野村祐輔投手~チームの順回転を支える勝ち頭の力【第62回】

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野村祐輔投手~チームの順回転を支える勝ち頭の力【第62回】

今シーズンのプロ野球はオールスター戦も終わり、いよいよこれから終盤の熱い戦いの時期へ・・・と言いたいところですが、パリーグはまだしも、セリーグは広島カープの独走という思いもよらない展開となっています。そもそも今季の広島カープは、エースであった前田健太投手のメジャーリーグへの移籍もあり、下馬評もあまり芳しいものではありませんでしたが、交流戦の後半からの11連勝で一気に波に乗り、読売ジャイアンツ以下を大きく引き離しての首位独走です。しかしチーム成績を少し細かくながめてみると、得点はリーグ最多、失点はリーグ最少、得失点差は大幅プラス(ちなみにセリーグの他チームはすべてマイナス)、チーム打率・チーム防御率は共にリーグ1位、おまけにホームランの本数・盗塁数もリーグ1位ですから、首位を独走する現時点の成績に何の不思議もありません。

しかも一部の特定の選手がチーム全体の強力な牽引車として引っ張っているのではなく、投打・守るのすべての面で中心となるべき選手がそれぞれの役割をきっちり果たした上での首位独走です。即ち攻撃面では今やチームの中核として活躍する菊池涼介・丸佳浩の両選手、ベテランの新井貴浩選手、そしてその神がかり的な活躍で「神ってる」という造語まで生み出した高卒4年目の若い鈴木誠也選手、リードオフマンであり菊池選手と共に、守備の要として活躍する田中広輔選手、出場試合数はそれ程多くはありませんが肝心な場面での活躍が目立つ、ルナ・エルドレッドの両外国人選手と実に多彩な顔ぶれです。投げる方でも先発三本柱を形成する野村祐輔投手、ジョンソン投手、黒田博樹投手に加え、セットアッパーのジャクソン・ヘーゲンズの両外国人投手、そして抑えの中崎翔太投手と役割の分担が見事に機能しています。今回は投打を支えるこれら魅力あふれる選手達の中から野村祐輔投手を取りあげてみたいと思います。

野村祐輔投手は1989年6月生まれの27歳、岡山県倉敷市の出身、広島の広陵高校・明治大学を経て2011年秋のドラフトで広島東洋カープから1位指名を受け入団されています。2011年のドラフト時には、菅野智之投手(現読売ジャイアンツ、2011年ドラフトでは日本ハムファイターズが1位指名も入団拒否)、藤岡貴裕投手(現千葉ロッテマリーンズ)と「大学ビッグ3」と呼ばれるほどの期待の新人でした。プロ入り後は4月の初旬に初勝利をあげると前半戦で7勝(3敗)と順調に勝ち星を積み上げ、監督推薦でのオールスター出場も果たすなど順調な歩みで階段を上っていかれました。最終的には9勝(11敗)と二桁勝利には届かなかったものの防御率1.98をマークし新人王にも選ばれています。

プロ入り2年目の2013年は開幕から連敗し、右肩関節唇損傷でプロ入り後初となる二軍落ちも経験されましたが、フォームの修正を行なって盛り返し、結局最終的には12勝6敗という好成績でシーズンを終えられました。ここまでは順調だったプロ生活ですが、3年目の2014年、4年目の2015年は安定感を欠いて成績も下降線をたどり、勝ち星も7勝・5勝(負けはそれぞれ8敗)、防御率も4点台前半から4点台後半へ、2015年に至っては年間の投球回数が100回にも満たないという、プロ入りワーストの成績にまで落ち込んでおられます。かつての輝きは薄れ、このままの状態が続いたら「その他大勢の一人」に成り下がってしまうというピンチの中で迎えた今シーズンの開幕であったように思われます。

今シーズンのご自身の初登板となった3月29日の中日戦こそ、5回3分の1を投げて3失点で敗戦投手となりましたが、以降は順調に白星を積み重ね、7月22日の阪神戦を終えた時点で16試合に登板して12勝2敗、防御率2.44という素晴らしい成績をあげておられます。更にもう少し細かく見てみると、試合の前半で打ち込まれて交代となった試合は1試合もなく、最低でも6回途中までは投げておられます。更にこの間4失点が1回、3失点が4回あるものの、あとの11回はすべて2失点以内、見事に「試合を作る投球」を続けておられます。

