森脇浩司監督~微差は大差、躍進の陰に見えるもの【第24回】

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森脇浩司監督~微差は大差、躍進の陰に見えるもの【第24回】

プロ野球はオールスター戦が終わり、後半戦が始まりました。圧倒的な戦力を持つ読売ジャイアンツ、福岡ソフトバンクホークスがセリーグ、パリーグにおいてそれなりの順位にいることに何の驚きもありませんが、今年はパリーグにおいて異変(?)とも思える事態が起こっています。オールスター戦前の折り返し時点で、わずか0.5ゲーム差ではありますが、オリックスバファローズが首位での折り返しを決めました。17年ぶり(当時は前身の阪急ブレーブス)の快挙です。今回はそんなオリックスバファローズについて記してみたいと思います。

皆さんは2004年に勃発した「プロ野球再編問題」を憶えておられるでしょうか。球団経営が立ち行かなくなった、当時の近鉄バファローズがオリックスブルーウェーブに救済合併を求めたことが新聞報道で発覚し、10球団による1リーグ制への移行を模索するオーナー側と、それに反対する選手会並びに世論が対立し、日本プロ野球史上初の選手会によるスト(2試合)まで起こり、紆余曲折を経て、この両球団が合併して誕生したのが現在のオリックスバファローズです。ちなみにですが、この時行なわれた選手分配ドラフトで約半数の選手が移籍して誕生したのが現在の東北楽天ゴールデンイーグルスです。

こうして生まれたオリックスバファローズですが、更に遡ると1988年シーズンオフに当時の阪急ブレーブスの経営母体であった阪急電鉄からオリエントリース(現オリックス)へ経営権が移されたことで誕生しています。前身の阪急ブレーブスは昭和40年代前半から昭和50年代末にかけて、名将西本幸雄監督、上田利治監督に率いられリーグ優勝、日本シリーズ制覇を何度も達成した強豪チームでした。オリックスに経営母体が移ってからも常に優勝争いをする上位の常連であり、1995年、1996年には現メジャーリーガーのイチロー選手を擁してリーグ2連覇も達成しています。

しかしその後チームは弱体化していき、イチロー選手の日本国内最後のシーズンとなった2000年以降は、なんと昨年までの14シーズンでAクラスに入ったのは2008年(2位)の一度だけ、あとの13回はすべてBクラス、しかもうち6回は最下位、この間監督が次々と変わり、現在の森脇浩司監督がなんと延べ10人目という目まぐるしさです。そんなオリックスバファローズの今年の躍進ぶりには大いに目を引かれるものがあります。

戦力を少し詳しくながめてみると、目につくのは投手力の素晴らしさです。前半戦の防御率・奪三振でリーグ1位の金子千尋投手、ここへきて少し下降気味ですが、開幕から8連勝をかざり前半戦最多勝の西勇輝投手、それに外国人のディクソン投手を加えた先発陣、そこへ佐藤達也投手、比嘉幹貴投手、馬原孝浩投手を中心とする中継陣、抑えに両リーグ1位のセーブ数をあげている平野佳寿投手と投手陣が実に充実しており、前半戦終了時点ではチーム防御率が両リーグトップ、チームとしての失点数も両リーグで最少となっています。

一方打撃面においては、チーム打率ではソフトバンクホークスに遠く及ばないものの、前半戦の首位打者は糸井嘉男選手ですし、糸井選手は盗塁数でも僅差ながらトップとなっています。又打率は低いもののペーニャ選手が本塁打部門で前半リーグ1位の成績をおさめています。又特筆すべきは、僅差ではありますがチーム盗塁数とチームの犠打数で共にリーグトップの位置にあることです。

これらのことからオリックスバファローズ、ひいては森脇浩司(ヒロシ)監督という方がどんな野球を目指しているのか、私のような素人の野球ファンにもなんとなく伝わってくるような気がします。すなわちランナーが出たら盗塁か送りバントで着実に得点圏に送り、首尾よく得点をあげることが出来たら、その得点を守り切るという、守りに重点を置いた堅実で粘り強い試合運びのできるチームを目指しておられるのかな、と想像いたします。ではそんなチームを率いる森脇浩司監督というのはどのような方なのでしょうか。

