鈴木誠也選手・岡田明丈投手~躍進を支える、若き4番と若きエース【第78回】

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鈴木誠也選手・岡田明丈投手~躍進を支える、若き4番と若きエース【第78回】

2017年のプロ野球交流戦が終了し、今年もパリーグの勝ち越しとなりました。交流戦の最高勝率は、最終戦の直接対決で広島東洋カープを破った福岡ソフトバンクホークスが獲得しましたが、敗れたとは言え広島東洋カープも12勝6敗の同率2位となり、セリーグの球団の中では極めて安定した戦いぶりが目につきました。

その広島東洋カープですが、昨年25年ぶりのリーグ制覇を成し遂げた際にはチームの年間勝ち星(89勝)の半分近い41勝を三人の主力投手(野村祐輔投手、クリス・ジョンソン投手、引退した黒田博樹投手)であげていましたが、今年は交流戦終了時点で野村投手3勝、ジョンソン投手1勝という結果となっています。

しかも昨年34セーブをあげた抑えのエース中﨑翔太投手も4月初旬から約一ヶ月半にわたって戦線離脱、通常ここまで前年の主力選手の成績が落ちてしまうとチーム成績もそれに比例しがちなものですが、今年の広島東洋カープは交流戦を前述のとおり同率2位、セリーグ内の成績も2位に3ゲーム差をつけてガッチリ首位をキープしています。昨年の優勝を経て見事なまでに選手層が分厚くなっていることを如実に示しています。

こうした中、投手陣では大卒2年目の岡田明丈(アキタケ)投手がリーグトップタイの7勝、交流戦から先発を任され交流戦3戦3勝・通算で6勝をあげている大卒3年目の薮田和樹投手、先発も中継ぎもこなす大卒4年目の九里亜蓮(クリ・アレン)投手が5勝、同じく大卒4年目で再び先発の役割を担っている大瀬良大地投手が4勝、と20代の若い投手陣が昨年の主力の出遅れあるいは不調を十分補っています。

打撃陣も交流戦打率1位・リーグ内打率2位の丸佳浩選手をはじめ、セリーグの打撃20傑に6人の選手が名を連ねており、チーム打率・チーム得点とも12球団で一番の成績を記録しています。まさに投打がガッチリ噛み合い、極めて安定した戦いぶりが目につきます。

今回のコラムでは初めての試みとなりますが、二人の選手を同時に取りあげる中で広島東洋カープの安定した強さの秘密に迫ってみたいと思います。取り上げるお二人は、若き4番バッターの鈴木誠也選手と若きエース岡田明丈投手です。

鈴木誠也選手は1994年8月生まれの22歳、東京都荒川区のご出身で、二松学舎大学附属高校では、投手としてストレートで148kmを記録したり、打者としても対外試合で通算43本塁打を放つなど、投打にわたって素質の片鱗を見せ始めてはいたものの、高校時代に春夏の甲子園出場を果たすことはありませんでした。

そして2012年秋のドラフトで広島東洋カープは鈴木選手を内野手としてドラフト2位で指名しています。入団1年目の2013年には11試合、2年目の2014年には36試合と、まだ数は少ないですが一軍での試合経験も積んでいかれました。そして3年目の2015年には開幕スタメンをつかみ取り、年間通して97試合に出場し打率.275、本塁打5本、25打点という成績を残されました。それまでの二年間は内野の守備につくこともあったようですが、この年は内野守備には一切つかず、強肩俊足の外野手としての地固めを着々と進められたように見受けられます。

そして4年目となる昨年、春季キャンプ終盤でのケガで少し出遅れはしたものの、年間129試合の出場で打率.335(リーグ2位)、29本塁打(リーグ5位・チームトップ)、95打点(リーグ5位)、16盗塁(リーグ7位)の成績を残され、チームの主力メンバーとしての地位を確固たるものとされました。そして何と言っても鈴木選手の名を一気に全国区に押し上げたのは、交流戦でのオリックス・バファローズとの三連戦でした。第一戦・第二戦と連続でのサヨナラ本塁打、第三戦での決勝本塁打で、緒方監督が思わず口にされた「神ってる!」の言葉と共に、野球ファンの枠を超えて名前の知られる存在となりました。

そして今シーズン、開幕10戦目となる4月11日の読売ジャイアンツ戦から4番に座り、今や押しも押されもせぬチームの中核として、リーグを代表する強打者のお一人としての存在感を発揮されています。そしてここぞという場面での勝負強さは健在で、今年の交流戦でのオリックス戦でも延長12回裏にサヨナラ本塁打を打つという派手なシーンがありました。ただ昨年は「運のいい奇跡」が起こったかのような扱いでしたが、今年は打つべき4番が実力通りに試合を決めた、という形に扱いが明らかに変わっており、これこそが鈴木選手の一年間の成長を如実に物語っているように思われます。

鈴木選手を常日頃から見ている周りの方々から見ても、鈴木選手が大きく変わったのは2015年から2016年にかけてのオフのことであったようです。まず体つきが大きく変わり、スイングも格段に力強くなったようです。体力面、技術面の進化ということでは、福岡ソフトバンクホークスの内川聖一選手の主宰されている自主トレチームに志願して参加しておられることも効果を出しているのかもしれません。

併せて鈴木選手の心の持ち方そのものが今に至る進化に繋がっているように思えてなりません。鈴木選手は自分自身の人生に対して、自分には「時間がない」という捉え方をされているようです。「時間がない」から急がねばならない。当然1打席たりとも無駄には出来ない。まさに1打席1打席が勝負。ご自身の時間に対するこの捉え方をより端的に言ってしまうと、人生は短いということ。短いからこその「今」。この「今」を逃さずに全力で取り組むしかない、という考えにつながるようです。もう既に球界を代表する強打者のお一人になりつつある今日の姿も、鈴木選手ご自身にとっては、更なる高みへ至る通過点ということに他ならないのだと思われます。

