福岡ソフトバンクホークス『強さへの飽くなき追求』【第53回】

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福岡ソフトバンクホークス『強さへの飽くなき追求』【第53回】

2015年のプロ野球は福岡ソフトバンクホークスが日本シリーズを2連覇して幕を閉じましたが、全体の印象としては福岡ソフトバンクホークスの強さばかりが目についたシーズンであったように思われます。そこで今回は福岡ソフトバンクホークスの強さを振り返りながら、当コラムのテーマである組織論・マネジメント論といった観点から、このチームのことを記してみたいと思います。

今年の福岡ソフトバンクホークスの強さはまさに圧倒的、異次元とも思えるような強さでした。パリーグでの成績は90勝49敗4分(なんと貯金41)、2位とのゲーム差は12.0ゲーム、しかも651得点はリーグ最多、491失点はリーグ最少、チーム打率.267はリーグ1位、しかもパリーグの全球団に最低でも5つ以上の勝敗差をつけての勝ち越し、交流戦で戦ったセリーグ6球団とも広島カープ戦での1勝2敗(負けた相手は黒田投手とジョンソン投手)の負け越しを除くと他の5球団にはすべて勝ち越し、パリーグのクライマックスシリーズ(ファイナル)では千葉ロッテマリーンズ相手に3連勝(アドバンテージの1勝を含めて4勝0敗)、日本シリーズでは東京ヤクルトスワローズを相手に4勝1敗と、まさに圧勝という表現がふさわしい勝ちっぷりでした。

しかもこのチームは、抑えのエースのサファテ投手、セットアッパーの五十嵐亮太投手、先発陣の一角で実績をあげた中田賢一投手、バンデンハーク投手、スタンリッジ投手と投手陣には他球団からの移籍組や外国人選手が目立ちますが、打撃陣ではシーズンを通して4番でキャップテンを務めた内川聖一選手、韓国籍で日本シリーズMVPの李大浩(イ・デホ)選手を除くと、主力選手の大半はこのチームでプロ野球選手としてのスタートを切り、このチームで鍛えあげられた生え抜き選手が多くを占めています。

投げるべき人がしっかり投げ、打つべき人がしっかり打ち、しかもセンターラインを中心に固い守り(失策数は両リーグ最少)が敷かれており、強いのも当然かなとさえ思えてきます。投手部門でセーブ王を獲ったサファテ投手、打撃部門でトリプルスリー(3割・30本塁打、30盗塁)を達成して首位打者となった柳田悠岐選手という二人のタイトルホルダーはいるものの、決してこの二人に頼り切ったチームではなく、ハイレベルのパフォーマンスを発揮した一群の中核選手たちの集団によって成し遂げられた、まさにチーム一丸となった優勝であったように思われます。

しかもこのチームは、中核のハイパフォーマーを支える次の層もぶ厚く存在しており、更にその下で一軍への出場を虎視眈々と狙っているファームの組織がぶ厚く構成されており、ケガをしたらすぐとって代わられる選手層の厚さが、チーム内にいい意味での緊張感と熾烈な競争意識を生み出しており、これこそが福岡ソフトバンクホークスの強さを支えている原動力のように思えます。それではこのチームを下からぶ厚く支えるファームの組織について記してみたいと思います。

毎年シーズン初めにプロ野球の全選手が記載された選手名鑑が発行されますが、各球団とも支配下登録選手数は65~67人程度であり、ほとんど差はありません。しかしその下の育成枠の選手数に大きな違いがあります。2015年のケースで見ると最少は日本ハムの0、大半のチームは一桁人数の育成選手を抱えています。その中で読売ジャイアンツの14人がかなり目立つのですが、福岡ソフトバンクホークスは更にその上をいき、23人の育成選手を抱えています。更にこのチームにだけ正式な編成として三軍が存在しており、監督以下9人の専属スタッフ(コーチ)が置かれています。

