終わったかもしれない、と思い詰めるほど悩まれたようですが、いつまでもクヨクヨしても仕方ない、今やれることをやろうと思い直し、再び練習に取り組まれたようです。

後に当時の中畑監督は、宮崎選手の打撃に非凡なものがあることは認めるものの、守備の不安を考えるとスタメンで使い続ける勇気は私にはなかったと率直に語っておられます。

一方昨年監督に就任されたラミレス監督は、守備面のマイナスは打撃でカバーできると判断しての起用であったのだろうと思われます。昨年出場試合数が大幅に増え、今年は更に増えて不動のクリーンナップで起用されている姿をみると、まさに選手個々の能力、持てる技術をどういう形で活用することがチーム全体にとって最高の結果をもたらすか、考え抜かれた起用がなされているように思えてなりません。

宮崎選手は今年はほぼすべての試合で三塁手として起用されていることもあってか、数字に出てくる守備率ではセリーグの三塁手の中でも一、二を争ういい数字を残しておられます。勿論プロの内野手ですから、守備率の数字だけでは判断できない守備範囲の広さや咄嗟の判断力といった要素もあるのだとは思います。しかし好調な打撃が中畑前監督が感じておられたような守備の面での不安をも解消しつつあるのかなとさえ思えてきます。

プロの世界で誰からも認められる実績を数年出し続けるまでは、プロ野球選手というのは一般的には自らの成績が気になってしまうものだそうです。

ただ宮崎選手は「僕はどちらかというと自分の成績よりチームの方に気持ちが向くタイプです。結果的にチームが勝てばいいんですから、例えばの話、ノーアウト二塁の場面が4打席あったら全部セカンドゴロ(進塁打)を打ちたいぐらいです」と語っておられます。

6月11日に規定打席に到達し、いきなり首位打者として打撃ランキングに登場して以来、1ヶ月以上トップを維持し続けては来られましたが、真夏の時期を迎え、ここ数試合打率はかなり下がってきました。ただ前述のような、ノーアウト二塁の場面ですべて進塁打を打ちたいという気持ちがあれば、チームに貢献し続けることはきっと出来るに違いありません。横浜DeNAベイスターズが満員の横浜スタジアムでクライマックスシリーズを戦う為には、ここからが正念場です。宮崎選手がチームにどんな貢献をしていかれるのか、残り試合での宮崎選手の活躍を大いに楽しみに見守らせていただきます。

(おわり)
2017/7/31

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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