さてもうお一人の岡田明丈投手ですが、1993年10月生まれの23歳、東京都練馬区のご出身です。中学3年の時のご両親の離婚で、高校入学のタイミングで母親の実家がある大阪へ転居、大阪商業大学高校に入学され、ここで投手を始められています。高校時代に甲子園出場はなく、そのまま大阪商業大学に進学されています。大学時代の前半は2学年上に絶対的エースであった近藤大亮投手(現オリックス・バファローズ)が在籍していたことで登板機会に恵まれませんでしたが、4年生では春夏のシーズンとも6勝をあげる活躍で関西六大学リーグでの2季連続優勝に貢献されています。

そして2015年秋のドラフトで広島東洋カープから1位指名を受け入団されています。この時のドラフト会議では他にも好投手が何人もいましたが、広島球団は早くから岡田投手一本に絞り込んでいたようです。しかし全国的な大会で目立った実績がなく、地元の広島ファンの間ではドラフト会議直後には「地味」「ガッカリ」といった声も少なからず挙がっていたようです。

しかし入団後は1年目の開幕2カード目で先発登板(対巨人戦)の機会を手にするなど、シーズンを通して18試合に登板(うち先発15試合)して4勝3敗、防御率3.02という成績を残されました。そして昨シーズン終了と共に、課題の制球難を克服する為の投球フォームの矯正に取り組み始められたようです。

春季キャンプで新しいフォームの完成度を高める中でオープン戦を迎えられた訳ですが、岡田投手は登板ごとに明確なテーマを自らに課してマウンドに上がっておられたようです。即ち「フォームを意識」「真っすぐのキレ」「打者の内角に投げ切る」etc。

昨シーズンをもって現役を引退された黒田博樹氏は岡田投手についてこんなことを語っておられます。「1年目の投手が序盤に結果を残せなくて二軍に降格し、その年の終盤に再び一軍に復帰してあれだけの投球が出来ることは滅多にない」と、岡田投手の修正能力の高さに驚いておられたようです。

岡田投手は自らにテーマを課し、そのテーマを自らの力でこなしながら一歩一歩高いところを目指していかれるタイプの方のようです。こうして迎えた今シーズンですが、交流戦終了時点で、12試合に登板して80回の投球、7勝2敗(リーグトップタイ)、防御率3.26、68奪三振という成績を残しておられます。勝ち星と投球回数はチーム最多であり、もうチームを支える存在になっておられるのですが、勝ち投手になっても「四球からの失点がある」という反省の言葉が口をついて出るのを見ていると、現状に満足している感じは全く無く、まだまだ上を目指しておられる印象を強く受けています。

当シリーズの第30回「広島カープというチームの行き方」の項で、このチームには他球団からのFA選手が一人もいないことを書かせていただきましたが、このチームには選手は自らが育てるものという不文律があり、愚直にその実行がなされていると思えてなりません。外国人選手を除くと、ほんの一部の選手以外は野手も投手も大半の選手が生え抜きばかりです。外国人選手で足りないところを補っていますが、その外国人選手も日本の野球への適応能力を備えた選手が多く、そこにスカウトの選手の適正を見抜く目の確かさを感じさせてくれます。

元々広島東洋カープというチームは伝統的に練習をよくするチームですが、近年はドラフトで獲得した若手選手を徹底的に鍛え、チームの中で競わせ、その競争の中を勝ち上がってきた者だけが一軍のグラウンドに立てるという暗黙のルールがより徹底されてきているように感じられます。

このチームには営業方針で一軍に置いていると思わせるような選手は一人もいませんし、作られたヒーローと感じさせるような選手も一人もいません。このチームのヒーローは自らの力で這い上がってきた、実力を兼ね備えた選手ばかりです。このことが一軍で少々の実績をあげていてもウカウカしていたら取って換わられるという思いに選手を駆り立てるのでしょうし、いい意味でいつもチームの中に緊張感が漲っている状態が維持できているように感じられます。

それともうひとつ、あえて言えば、入団前の時点での甲子園の大ヒーローや神宮の星といった全国的に名を知られた選手よりも、地味でも先々の可能性を秘めた実力派を着実にドラフト指名している球団の姿勢も、今日の強いチーム作りの一因となっているのではないでしょうか。

広島東洋カープのチーム作りは、選手を見い出す・鍛えて育てる・常にチームの中を競わせ緊張感を持たせ続ける、ことによって成り立っているようです。個々の選手の力量が上がることによって選手層が厚くなり、不幸にして発生してしまう選手のケガ・故障といった不測の事態が起っても大きな影響を受けずにチーム力が維持されます。まさにチーム(組織)作りの王道がなされているように思われます。

これから夏場を迎え、まさにチームの底力を問われる戦いの時期に入っていきます。交流戦の前半で大きくつまづいた読売ジャイアンツも交流戦の最終週をいい形で締めくくり、ここからの逆襲が期待されますし、金本監督の下、着実にチーム力をアップさせている阪神タイガースとはシーズンの終盤まで熾烈な戦いが続いていくものと思われます。広島東洋カープの若き4番・鈴木誠也選手と若きエース・岡田明丈投手がこれからの正念場でどんな活躍を見せてくれるのか、大いに楽しみに見守らせていただこうと思います。

(おわり)
2017/6/23

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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