金本智憲監督~超変革、ワクワクへの誘いいざない【第57回】

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金本智憲監督~超変革、ワクワクへの誘いいざない【第57回】

2016年も3月半ばとなり、今シーズンの開幕が近づいてきました。開幕ベンチ入りへ向けてまだまだアピールが必要な若手選手と開幕日の3月25日へ向けて本格的な調整時期に入ったレギュラークラスの選手が入り乱れ、本番に向けての戦う態勢が整えられる時期に入っています。そうした中、チームを大きく変貌させつつある(ように見受けられる)一人の監督がおられます。今回はその監督を取りあげてみたいと思います。その方は阪神タイガースの金本智憲(トモアキ)監督です。

金本監督は1968年(昭和43年)4月生まれ・広島県の出身でまもなく48歳になられます。広陵高校・東北福祉大学を経て1991年秋のドラフトで広島東洋カープから4位指名を受け入団されています。それ以来広島カープでの11年間、阪神タイガースでの10年間にあげられた実績については今さら語る必要もないかもしれませんが、この21年間で2578試合に出場し、2539安打・476本塁打・1521打点・生涯打率.285という成績を残されました。この成績もさることながら選手時代の金本監督の凄さは、1492試合に及んだ連続試合フルイニング出場や、この記録の途中で死球による左手首軟骨損傷を受け、誰もが記録は途切れると思ったピンチを他の選手の軽いバットを借りて右手一本でヒットを打ち記録を継続させたこと等々、常人では成し得ないようなことを通じて人々の心に深く刻み込まれた記憶であったように思われます。

引退会見の際に記者から「自身にとって野球とは?」と質問され、「野球は人生そのもの。10歳から野球を始めて7~8割はしんどいこと、2~3割の喜びしかなかったけど、少しの2~3割を追い続けて7~8割で苦しむ、そんな野球人生でした」と述べられましたが、まさに努力・努力・努力の積み重ねで築きあげられた栄光であったように思われます。そんな方が3年の充電期間を経て、昨年10月17日に第33代の監督に就任されました。どんな戦い方をしてくれるのか、否応なく周囲の期待は高まろうというものです。

ここ数年の阪神タイガースは2014年に日本シリーズ進出という成果もあげてはいたものの、リーグ優勝からは10年以上も遠ざかり、なんかぬるま湯につかったような沈滞ムードが漂っていました。監督就任から3日目、甲子園球場横のクラブハウスで監督として初めて選手・コーチと対面された金本監督は「これから厳しいことを言うかもしれないが、それは勝って日本一になって一緒に笑う為。このことを肝に銘じておくこと」という趣旨の話をされたそうです。その後一部の選手とは個別面談も実施されたようですが、金本監督が最も熱く迫ったのが鳥谷選手だったようです。「お前が変わらないとチームは変わらない。実績・年数・年齢を考えても物足りなさ過ぎる」と直接本人に熱く語られたようです。鳥谷選手はチームの生え抜きで攻走守の要とも言うべき中心選手であり、これまでは監督・コーチも何か遠慮がちに面と向かっては批判しにくい存在になっていたようですが、その選手に向かってはっきり直言したことで、金本監督の元では聖域は一切無いことがチーム内外に一気に印象づけられました。

そして昨年秋の秋季キャンプの頃から「厳しく明るく」というキーワードや「結束力」という言葉が聞かれるようになりました。これは金本監督ご自身が解説者としてチームを外から見ている中で、厳しさも明るさも足りないと素直に感じていたことを言葉にされたもののようですし、「本当に勝つんだ、優勝するんだ、何が何でも」という思いを「結束力」という表現で示されているようです。そしてこの「厳しく・明るく・結束力」の三つのキーワードの集大成が今年度のチームスローガンである「超変革」という言葉に結集されているようです。

プロ野球の監督の仕事は二つに大別されると言われています。ひとつがチームづくり、もうひとつが試合における采配です。まだシーズンの始まる前ですから金本監督がどんな采配を振るわれるのかは未知数ですが、チームづくりという点では、もうかなり金本監督のカラーが出始めています。すべてを変えていくという意味で「超変革」というスローガンを掲げたこともそうでしょうし、それに基づいてひとつひとつのプレーに対して高い意識と確実性や精度が求められるようになってきています。そして何よりも野手の8つのポジションでレギュラーと認められているのは鳥谷選手、福留選手、ゴメス選手が守るショート、ライト、ファーストだけ、他の5つのポジションはすべて白紙で全員にチャンスがあることが公言された結果、チーム内に熾烈な競争が生み出されています。キャンプの終盤近くまでの紅白戦や他球団との練習試合等でもこの3選手と他の選手は扱いが違っており、チーム内にいい意味での緊張感と競争意識がみなぎっています。さらには高知県の安芸市でキャンプを張る掛布監督率いる二軍チームとの選手の入れ替えが行われることも金本監督が公言しており、一軍・二軍の当落線上にいる若手選手達の目の色が変わってきています。必死にならざるを得ない雰囲気がチーム内に醸し出されているような感じがいたします。私事で恐縮ですが、私はここ数年毎年2月の沖縄に出向きキャンプを見学することを楽しみにしていますが、素人の一ファンの目にも今年の阪神タイガースのキャンプからは緊張感と必死さが伝わってきました。

 いくつかのスポーツ紙の記者が書いておられますが、昨年の秋季キャンプ、今年の2月1日からの春季キャンプでの練習量は以前と比べて明らかに増えているようですし、その練習の中で「強く振る」という金本監督の方針がしっかり浸透してきているそうです。また「明るく」の方針を体現するように練習やゲームでもよく声が出るようになっているようで、これまでの少しおとなしいイメージのチームの印象がかなり変わり始めているようです。まさに戦う集団への意識改革は着実に進んできているように見受けられます。ただ金本監督が求める一定レベル以上のチームとなる為には、個々の選手のレベルアップも含めてまだかなりの時間がかかるでしょうし、誰もが認める強豪常勝チームに生まれ変わっていく為には、まだ幾多の道のりを越えていくことが必要なことも間違いなさそうです。

組織づくり(チームづくり)の要諦は、リーダーがどういう組織でありたいかの方針を打ち出し、その考えを構成員たるメンバーに浸透させ、その上で組織内をひとつの目標・目的に向かって活性化させることであるとするなら、昨年10月の就任以来金本監督のとってこられた方策は、きちんと手順を踏んだ形になっていることが見て取れます。監督自らがおっしゃる「見ていて楽しい、ワクワクするような試合」をやれるチームへの第一歩は間違いなく踏み出されたようです。シーズン開幕と共にどんな「金本野球」を見ることが出来るのか、私もワクワクした気持ちで日々を楽しみたいと思っています。

(おわり)
2016/03/15

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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