川上哲治監督~プロ野球の歴史を作った伝説の名監督(2)【第52回】

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川上哲治監督~プロ野球の歴史を作った伝説の名監督(2)【第52回】

前回につづき、今回も川上監督について記したいと思います。

勝ち進むに従って選手から見れば川上監督は「雲の上の人」となり、ある時期以降、監督が直接選手にものを言うことはなかったようですが、ただここぞという時には、ベンチの中で中核の主力選手を怒鳴りあげることがあったようです。そういった時、怒られ役は長嶋選手であったり、V9の中盤以降は堀内恒夫投手であったりと、怒られてもシュンとならない、後に引きずらない人を怒っておられたようで、そういった面での人心掌握術もなかなか巧みな方であったようです。

V9時代の読売ジャイアンツと最も多く日本シリーズを戦ったのは「悲運の名将」と呼ばれた西本監督率いる阪急ブレーブスでした。その阪急で名参謀として西本監督を支え、後に自身が監督として阪急の黄金期を築いた上田利治氏が川上監督と西本監督の違いについてこんなことを語っておられます。「西本さんになくて川上さんに備わっていたもの、それは川上さんの冷酷にも見える決断力でした。例えば投手交代の場面では、まずキャッチャーの意見を聞いた西本さんと、有無を言わさず交代させた川上さんの違いです。川上さんは牧野(茂コーチ)に迷惑をかけた、と漏らしていましたが、牧野さんが裏で色々バッテリーに対してフォローをされていたのでしょう」。

ちなみにですが、ここで名前の出てきた牧野茂コーチ(1928生~1984没)と川上監督の関係に少し触れてみたいと思います。牧野茂氏は川上監督の8歳年下で、元々中日ドラゴンズの遊撃手で現役を8年、コーチを1年務めた後、名古屋でスポーツ紙の野球解説者として野球記事の執筆をされていた方です。舌鋒鋭く巨人の長所短所を批評する記事を見た川上監督がその内容に感銘を受け、コーチとして迎えることを決意され、監督1年目のシーズン途中から巨人の1軍コーチとして入団されたようです。当時は自球団出身者以外をコーチに招聘する慣行はほとんどなく、巨人では初めて、他球団でもほとんど例がなかったようです。

川上監督は牧野氏の野球理論に惚れ、先ほど触れた「ドジャース戦法」導入のキーマンとしての招聘だったようです。入団2年後には米国で、著者のアル・キャンパニス氏の直接指導も受け、「守備練習こそが勝利への直通路」と結論づけられました。こうしたことが読売ジャイアンツのV9に結実したようで、まさに川上巨人の名参謀として川上監督の絶対的な信頼を得ておられたようです。

川上監督の、自分が決めたことを敢然と実行する強い決断力は、そのこと自体がチーム内に波紋を引き起こしたり、口には出せないある種の不信感のようなものを生み出したり、といったことも皆無ではなかったようです。しかしそれを陰でうまくフォローし、ほうっておけばチーム内のひずみとなってしまうものを未然に防いでくれる、そんな信頼できる部下たるコーチを持てたことが川上監督の成功の要因でもあったと思われます。それは川上監督の人間性に根差す、マネジメント対応力の大きさを示しているような気がいたします。

もう川上監督のような成功を収めるプロ野球の監督は二度と現われないような気がします。昭和30年代後半から昭和40年代全般を通じて、毎晩テレビのゴールデンタイムに巨人戦のナイター中継が生で放映され高い視聴率が取れた時代、勝ち続けることを義務づけられたチームの監督として「勝つ」ということに執念を燃やし、考えられる最善・最適の手を打たれたのが川上監督であったように思われます。

娯楽が多様化し、プロ野球に対する熱も相対的に下がっている現代、社会が豊かになり選手気質も大きく変わった現代なら、川上監督は一体どんなチームづくりをし、どんな采配を振るわれたのでしょうか。プロ野球チームの組織マネジメントも、実は時代背景という大きな流れの中で着々と変化しつつあることに、私自身が改めて気づかされました。と同時に野球の面白さも再認識させていただいたような気がいたします。これからも日本のプロ野球の益々の隆盛をお祈りしたいものです。

(おわり)
2015/10/15

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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