田村龍弘選手~飛躍が期待される正捕手候補【第58回】

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田村龍弘選手~飛躍が期待される正捕手候補【第58回】

 3月25日、2016年のプロ野球がセ・パ両リーグ同時に開幕しました。今年は開幕を控えた時期に野球賭博で4人目の選手の名前が出たり、半数以上の球団で円陣での声出しによる金銭授受の問題が発覚したりと、開幕を迎える華やいだ雰囲気とは真逆の事態が発生しましたが、開幕カードは6球場とも満員の観客であふれ、プロ野球人気の根強さを改めて認識させてくれました。こんな時だからこそファンの期待を裏切らない熱戦・好プレーを期待したいものです。

 まだ始まったばかりのペナントレースですが、セリーグはどこが優勝してもおかしくない混戦、パリーグは2年連続日本一の福岡ソフトバンクホークスが一歩も二歩も抜け出し、2位以下の順位はどこにもチャンスあり、という下馬評だったように思われます。(開幕して10試合が経過した時点では、そうとも言い切れない様相にも見えますが・・・) そうした中で今回は福岡ソフトバンクホークスをめぐって熾烈な戦いを繰り広げるであろうパリーグ5球団の中から、千葉ロッテマリーンズの若き正捕手候補である田村龍弘選手を取りあげてみたいと思います。

 かつての名捕手であり名監督でもあった野村克也氏は、捕手はグラウンドの中の監督のようなもの、という趣旨の発言をされていますが、現代野球においてはそれぐらい捕手の重要性が増しており、かつてのように大半のチームで存在した、誰の目から見てもこの選手が正捕手という存在が極めて少なくなっています。その証拠に2015年シーズンに捕手のポジションで規定打席に到達したのは、東京ヤクルトスワローズの中村悠平選手と埼玉西武ライオンズの炭谷銀仁朗選手の二人しかいません。更に捕手として100試合以上に先発出場したのも上記2選手に加えて、東北楽天ゴールデンイーグルスの嶋基宏選手、千葉ロッテマリーンズの田村龍弘選手の計4選手しかいないのが実情です。

 さて今回取りあげる田村龍弘選手ですが、昨年たった4人しかいない100試合超の出場を果たし、今年は安泰かというと全くそういう状況ではなく、大卒3年目の吉田裕太選手と昨年にもまして熾烈なポジション争いを繰り広げることになると思われます。事実今年の開幕戦(3月25日の日本ハム戦)では吉田選手が開幕スタメン捕手に選ばれています。

 田村選手のプロフィールですが、1994年5月生まれ・大阪府出身の21歳(まもなく22歳ですが・・・)、中学時代までは大阪府のリトルリーグで活躍した後、高校は青森県の光星学院高校へ進学されました。1年生の時からレギュラーとして活躍し、2年生の夏には三塁手として、3年生の春・夏には捕手として甲子園出場を果たしておられます。この甲子園出場の三度ともチームは決勝まで進むも優勝はならず、準優勝という結果でした。ただ田村選手は主軸として、3年生の時にはキャプテンとして三期連続甲子園準優勝に貢献しておられます。余談ですが、この三度の準優勝のうち、最初の2011年夏の甲子園は東京代表の日大三高に敗れましたが、そこにはその後明治大学に進み今年ドラフト1位でプロ入りし、開幕スタメンで活躍し始めた阪神タイガーズの高山俊選手がおられました。そして二度目・三度目の準優勝は大阪桐蔭高校に敗れましたが、そのバッテリーは投手が現阪神タイガーズの藤浪晋太郎選手、捕手が現埼玉西武ライオンズの森友哉選手でした。まさに「栴檀は双葉より芳し」と思わせてくれます。

 さて田村選手ですが、2012年秋のドラフトで千葉ロッテマリーンズから3位指名を受け入団されました。高卒の新人捕手ながら2013年のシーズンには、一軍の公式戦7試合に出場しておられます。かつての正捕手で2014年をもって引退された里崎智也氏との世代交代期にあったこと、田村選手の一年後に入団してこられた大卒捕手の吉田裕太選手のケガ等もあって、二年目の2014年、三年目の2015年と出場試合数は50試合、117試合と伸びていきました。元々捕球してから投げるまでの動作がかなり早いことが評価されていた選手のようで、昨シーズンの盗塁阻止率.429は12球団トップでした。そしてもうひとつこの選手には技術面ではないところに大きな特徴があるようです。それはよくしゃべること。静かなのは寝ている時ぐらいと言われるほど口数も多いようですが、性格が明るく、会話を通じての投手とのコミュニケーション能力が高く評価されているようです。更にいい意味でのふてぶてしさがあり、リードは思い切りがよくて大胆さもある、という評価も受けておられるようです。

 守りの面では着実に進化している田村選手ですが、課題はなんといってもバッティングのようです。昨シーズン117試合に出場して打率.170、2本塁打、32打点では攻撃面に貢献しているとは言いづらい結果です。ただこれはプロ野球界全体にも言えることで、捕手というポジションの守りの負担がかつてにも増して大きくなっていることの証拠ではないかと思われます。千葉ロッテマリーンズのOBでもある野球解説者の里崎智也氏は、「捕る(キャッチング)・止める(ブロッキング)・投げる(スローイング)」という三つの要素が一軍レベルにあるならば打てる選手が起用されるべきで、リードは優先順位で言えば最下位です」と言い切っておられます。各チームが複数の捕手を併用せざるを得ないのは、結局打てないから競争になってしまうということのようです。みんな打てないからリードの評価で試合に出ることになるのですが、結局勝てるチームだと良いリードと評価されるも、チームが弱いとリードが悪いという評価が下されがちになる。捕手というポジションには、よく勉強していい理論を持っていても勝てなければ評価されにくいという一面もあるようで、実は個人の能力評価というよりチームの能力評価になっているというのが里崎氏の持論のようです。里崎氏のあげる打てる捕手の基準は「ホームラン2桁か打率.250以上」というものですが、田村選手にもこの線を目指して頑張って欲しいものです。

 現在千葉ロッテマリーンズでは、黄金時代の西武ライオンズの不動の正捕手であった伊東勤氏が監督をされています。強豪チームの中における捕手というポジションの重さを知り尽くしておられる方です。チームの強化を図る中で、最重要ポジションのひとつである捕手をどう育て、チームの核をつくっていくか、伊東監督の手腕が大いに期待されるところです。正捕手候補の一人である田村選手の飛躍は、そのままチームの飛躍にも結びつくはずです。個人の成長とチームの強化がどうシンクロしていくのか、そんな観点からも田村龍弘選手と千葉ロッテマリーンズの2016年シーズンを見守り続けたいなと思います。

(おわり)
2016/04/15

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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