イチロー選手~生きるレジェンド、新天地へ!【第37回】

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イチロー選手~生きるレジェンド、新天地へ!【第37回】

日本のプロ野球チームが一斉にキャンプインする2015年2月1日の直前、一人の選手の入団発表会見が行なわれました。その選手の名はメジャーリーグ・フロリダマーリンズに入団されるイチロー選手です。ただマーリンズの外野手はレギュラー枠の3人は既に決まっており、扱いは4番手の控え外野手です。

しかしその控え外野手の入団発表に、球団社長・編成本部長・ゼネラルマネジャーという球団幹部3人がわざわざアメリカから東京にやってきて会見を行なうという異例の形がとられました。そして会見でのイチロー選手の発言を聞き、組織にとって、雇われる側の個人にとって、双方が幸せを感じられるというのは、こういう形なのかなということを強く感じました。ということで、今回はイチロー選手について書かせていただきます。

イチロー選手のプロ野球選手としてのキャリアを語ることについては、今更ながらという感はありますが、簡単に記させていただくと、1973年10月生まれの41歳、愛知県のご出身で、本名は鈴木一朗さんです。(ちなみに一朗というお名前ですが次男です)愛知県の愛工大名電高校から1991年秋のドラフト4位でオリックス・ブルーウェーブに入団されています。以降1992年から昨年まで、日本で9年間、米国メジャーリーグで14年間(シアトル・マリナーズに11年半、ニューヨーク・ヤンキースに2年半)のキャリアを積み上げておられますが、この間獲得されたタイトル、打ち立てられた記録は膨大なものになっています。

主なタイトルを列挙すると、日本で首位打者7回、打点王1回、盗塁王1回、年間MVP3回、ベストナイン7回、ゴールデングラブ賞7回、メジャーリーグで首位打者2回、盗塁王1回、年間MVP1回、ゴールドグラブ賞10回となっています。更に継続中の記録あるいは打ち立てられた記録として、昨シーズン終了時点で日米通算安打4122本、メジャーリーグ通算安打2844本をはじめとして、メジャーリーグでの10年連続200安打(史上初)やシーズン最多安打の更新(2004年・262安打、ジョージ・シスラー選手の記録を84年ぶりに更新)等々、メジャーリーグの歴史に後々まで語り継がれるであろう数々の記録が残されています。

イチロー選手のプレーに対する考え方あるいは特徴ですが、まず打撃については、出場試合数や四死球数など外的な要因によっても数値が上下に変動する打率よりも、一つ一つの積み重ねた結果が反映される安打数を重視するプレースタイルをとっておられるようです。更に四球を望まず積極的に打ちにいくタイプでもあり、三振・四球が共に少ないことも特徴です。またランナーを得点圏に置いた打席に強く、日本時代もメジャー移籍後も通算の得点圏打率はかなり高い水準の数字を残されています。こうした得点圏での強さから、ホームランの少ない打者でありながら敬遠四球が多いことも特徴であり、日本時代には6度、メジャー移籍後も3度、最多敬遠を記録しておられます。

次に守備面ですが、何と言ってもメジャーでも有数の強肩外野手として知られており、強肩であることに加えて送球のコントロールが極めて良く、イチロー選手の送球は時に「レーザービーム」と称されてもいるようです。少し古いデータですが、2006年に行なわれたメジャーリーガー415人による投票での「最も肩が強い外野手」部門で48%の得票率で1位になったこともあるようです。捕球の面でも優れており、メジャー移籍後も2001年から10年連続でゴールドグラブ賞を受賞しており、日本時代のゴールデングラブ賞も加えると17年連続での受賞となっており、まさに守備については歴史的な名手と言って差し支えないと思われます。

走塁面では、盗塁王のタイトルこそ日本時代、メジャー移籍後それぞれ一度ずつの獲得ですが、

これは成功率を重視する為、盗塁数を増やすことに関してそれ程重視しておられなかったことによるものと思われます。逆に盗塁の成功率は高く、メジャー移籍後、年間40盗塁以上を記録して成功率が9割を超えているシーズンが2回あるなど、メジャーでも屈指の高い盗塁成功率を誇っておられます。

こうしたプレーの面での特徴に加えてイチロー選手を語る際に避けて通れないのは、故障・怪我に対する強さです。これはしてしまった故障や怪我の痛みを我慢できる強さではなく、徹底して故障・怪我をしない対策、リスク管理に細心の注意を払っておられることです。事実メジャー移籍後故障での戦線離脱はほとんどなく、故障者リストに入ったのは2009年の開幕時の一度だけ(原因は第2回WBC出場の影響による胃に出血性潰瘍が認められたことによるもの)です。

怪我をしやすいヘッドスライディングは極力避ける、スパイクを履いたままで階段を使用すると滑って捻挫をする危険性があるのでスロープを使用する、クラブハウスのソファに坐ると腰に負担がかかるのでパイプ椅子を使用する、体の柔らかさを高める運動を重視するetc、徹底的に怪我をしないことにこだわっておられます。日常生活の中においても、かつて新神戸駅で滑って転倒しそうになったことがあるようで、「滑る場所」には徹底的に注意を払っていると述べておられます。まさにプロフェッショナルと感服いたしました。

こんなイチロー選手ですが、アメリカでは将来殿堂入りはほぼ間違いないとも言われているようです。今シーズンより入団されるフロリダ・マーリンズはレギュラー陣の大半が20代の若い選手が中心のチームのようです。そこに将来の殿堂入りが確実視されるような生きた伝説(レジェンド)とも言えるベテラン選手がベンチの一員に加わることの意味はとてつもなく大きい気がします。怪我をしないトレーニングの仕方、試合へ入っていく準備の仕方、打つ・守る・走るプレーのひとつひとつから若い選手が何かを学びとっていけば・・、マーリンズがイチロー選手に支払う1年契約・年俸200万ドル(約2億3000万円)、私には極めて安い投資のように思えました。

そんなイチロー選手を迎える為、球団幹部がわざわざ東京へやって来られての入団会見、イチロー選手は冒頭こんな発言をしておられます。「ただただ恐縮しています。マイアミからトータル18時間。通常では有り得ない。やたら熱い思いが伝わってきて、この思いに応えたい」。そしてなかなか去就が決まらなかった自らの置かれていた状況を「ペットショップでかわいい子犬たちがどんどん売れて、ちょっと大きな成長した犬が残っていくみたいな状態。でも買ってくれる人はいた。だから忠誠を尽くす。そんなところでしょうか」と語られました。

この言葉を聞いただけで、マーリンズにとってイチロー選手を迎えたことは成功だったように思われます。仮に試合に出る機会がなかなか巡ってこなくても、イチロー選手はチームの勝利の為に全力を尽くすのでしょうし、それはチームに好影響を及ぼすことは間違いなさそうです。でも日本からイチロー選手を応援するファンとしては、1打席でも多く打席に立ち、あと156本に迫っているメジャーリーグ通算安打3000本に少しでも近づいて欲しい、そんな思いで一杯です。

入団会見でイチロー選手は「4番目の外野手であることは想定内。何の問題もない」と言い切られました。この言葉に不屈の闘志と覚悟を見たような気がします。試練は待ち受けているのでしょうが、これまでに積み上げてこられたもののすべてを駆使して打ち克っていただきたいなと思います。シーズン終了後、「さすがイチロー!」と言えるようなご活躍を皆さんと共に願いたいものです。

(おわり)
2015/02/25

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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