しかも特徴的なのは完投した試合はひとつ(完封)だけで、あとの試合はすべて途中交代(6回途中交代が4回、7回途中が1回、8回途中が1回)ですが、6回をキッチリ投げ終えて交代されたケースが16試合登板の半分の8試合にも及ぶことです。即ち勝ち投手の権利を持って降板後、リリーフ陣が打たれて勝ちがつかなかった試合は1試合もなく、すべて野村投手に勝ち星がついています。それもあっての12勝なのですが、いかに野村投手の後に投げる中継ぎ・抑えがしっかりと役割を果たしているかがわかります。そして開幕以来、中4日・中5日と間隔を詰めて投げたケースは一度もなく、中6日ないし中7日で決して無理使いをしないローテーションで投げ続けておられます。

こうして2年間の低迷から見事な復活を遂げ、今や勝ち頭としてチームを支える野村投手ですが、この復活を畝投手コーチはこんな風に語っておられます。「野村の投球スタイルは外角中心で、少し甘くなると打たれてしまいます。だからもっと打者のフトコロを突く球種を覚えたらどうか、ということで右打者へのシュート、左打者へのカットボールに磨きをかけさせました。この二つの球種をしっかりインサイドに投げられるようになってから、野村の本来の武器である外の球がより生きるようになったんです。」更にカーブとチェンジアップでタイミングを外す攻め方も効果をあげ、今シーズンの復活・快投につながっているようです。

こうした技術面での進化・改善に加え、野村投手自身は「全員で勝とう」とチームが一丸となって同じ方向を向いて戦っていることが自分自身にもすごくいい影響を与えてくれていると語っておられます。併せて投手では黒田選手、野手では新井選手という大先輩の存在がチーム全体にいい影響を及ぼしてくれていることは間違いないとも語っておられます。年齢が一番上なのに、常に全力で決して手を抜かない、その姿勢に自分を含めて若い選手は引っ張られているとのことです。

ここまでの広島カープの戦いぶりは、メジャーリーグに移籍した前田健太投手の抜けた穴をも感じさせないぐらい順調に推移しているようにも見えますが、決してそうとも言い切れず、今年はエースとしての活躍が期待されていた福井優也投手の不振、大きな飛躍の年となることが期待されていた大瀬良大地投手がオールスター明けにようやく今季初登板(しかし試合では打ち込まれて再び二軍落ち)という誤算も生じています。それでも現在のチーム成績、これは戦力のバランスが実にうまくとれている証拠のように思われます。既存戦力の底上げ、若手の台頭、無理な負荷をかけないベテラン選手や外国人選手の起用、まさに持てる戦力の有効活用という意味で、フロント・監督コーチ・選手が一体となったマネジメントの勝利のように見受けられます。

まもなく広島カープに優勝マジックがつくものと思われますが、優勝経験のない選手(黒田投手や新井選手も含めて)ばかりの集団に「プレッシャー」や「重圧」という目に見えない敵が襲い掛かってくるはずです。1991年の最後のリーグ優勝から25年も待ち続けている広島カープのファンの方々も、これから先少しでも負けが込もうものなら、心配で心配で胸も張り裂けんばかりの思いをされるはずです。今はゆとりを感じさせるぐらいチームは順調に順回転していますが、いずれやってくるかもしれないチームの正念場でこそ、勝ち頭である野村投手の真の存在感が発揮される時なのかもしれませんし、ぜひそうあって欲しいものです。

現在登板機会8試合で8連勝中(7/22現在)の野村投手の快進撃がこの先も続くのなら、広島カープの25年振りのリーグ優勝は現実味を増してくるに違いありません。黒田投手が日米通算200勝、新井選手が2000本安打を達成した年にチームも優勝ということになると、本当に記念すべき年として長く記憶に残り語り継がれることでしょう。野村投手がこれからの胸突き八丁の戦いをチームの支えとして益々ご活躍いただくことを心よりお祈りしたいと思います。

(おわり)
2016/07/26

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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