黒田博樹投手~本物のメジャーリーガー、日本へ凱旋【第34回】

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黒田博樹投手~本物のメジャーリーガー、日本へ凱旋【第34回】

昨年(2014年)の暮れも押し迫った頃、日本のプロ野球ファンにとっては衝撃的とも思えるニュースが飛び込んできました。昨シーズンまでニューヨーク・ヤンキースで投げていた黒田博樹投手が古巣の広島東洋カープに戻ってくるというニュースでした。私はこの連載の第19回第20回で「耐雪梅花麗、求道の野球人(1)(2)」と題して既に黒田投手のことは書かせていただいたのですが、今回の衝撃のニュースに接し、今一度黒田投手を取りあげさせていただくことにしました。

これまで数多くのメジャーリーガーが日本のプロ野球でプレーをしてくれており、中には相当な大物選手も含まれています。ただしそれら大物選手は既にピークを過ぎた選手が大半であり、今年2月で40歳になるとは言え、黒田投手ほどの現役バリバリのメジャーリーガーが日本にやってきたことはかつて一度もありません。

黒田投手の昨季の年俸は1600万ドル(約19億2000万円)と言われており、先発投手を必要とするある球団からは今季1800万ドル(約21億6000万円)のオファーがあったとも報じられています。ちなみにですが、昨季の黒田投手の年俸を超える報酬を稼ぐ先発投手は全米で20人に満たない(そのうちの一人がヤンキースの田中将大投手です)と言われています。

メジャーリーグは全30球団ですから、黒田投手並みの年俸を稼ぐ先発投手は各球団に一人いるかどうかというレベルなのです。従って日本のプロ野球球団の財政レベルでは、このクラスの選手を抱えることは不可能であり、経済の合理性で考えると有り得ない移籍と言って間違いありません。まさに黒田投手の損得のレベルではない決断が実現させてくれた移籍であったことがわかります。

それでは黒田投手がアメリカで何故ここまで価値ある選手として評価されるのでしょうか。それは黒田投手の7年間のメジャーでの実績が物語っています。

黒田投手は最初の4年をロサンゼルス・ドジャーズで、後半の3年をニューヨーク・ヤンキースで過されましたが、7年間トータルで79勝79敗、防御率3.45という記録が残っています。7年間のうち後半の5年間はすべて二桁勝利をあげていますが、この成績以上にもっと凄いのは、2度の故障者リスト入りがあったメジャー2年目の2009年を除くと、ほぼ毎年200イニング前後を投げており、2009年を除く6年間の投球回数合計が1201回3分の2イニングとなっており、平均すれば毎年200イニングを投げ抜いていることです。これは中4日のローテーションで1年間投げ続け、毎試合6回以上投げてようやく達成できる記録です。

またメジャーリーグでは先発投手を評価する項目としてクオリティスタート(QS)という項目がありますが、これは先発投手が6回以上を投げて自責点3点以内に抑えることを意味しています。平たく言うと先発投手が試合を作る投球をしたかどうかを測る指標ですが、メジャーリーグではこの指標は一般的に使われているようで、全先発数におけるQSの比率(QS率)は勝利数以上に先発投手の能力を表わす指標として重視されているようです。

黒田投手はこの指標が6割程度あり、リーグ全体の先発投手の中でも10位以内に位置しており、メジャー全体でもエース級の評価を受けるに値する数値を示しています。ただ黒田投手の場合は交代後に後続の投手が打たれて勝ち星がつかなかったり、自らはQSを達成するも味方の援護がなく負け投手になるケースも多く、メジャーで最もツキのない、不運な投手との評価があったことも事実です。

さてこんな黒田投手が広島カープに戻ってきますが、地元の広島では早速デパートに「おかえりなさい、黒田投手」との大きな垂れ幕が掛けられたり、既に大変な盛り上がりを見せているようです。

黒田投手の加入が広島カープの戦力アップに大きく寄与することは言うまでもありませんが、これまでエースとしての重責を一身に背負ってきた前田健太投手の精神的負担が一気に軽くなること、昨季の新人王・大瀬良大地投手をはじめ、野村祐輔投手、中田廉投手、一岡竜司投手といった若手投手に与える目に見えない好影響も含めると、広島カープはとてつもない宝物を手に入れたのでは、とさえ思えます。

更に広島カープの対戦相手は黒田投手を打つ為の策を練るはずですから、黒田投手対日本の強打者の対戦は試合の勝敗とは別にゲームに新たな緊張感と活気をもたらしてくれそうですし、そのことがひいては観る者にも新たな楽しみを与えてくれそうです。

今回報道によると黒田投手は年俸4億プラス出来高という契約で広島カープに戻って来られるようですが、この連載の第30回「広島カープというチームの行き方」にも書きましたように、広島カープという球団は経営体として自立している数少ない球団のひとつであり、このチームに戻るということは年俸は激減することを十二分に承知の上で決断された訳です。

広島カープのファンではない、一野球ファンの私などは、よく広島カープが4億も出したなと思う反面、経済合理性では説明しづらい今回の黒田投手の決断も、我々日本人には何となくでも理解できるような気がしますし、その決断を嬉しく受け入れてあげたいなという気持ちを持たせてくれます。

メジャーリーグでも価値を認めてくれている今の時期だからこそ、黒田投手の決断は自らの現役選手としての活躍の時期が最終盤に差し掛かっていることに対する覚悟の行動のようにも思えます。広島ファンは黒田投手の加入で24年ぶりの優勝を、と一気にボルテージが上がっているようですが、あまり過度に期待し過ぎず、これまでと同じように自らの仕事に徹し、やるべきことをやり続けていくであろう黒田投手を静かに見守ってあげたいなと思います。

贔屓チームの応援だけでなく、来シーズンに大きな楽しみをもたらしてくれた黒田投手に感謝し、開幕を待ちたいと思います。

(おわり)
2015/01/09

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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