森脇監督は1960年年8月生まれ、兵庫県の社高校から1978年のドラフト2位で当時の近鉄バファローズに入団されています。内野ならどこでも守れる守備に定評のある選手だったようですが、ケガが多かったこともあり、1984年には広島東洋カープに1987年には南海ホークス(1989年からは福岡ダイエーホークス)に移籍され、1996年に現役を引退されています。

そして現役引退後は1997年から2009年までの13年間、福岡ダイエーホークス・福岡ソフトバンクホークスで王監督、秋山監督の下で内野守備走塁コーチや二軍コーチ、二軍監督などを勤めておられます。又2006年に王監督が胃癌の手術で戦列を離れられた時には、監督代行として55試合の指揮も執っておられます。(ちなみに戦績は30勝22敗3分でした)

コーチ時代の森脇監督は球界随一とも言われれるぐらいのノックの名人だったそうです。かゆいところに手が届くような正確かつ精密なノックで選手を鍛え上げられたようで、当時外野手として森脇コーチのノックを受けていたある選手は、フェンス際やライン際にちょっとずつ位置を替えながら打ってくるノックの一球、一球にメッセージが詰まっていたとまで述べておられます。

その後少し紆余曲折を経て2012年からオリックスバファローズのチーフ野手兼内野守備走塁コーチに就任されましたが、同年の9月25日最下位が確定したところで岡田監督の休養が発表され、以降シーズン終了まで9試合の指揮を、再び監督代行として執られています。ちなみにこの9試合の戦績は7勝2敗。この年の10月8日に正式な監督就任が発表されています。

森脇監督はスポーツライター二宮清純氏のインタビューに、弱小チームにとって変化することは義務であると述べておられます。「自分たちは弱いんだ」ということを素直に認めるべきで、故障者がいたから、なんていうことは理由にも何にもならないとも述べておられます。強いチームがもっと強くなろうと努力しているのに、弱いチームが変わらなくてどうして勝てるのか、ということだと思われます。又変化の大敵は固定観念と先入観であるとも言われ、「今まではこうだった」と言ってみたところで、そんなことは通用しない.人間というものは「もう失うものはない」と言いながら、それでも保身に走ろうとする.これを打破しない限り、強いチームに生まれ変わることは出来ない.と語っておられますが、ここに森脇監督の組織マネジメントに対するお考えが色濃く反映されているように思います。

2013年の春季キャンプの前日のミーティングで森脇監督は、「微差は大差」「維持は後退」「準備がすべてを決める」という3点を話され、僅差のゲームを競り勝つために必要な考え方や態度を選手に説かれたそうです。微差は大差、これは開幕してすぐに10ゲームも離されることはないが、勝ったり負けたりしながらシーズンが終盤に近づくともう挽回不可能な差になってしまう.これはどこに原因があるのか。その日だけ見ればほんの小さい差でも、積み重なっていけば大きな差になってしまう.そうならない為には現実を直視して反省し、次に向かっていい準備をするしかない.それを繰り返すことによってチームも個々の選手も成長できるのだ.ということで、これが森脇監督のチーム運営のベースなのだと思われます。

監督就任1年目の昨年は結果は5位でしたが、その前年(2012年)1点差ゲームの勝敗が15勝24敗であったものが、昨年(2013年)は19勝22敗とかなり改善されてきています。躍進の今シーズンは、この原稿を書いている7月30日現在、13勝14敗と五分に近い星となっています。森脇監督の考えがチームにジワジワと浸透し、選手一人一人が自らの役割をきっちり果たす、ということでチーム全体が戦う組織として機能しているのだとしたら、今シーズンのここまでの躍進は、偶然でも何でもなく必然の結果のようにさえ思えてきます。

まだシーズン終了まで50試合以上が残っており、7/30時点では1.5ゲーム差の2位ですが、これが最終的にどういう結末になっているのか、今の段階では何とも言えません。しかしこれだけ長きに渡って低迷していたチームが着実に生まれ変わろうとしていることだけは間違いなさそうです。これから優勝争いが本格化しプレッシャーもかかる中で、チームとしてどれだけ平常な精神状態を保てるか、といったことも課題になるに違いありません。でもマネジメントに携わる者にとっては、今シーズンのオリックスバファローズの戦いから学ぶことはたくさんありそうな気がします。最後の決着がつくまでオリックスバファローズの戦いに熱い視線を送り続けたいなと思っています。

参考文献:「週刊現代」2013年1月5日・12日号 二宮清純レポート

(おわり)
2014/08/08

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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