真中満監督~シーズン最終盤、出るか真中マジック?【第50回】

名古屋 052-586-8829

静 岡 054-205-8180

東 京 03-3518-6363

大 阪 06-6364-1350

(受付時間:平日9:00~18:00)

真中満監督~シーズン最終盤、出るか真中マジック?【第50回】

今年のプロ野球はいよいよ大詰めが近付いていますが、セリーグはまだ大混戦が続いています。この大混戦を演出しているひとつの要因は、昨年・一昨年の2年連続最下位から一気に優勝争いに浮上した東京ヤクルトスワローズの存在です。今回は、今年からこのチームを率いる真中満監督を取り上げてみたいと思います。

真中監督は1971年1月生まれの44歳、栃木県大田原市のご出身で、宇都宮学園高校・日本大学を経て、1992年秋のドラフトでヤクルトスワローズから3位指名を受け入団されています。2008年までの現役生活16年間で通算1122安打、通算打率.286の記録が残っており、特に晩年はヤクルトスワローズの代打の切り札として実に勝負強いバッティングをされていた記憶が鮮明に残っています。超一流あるいはスーパースターと呼ばれる選手ではなかったかもしれませんが、いぶし銀のような存在の名選手でした。そして引退後は、ヤクルトスワローズの二軍打撃コーチを務め、2011年から3年間は二軍監督として、2013年にはイースタンリーグでの優勝を成し遂げておられます。2014年は一軍でチーフ打撃コーチをされた後、2年連続最下位のチームの再建を託されて、今年から監督に就任されました。

真中監督の就任直前の2年間、チームは最下位だった訳ですが、2013年は首位から28.5ゲーム差、5位のチームからも5.5ゲーム離されての最下位、2014年も首位から21ゲーム差、5位から6.5ゲーム引き離されての、言ってみれば断トツの最下位でした。年間を通じてのチームの失点が得点を大きく上回っており、投打のバランスが大きく崩れた状態であったことが伺われます。この状態を建て直す為、投手力の整備に力を注がれたことは勿論でしょうが、まず最初に取り組まれたのが、負けグセのような沈滞ムードを払拭する為、意識改革を強く求められたことです。

具体的には、今季の開幕前の春季キャンプイン前日の全体ミーティングで「自主性を持ってやって欲しい」ということを声を大にして強く求められたようです。ひとつの練習をするにしても何の為にやっているのかということを理解しながら動いて欲しいし、私生活も含めて自分で管理しながら野球を考えて欲しいという意図であったようです。この選手に自主性を持たせる指導法は、ID野球を掲げてヤクルトの黄金時代を築かれた名将野村克也元監督の指導法であり、真中監督ご自身が門下生として、考えながらプレーすることの大切さを徹底的に叩き込まれたお一人でもあります。

春季キャンプの後半には、野球だけでなく私生活の面でも選手一人一人に考えさせることを徹底することで自主性が芽生え、主力選手の大半が反省点や課題、そしてプラスになったこと等々を細かくノートに書き込むまでになったようです。まるで野村監督のID野球の時代にタイムスリップしたかのようではありますが、真中監督は意識改革という面で、一定レベルの手ごたえを持ってシーズン開幕に臨まれたのではないかと思われます。

開幕当初はエース小川泰弘投手を中心に石川雅規投手、ロッテより移籍してこられた成瀬善久投手の三本柱を中心に、打線は1番山田哲人選手をはじめ、川端慎吾選手、(高井)雄平選手(登録名は雄平)、畠山和洋選手で上位打線を形成し、前年の終盤に左アキレス腱を手術され出場が開幕から少し遅れる主砲バレンティン選手(2011年から3年連続本塁打王、2013年には60本塁打のプロ野球記録を樹立)の早期の復帰を待つというのが当初の青写真であったと思われます。

そして開幕から20試合を12勝8敗と比較的順調なスタートを切られたのですが、ようやく4月24日の神宮球場での巨人戦に4番・左翼で初先発されたバレンティン選手が、今度はその初先発の試合で左太股の肉離れを発症し、長期離脱を余儀なくされるという大誤算が発生してしまいます。会社経営に例えてみれば、最大の売れ筋商品が突如販売停止に追い込まれたようなものであり、販売政策の根本的練り直しを迫られたようなものだと思われます。

しかも開幕から5月半ば頃まで、前年度に日本人右打者の最多安打193本という記録を打ち立てた山田選手の調子が上がらず、投手陣もエース小川投手の調子がなかなか上がってこず、併せてロッテから移籍してこられた成瀬投手が本来の投球を取り戻せない、という非常に苦しい戦いを強いられることとなり、5月の上旬から中旬にかけて9連敗という泥沼のような状態に落ち込んでしまいます。

当初の構想に大きなズレが生じ状況が大きく変化した訳ですが、こういう状況の中で時間をかけながら戦力を整備し勝てる体制づくりをすることこそが、まさに監督の仕事であり、その手腕の差がシーズンの成績に直結するのだと思われます。ヤクルトスワローズの開幕から現時点までのオーダーをつぶさに観察してみると、5人の選手がほぼすべての試合に出場しておられます。すなわち二塁手の山田選手、三塁手の川端選手、一塁手の畠山選手、外野手(主に右翼、シーズン前半は中堅)の雄平選手、そして捕手の中村悠平選手です。開幕当初は山田選手が1番、川端選手が3番、雄平選手が4番という打順が多かったようですが、雄平選手の調子が下がり気味となって以降は4番に勝負強い畠山選手が坐ることが多くなります。

そしてオールスター戦明けの7月20日以降は2番川端選手、3番山田選手、4番畠山選手、5番雄平選手で打順が固定され、1番・センターで比屋根渉(ヒヤネ・ワタル)選手が起用されてから、攻撃力が一段とアップし、7月20日から6連勝したことで90試合通過時点の成績が46勝43敗1分と水面の上に浮上した状態となりました。そこから既に40試合近くが行なわれ、今もセリーグの大混戦の真只中での戦いを繰り広げておられます。

真中監督はシーズン前、インタビューに答えて「ウチは若い人の多いチームなので、その力は未知数ですが、選手達が試合を経験することで成長し、その力が爆発したらどうなるか、そういう楽しみを持っています。その為には僕が監督としてどっしり構えていないといけないですよね。策におぼれず余計なことを考えず、ブレずに指揮をとりたい。僕がバタバタすると選手に伝わりますし、相手にも余裕を与えてしまいますからね」と語っておられました。個々の選手の力量を整え、選手起用という用兵でチーム力を最大限発揮し、「勝つ」という目的に邁進する、今のヤクルトスワローズの姿は私の目にはそんなチームに映っています。

策におぼれずバタバタせず、やるべきことを地道に愚直に推し進めておられた結果が今の順位に表われているのだと思われます。しかしこの先リーグ優勝、クライマックスシリーズ制覇、更に日本シリーズ制覇と進んでいく為には。何か人知を超えた「運」とか「ツキ」を引き寄せることも必要なのかもしれません。まもなく結果の出るシーズン最終盤、そんな運やツキも引き寄せる真中監督のマジックも観てみたい、そんな思いを持って、このセリーグの大混戦を楽しみたいと思っています。

(おわり)
2015/09/25

「福山義人のプロ野球に学ぶ組織論」一覧に戻る

筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

※福山義人氏への講演依頼はこちらから