高橋由伸監督~名監督へ、試練の第一歩【第55回】

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高橋由伸監督~名監督へ、試練の第一歩【第55回】

新しい年を迎え、2016年のプロ野球がまもなく始動します。2月1日のキャンプイン、そして3月25日(金)にはセリーグ・パリーグ同時に2016年シーズンが開幕します。来季は12球団中5球団で監督が交代し、5人の新監督が指揮をとられます。即ち読売ジャイアンツの高橋由伸監督、阪神タイガースの金本知憲監督、横浜DeNAベイスターズのアレックス・ラミレス監督、オリックス・バファローズの福良淳一監督、東北楽天ゴールデンイーグルスの梨田昌孝監督の5人です。

パリーグのお二人はそれなりのご経験を積まれた方ですが、セリーグの3人の新監督は、高橋監督に昨シーズン1年間の兼任コーチの経験はあるものの、指導者としては未知の魅力にあふれた、しかも3人とも40歳代のフレッシュな顔ぶれです。今回はこれら新監督の中から読売ジャイアンツの高橋由伸監督を取り上げてみたいと思います。

高橋由伸選手については今さら何も語ることはありませんが、簡単にプロフィールをご紹介しておくと、千葉県のご出身で1975年(昭和50年)4月生まれの40歳、神奈川県の桐蔭学園高校・慶応大学を経て、1997年秋のドラフトで逆指名によって読売ジャイアンツから1位指名を受け入団されています。そして入団1年目の開幕戦から先発出場を果たし、その年を規定打席に到達した上で打率.300、19本塁打、75打点の好成績で終え、以降2015年末での現役引退までの18年間、常に読売ジャイアンツの中心選手として活躍されました。

ただ残念なのはプレー中のケガや後年は持病ともなった腰痛に悩まされ、これだけの名選手であるにも関わらず、2回のベストナイン、7回のゴールデングローブ賞受賞はあるものの、一度も打撃タイトルを獲得することなく現役生活を終えられてしまったことです。まさに記録よりも記憶に残る名選手であったように思われます。

今回高橋監督を書く為にネットの中の記事を検索したり、雑誌や新聞の記事をいくつも読ませていただきましたが、高橋監督の人物像がクッキリ浮かび上がってきました。即ち、まわりへの気遣いが出来て人望が厚く、先輩からは好かれ後輩からは慕われる、まわりに人が集まってきて自然に輪の中心におられる、そんな方のようです。高校時代は下級生に混じって道具の後片付けをやり、寮のトイレ掃除も率先してやっていたというエピソードも目にしました。高校・大学時代は主将を務め、読売ジャイアンツでは選手会長を務められましたが、フォア・ザ・チームを常に考えてこられたようです。

元々それ程口数の多い方ではないようですが、口数は少なくとも時に発する言葉には説得力があるようで、それはグラウンドでのプレーが伴なっているからこその説得力でもあったようです。まさに理屈でどうこうではなく、背中でまわりを引っ張っていくリーダーシップを発揮してこられた方のように見受けられました。歴代の監督にとっては、まさにチームにとってなくてはならない中核選手であったでしょうし、誰もが友達になりたいと思う好人物・好漢であったように思われました。

高橋監督は昨シーズン終了後に監督への就任要請を受諾された訳ですが、一野球ファンとしては少し唐突な感じを受けたことも事実です。そもそもは原前監督がシーズン終了後に昨シーズン限りでの退任を表明され、10月19日には球団から正式な発表が行なわれると共に原前監督の会見も行なわれました。しかしその時点では高橋監督はまだ決まっておらず、10月22日のドラフト会議に読売ジャイアンツは監督不在で臨まざるを得ない事態となっています。

そして10月23日に高橋監督が球団最高顧問の渡邉恒雄氏、取締役オーナーの白石興二郎氏と面会して就任要請を受諾され、10月26日の会見を経て正式な監督に就任されました。本来なら原前監督の退任会見と同時に高橋監督の就任が発表され、ドラフト会議では高橋監督がドラフト1位選手のクジを引く姿が全国に放映されていれば、予定通りの交代をより深く印象づけることが出来たのかもしれませんが、そうならなかったところに何か事情があったことだけは推察されます。

こんな状況の中で監督への就任要請を受諾された訳ですが、監督を引き受けるにあたっては高橋監督ご自身の中で相当大きな覚悟があったであろうことが想像されます。ご自身が「引き受けるなら兼任は絶対ないと思っていた」と述べておられる通り、監督就任と同時に現役引退も決意されています。ただファン目線としては、「代打の切り札・高橋由伸」のいない巨人打線はかなりな戦力ダウンのようにも思えてしまいます。

高橋監督が就任された後、球団としてはかなりな補強の手が打たれていますし、白石オーナーは「(高橋監督は)若いが可能な限りバックアップする。伝統ある巨人軍の先頭に立ってくれるのは、高橋君しかいない」と述べられ、「高橋由伸流の作り方が必ずある。名監督に成長してくれることを期待している」と3年契約を結ぶ背景を語っておられます。球団も監督就任を要請した時点でそれなりの覚悟を持って臨まれていることが伺われます。

ただ一方で一部の評論家の中に高橋監督に対してかなりネガティブな見方をされている方がおられるのも事実のようです。それは、個人事業主という一国一城の主ではあるけれどもチームスポーツの中で使われる立場であった選手と、勝つという組織(チーム)の目的の為には個人(選手)の論理を切り捨てなければならないこともある監督の立場の中に、矛盾する性質がひそんでいるからに他なりません。

高橋監督を好人物たらしめている「優しさ」を自らが否定しなければならない局面があるのかもしれませんし、伝説の名監督であった川上元監督や昨シーズンまで指揮をとられた原前監督が持ち合わせておられた、ある種の「非情な一面」を高橋監督が自ら身につけていかなければならないのかもしれません。

そういった点では、高橋監督にとっては、これから始まる監督としてのお仕事はつらい稼業になるのかもしれませんし、ひょっとしたら試練と茨の日々になるのかもしれません。そういった意味でも読売ジャイアンツ球団には高橋監督をしっかり支えてあげていただきたいと思いますし、白石オーナーが言われるようにぜひ全面的なバックアップをしていただきたいものです。

日本で最も歴史と伝統のある名門球団である読売ジャイアンツであるが故に、監督にもある種の華のある人材が求められるのかもしれませんが、選手の育成・コーチの育成と同じぐらい、あるいはそれ以上に監督候補を選び育てることの難しさを気づかせていただいたような気がしています。

まもなく始まる2016年のキャンプインから、高橋新監督の動きを温かく見守らせていただきたいなと思います。そして1年後あるいは3年後、「流石だな」と野球ファンの皆が心の底から拍手を送りたくなるような名監督になられることを願っています。

(おわり)
2016/01/15

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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