今永昇太投手~可能性を秘めた若者の前途【第61回】

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今永昇太投手~可能性を秘めた若者の前途【第61回】

3月25日にセパ両リーグ同時に開幕した今年のプロ野球も早いもので三ケ月が経過し、全日程の半分ほどが消化されています。そこで今回は今年新人として入団した選手を題材に取りあげてみたいと思います。

今年も各球団に入団した多くの選手の中から既に一軍デビューを果たした選手が何人もいます。しかし初勝利・初セーブあるいは初安打・初打点・初本塁打といった第一歩目の足跡を残した選手ばかりではありませんし、第一歩目の足跡を残すことが出来た選手でも継続して試合に出続けている選手はほんの一握りに過ぎません。それぐらいアマチュアの一流といえどもプロの壁は厚いのだと思われます。この厚い壁をこじあけて、数年後チームの主力としてのし上がってくる選手は必ずいるはずですし、そんな選手たちの奮闘を大いに期待したいものです。

一方で既にチームの主力メンバーの一角として頑張っている、ほんの一握りの選手もいます。今年の新人選手では、先日オールスター戦のファン投票で新人選手として唯一選出された阪神タイガースの高山俊選手、チームのほぼすべての試合に出場していた東北楽天ゴールデンイーグルスの茂木栄五郎選手(残念ながら茂木選手は試合中のケガで6/26に登録抹消になってしまいました)、開幕からローテーションの一角として投げ続けていた横浜DeNAベイスターズの今永昇太投手の3人が該当するかと思われます。今回はこの3人の中から今永昇太投手を取りあげてみたいと思います。

今永昇太投手は1993年(平成5年)9月生まれ・福岡県北九州市出身の22歳、福岡県立北筑高校・駒澤大学を経て昨年秋のドラフト会議で横浜DeNAベイスターズから1位指名を受け入団されています。6月末時点で12試合に登板(すべて先発)、72回3分の2イニングを投げて5勝5敗、防御率2.48、74奪三振という成績をあげておられます。プロ入り初登板となった3月29日の巨人戦こそ7回を投げて4失点(自責点3)という結果であったものの、4月に投げた4試合は失点がそれぞれ1点・3点(自責点2)・1点・2点と素晴らしい投球をしながら打線の援護に恵まれず、結局0勝3敗、4月末時点では通算0勝4敗・防御率2.45という成績になってしまいました。

ただ投げているだけでなく、毎試合毎試合いい投球をしているのに、相手投手との巡り合わせが悪いのか援護に恵まれず、増えていくのは負け数ばかりという状況の中でも言い訳は一切せず、普通なら敗戦後でトーンが落ちてもおかしくない試合後の会見でも、真摯に敗戦と向き合い、その思いや胸の内を今永投手独特の言い回しで言葉にしてこられました。

具体的に彼がどんなことを語ってこられたのかを少し紹介しますと、味方のエラーが絡んで負けた試合では「僕が打たれた事実は変わりません。エースを目指すなら、味方のミスもカバーできる存在にならないと・・」、打線の援護がない試合では「そういう言い訳は防御率0点台の投手だけが言えることです」、好投しながらも残念ながら負けてしまった試合では「負けた投手の名前は残りません。いい投球だったとしても、プロ野球は昨日得た信頼を今日失ってしまう世界なので・・・」。

まるで何年も厳しいプロの世界に身を置き、その積み重ねた経験の中から初めて出てきたような含蓄を含んだ言葉が、まだプロで1勝もしていない新人投手の口から発せられることに驚きと称賛の輪が広がっていきました。一部のスポーツマスコミと横浜DeNAベイスターズのファンの間では、試合での投球もさることながら試合後に今永投手が何をしゃべるのか、に関心が寄せられるまでになっていたようです。

そして月が替わって5月6日の広島戦、6試合目の登板にしてプロ初勝利をあげられました。この試合も7回投げて無失点、素晴らしい投球でした。その後5月はローテーションをキッチリ守って4勝0敗、失点も5月6日の無失点に続き、あとの3試合も1失点ずつ(うち1試合は自責点0)、5月末の防御率1.66と文句のつけようのない成績をあげておられます。ただ交流戦に入ってからは、疲れによるものか球のキレが失われ、3試合に登板して1勝1敗、早いイニングでの失点も目立ち始めました。6月18日の楽天戦で4回4失点の降板後、もう一度体調を整え再調整するための期間として、いったん登録抹消のの処置がとられました。ラミレス監督による新人投手に対する見事な配慮のように見受けられました。

今永投手は、チームの最年長投手でありコーチ兼任でもある三浦大輔投手から色々アドバイスを受けておられるようですが、今永投手自身はアドバイスをもらう前にどれだけ三浦投手のやっていることを盗めるかということを一番大事に思っているとのことです。野球の技術は無論のこと、三浦投手が42歳という年令でも現役選手を続けているのは、技術以外の面にも何か要因があるはずであり、その何かを自分のモノにしたいと語っておられます。と同時に三浦投手の年令あるいはそれ以上まで野球を続けたいという強い思いも語っておられます。

かつての名選手であり名監督でもあった、現野球評論家の野村克也氏は、プロ野球の指導者に最も必要とされる能力は「言葉による伝える力」と言っておられますが、20年あるいはそれ以上たって今永投手が現役を引退される日が来た時、この選手はすごくいいコーチになられるのではないか、その素養を22歳にして既に身につけておられるのではないか、そんなことすら感じさせてくれます。

そんな先の話はともかくとしても、私は横浜DeNAベイスターズというチームは大変な宝物を手に入れたのではないかという気がいたします。今永投手のエースとしての貢献は無論のことですが、FAの資格を得る数年後までは間違いなく横浜DeNAベイスターズに所属しておられる訳で、その間毎年数名ずつの投手が入団してこられますが、その選手たちに与えられるプラスの影響力には計り知れないものがあるように思えます。あるインタビューアーの方が今永投手に「プロとしてあるべき理想像は?」という質問をされたことに対し、今永投手はこんなことを答えておられます。

「プロの世界って勘違いしたら終わりだと思っています。これから自分がどうなっていくかはともかくとして、たとえいい成績だろうが悪い成績だろうが、偉そうにしたり、自分を見失うことだけはしたくないんです。謙虚過ぎるのもよくないとは思いますが、勘違いしてダメになった選手がいたという話もよく聞きます。ですから常に満足せず、探求心を持って野球と向き合っていきたいと思っています。こういった姿勢が、いずれ僕が先輩になった時に後輩たちに伝わっていくと思うんです。僕は長く野球をやりたいし、当たり前のことを当たり前にやっていける選手でありたいんです」。

こんなマインドを持った選手が中心選手として存在感を発揮しているチーム・組織は間違いなく強くなります。この連載の第一回・第二回で書かせていただいた、読売ジャイアンツV9時代の長嶋選手・王選手をも彷彿させるような可能性すら感じさせてもらいました。願わくは今永投手にはケガをすることなく、プロの階段を着実に登っていってもらいたいものです。

毎年二桁勝利をあげることが当たり前のようなエースとして君臨してくれた時、今永投手の背中を見て育つ後輩投手たちと一緒に、投手王国としての横浜DeNAベイスターズが確立されているかもしれません。私は横浜ファンではありませんが、この無限の可能性を秘めた若者の成長を一野球ファンとして楽しみに見守らせていただきます。
(参考文献:webスポルティーバ6/12配信記事 他)

(おわり)
2016/07/04

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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