新戦力がもたらすパワーアップ効果【第17回】

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新戦力がもたらすパワーアップ効果【第17回】

ビジネスの組織にしろ、スポーツの組織にしろ、組織の中の構成員の顔ぶれが全く変わらなかった場合に何が起こるか、二つのことが考えられます。ひとつは、一年一年と時を刻むに従って構成員の技能と経験値が上がり組織全体のパワーがアップするケース、もうひとつは構成員が一定以上の経験を既に積み上げた人が中心となっている場合、組織全体のパワーを維持することは出来ても大きな上がり目は期待できず、何か予期せぬ出来事が起こった場合は組織全体のパワーが低下してしまうというケースです。後者の場合、ビジネスの世界では人事異動と配置転換並びに外部からの中途採用という手段をとることによって組織に刺激を与え、活性化させることが行なわれます。

スポーツの世界、中でも日本のプロ野球では国内でのトレード及びFA権取得者を獲得することによる選手補強、そして海外から即戦力としての外国人選手の補強、これらの組合せとその年にドラフトで入団した新人選手の活用によって、チーム活性化の維持と更なる進展への試みがなされます。今年のプロ野球が開幕してちょうど1ヵ月強が経過しましたが、今回は現時点のチーム成績と外から入った新戦力の関係を中心に書いてみたいと思います。

各チームが11カード、30試合前後を戦い終えたセリーグの5月5日時点、パリーグの5月4日時点での順位は、セリーグの1~3位が広島・読売・阪神の順位となっており、パリーグはソフトバンク・オリックスがゲーム差なしの1位・2位、ロッテと日本ハムが勝率5割の同率3位となっています。元々豊富な戦力を抱えていた上にシーズン前に貪欲とも思える程の戦力補強を行なった読売ジャイアンツと福岡ソフトバンクホークスがこの位置にいることは当然のことと思われますが、この両チームの独走を許さず互角の戦いをしているのが、セリーグの広島カープ、阪神タイガース、パリーグのオリックスバファローズであるというのが、シーズン序盤の最大の特筆すべき事項のように思われます。

中でも広島カープとオリックスバファローズはチーム防御率が共にリーグの1位であり、現在の躍進がデータ的にも十分裏付けられています。共に先発・中継ぎ・抑えに信頼のできる確かな軸が存在します。即ち先発の前田健太投手(広)、金子千尋投手(オ)、中継ぎの一岡竜司投手(広)、佐藤達也投手(オ)、抑えのミコライオ投手(広)、平野佳寿投手(オ)です。このうち広島の一岡竜司投手は読売ジャイアンツへFA移籍した大竹寛投手の人的補償で読売ジャイアンツから広島カープへ移籍しましたが、チーム躍進の大きなポイントとなっており、実に的確な補強がなされたものと思われます。

広島カープは他のチームのような国内でのトレード、FA移籍、外国人選手の補強では目立ったものはありませんでしたが、ドラフト指名で入団した新人選手の活躍が目立ちます。即ちドラフト1位の大瀬良大地投手、ドラフト2位の九里亜蓮投手、ドラフト4位の西原圭大投手です。打つ方でもドラフト3位の田中広輔内野手が、まだ目立った成績を残すには至っていませんが、その溌剌としたプレーが同世代の若手選手に大きな刺激を与えています。そして広島カープの大きな特徴は、26歳の大エース・前田健太投手よりも若い選手の活躍が目立つことです。ドラフト入団の選手はもちろんですが、今や中心選手となっている丸佳浩外野手・25歳、菊池淳介内野手・24歳、野村祐輔投手・24歳、中継ぎの中田廉投手・23歳、先ほど名前の出た一岡投手・23歳等々、まだまだこれからの成長が期待できる若手が目白押しです。

一方オリックスバファローズでは攻撃面でソフトバンクから移籍したペーニャ選手の加入が非常に大きかったように思われます。ここ数試合は打撃の調子を落としているようですが、ソフトバンクに次ぐチーム打率リーグ2位の成績にペーニャ選手が果たした役割はとても大きかったと思います。更に西武ライオンズより移籍したヘルマン内野手が西武時代の2年間と同じようなパフォーマンスを発揮すれば更なる戦力アップが見込まれますし、大リーグからシーズン直前に移籍したものの、まだ日本の野球に慣れないためか、今ひとつ成績の振るわないペタンコート内野手が本来の力を発揮すれば、まだまだ先行きは期待できるのかもしれません。