日本のプロ野球組織では、マイナーリーグ組織として東日本の7チーム(巨人・ヤクルト・DeNA・西武・ロッテ・楽天・日本ハム)によるイースタンリーグと西日本の5チーム(ソフトバンク・広島・オリックス・阪神・中日)によるウェスタンリーグが存在しており、ここでの公式試合の記録はすべて公式記録として認定されています。それではこのマイナーリーグの下部にある福岡ソフトバンクホークスの三軍はどこで試合をやるのだろうという素朴な疑問が出てきます。

少し調べてみたところ、3月下旬にまず地元九州地区の大学強豪校、社会人野球チームとの試合を行なうことから始め、独立リーグの四国アイランドリーグPLUSの各チームや北陸・北関東を本拠地とする独立リーグ・ルートインBCリーグの各チーム、関東地区へ遠征しての大学強豪チーム、韓国へ遠征しての韓国プロ野球のチームとの対戦等々、9月一杯までの半年間で約80試合のゲームが行なわれていました。地元福岡のファーム専用球場である雁の巣球場へ相手チームを迎えての試合もあり、マッチメークだけでもかなりな労力がかかっていることが想像されます。

そして三軍の試合に出る選手の記録はマイナーリーグの公式記録には勿論のりませんが、球団のホームページには「非公式戦個人成績」として全選手の記録が記載されています。投手では年間100イニング以上を投げている選手もいますし、打者で最も多くの打席に立つ人は年間約300打席をこなしています。

こうしてウェスタンリーグの福岡ソフトバンクホークスは三軍からのし上がってきた選手と、ケガや故障で一軍から下がってきた選手、一軍の枠が空かず出番を待つ一軍の試合経験もかなり有する名のある選手、そして新進気鋭のまもなく一軍でブレークする有望若手選手が入り乱れてしのぎを削っています。こんな状態ですからウェスタンリーグで強いのは当然であり、2012年から今年まで4年連続でウェスタンリーグを制覇しています。

この上更にファーム組織を強化する為、新しいファーム専用の本拠地球場の建設が進められています。2016年3月開業となる「HAWKSベースボールパーク筑後」と命名されたファーム拠点であり、これまでの雁の巣球場からの移転がなされます。この施設は、メイン球場、サブ球場、室内練習場、クラブハウス、選手寮から構成されており、明日のスター選手を目指す若手が専任コーチの指導を受けながら24時間野球漬けになれる環境が整えられています。

どういうチームづくりをするかの方針・ビジョンを定め、その方針に合う選手を見出し、見出した選手を鍛えて育て、足りない部分を補強し、勝てるチームづくりをすることによって観客動員力をアップさせチーム価値を向上させる、この一連のマネジメントがプロ野球球団を経営することの要諦であるとするなら、福岡ソフトバンクホークスというチームが選手を鍛え育成するということに掛ける姿勢にはプロ野球ファンとして感動すら覚えます。まさに中長期ビジョンに基づくチーム運営がなされていることを感じさせてくれますし、球団理念として掲げられている「めざせ世界一!」がおぼろげながらでも、何となく理解できるような気さえしてきました。

福岡ソフトバンクホークスのこうした姿勢が他の11球団との格差をますます大きくしてしまうのではないかと少し危惧していましたが、先日行なわれた2015年のドラフト会議で読売ジャイアンツが育成枠として8人の選手を指名し、来季より三軍を創設するとの報道を目にし少し安堵しました。

両チームのこうした動きは試合相手となる独立リーグや社会人野球チーム、大学野球チーム、ひいては韓国野球チームの繁栄にも寄与していただけるのではないかと期待されます。そして何よりも、野球がやりたくてやりたくてたまらない若い選手に野球の出来る機会を与えてくれることになりますし、指導者の道へ進みたい野球経験者の方々への貴重な機会拡張の場にもなるのだと思われます。

こうして裾野が広がることは、日本のプロ野球の発展にも何らかの形で寄与していただけるに違いありません。自チームの強化をめざす福岡ソフトバンクホークスのこうした動きは、自チームの強化のみならず、日本のプロ野球の外縁にも強い影響を及ぼしつつあるように思えてなりません。来季以降どんな形で更なる進化を遂げていかれるのか、大いなる関心を持って見続けたいものです。

(おわり)
2015/11/13

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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