一方下馬評の高かった読売ジャイアンツと現時点まではほぼ互角の戦いをしているのが阪神タイガースです。オープン戦が3勝10敗3分・12チーム中11位の成績だったことを思うと今の成績は奇跡のようにも思えますが、この成績は開幕以来ずっと4番に座り続け、開幕27試合連続出塁のチーム記録を打ち立てたゴメス内野手と抑えではまだ一度の失敗もない呉昇桓(オ・スンファン/韓国・サムスンより移籍)投手の存在抜きには語れません。昨季までの得点力不足と抑え投手の不在という課題が今回の補強で一挙に解消された訳ですから、これ程的確な補強はなかったものと思われます。

両選手がシーズン終了まで現在のようなパフォーマンスを出し続けることが出来れば、これはまさにフロントの勝利であり、チーム強化に果たすフロント機能の充実がいかに大切かを思い知らせてくれる事例になるものと思われます。阪神タイガースは他にも横浜DeNAベイスターズから移籍した鶴岡一成捕手が地味ながらも素晴らしい活躍をしています。特に藤井捕手がケガで離脱した今となっては実に的確な補強であったと思われます。又ドラフト6位という地味な入団ながらもローテーションの一角に食い込み、既に2勝をあげている岩崎優投手の存在も忘れられません。阪神タイガースの補強は総じて的確であったと言えるのではないでしょうか。

昨シーズンオフに大補強を行なった読売ジャイアンツと福岡ソフトバンクホークスですが、両チームとも新戦力は十分な働きをしています。特に読売ジャイアンツでは、西武ライオンズからFA移籍した片岡治大内野手、大リーグの3A球団から移籍したアンダーソン外野手の二人の活躍は特筆ものです。実に素晴しい活躍をしています。更に既存勢力の投手陣の中でまだ調子の上がらない選手の穴を埋めているのが広島カープからFA移籍した大竹寛投手、韓国球界から移籍したセドン投手の両投手です。不測の事態をも予測したかのような補強を行ない、そこへ生え抜きの若手とベテランをうまく機能させるチームづくりに、読売ジャイアンツの長期に渡る強さの秘密を見たような気がしました。

一方福岡ソフトバンクホークスも大補強をしましたが、中でも投手部門で補強した選手がことごとく活躍しています。即ち中日から移籍の中田賢一投手、日本ハムより移籍のウルフ投手、阪神より移籍のスタンリッジ投手、西武より移籍のサファテ投手、米国・アスレチックスより復帰移籍の岡島秀樹投手ですが、中継ぎ・抑えについた勝ち星も含まれてはいるものの、なんとこの5人でチームの勝ち星18勝中13勝をあげています。逆に言うとこの5人の投手の補強がなかったら状況は全然違ったものになっていたはずで、この補強を敢行したフロントの慧眼は驚くばかりです。野手ではオリックスから移籍の李大浩(イ・デホ)選手もおり、戦力の厚みを考えるとソフトバンクがパリーグ優勝争いの最有力候補のひとつであることは間違いないと思われます。

シーズン序盤の段階ですが、上位チームでは新入団の選手の活躍が結構目立っています。既存勢力と新入団選手がうまく噛み合うことでチーム全体がパワーアップされている結果と思われます。しかしビジネスの世界でもライバル企業のヒット商品は徹底的に調べ尽くされるように、新入団でそれなりの成績を挙げている選手については既に相手チームから徹底的なチェックがなされているはずです。その包囲網をかいくぐって高いパフォーマンスを出し続けてこそ、真の意味での信頼が得られるのだと思われます。

まだシーズンはようやく5分の1ほどが終わった段階です。これら新戦力の選手たちがチームにどんな貢献をしていくのか、皆様とご一緒に見守りたいものです。 

(おわり)
2014/05/09

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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