佐藤義則コーチ~選手を支えるコーチの役割【第13回】

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佐藤義則コーチ~選手を支えるコーチの役割【第13回】

ソチオリンピックが終了し日本に唯一の金メダルをもたらしてくれたのは男子フィギュアスケートの羽生結弦選手でした。19歳になったばかりとは思えない素晴らしい演技でしたが、羽生選手の金メダルはコーチであるブライアン・オーサー氏抜きでは有り得なかったと思われます。ショートプログラムで致命的なミスをした後、フリーで奇跡のような完璧な演技を見せてくれた浅田真央選手にも佐藤信夫氏という素晴らしいコーチがついておられました。

今回のオリンピックでは選手を支えるコーチの役割やその重要性が、これまでにも増してクローズアップされたような気がいたします。

団体競技である野球においてはコーチの存在がクローズアップされることはそれ程多くありません。しかもチームの核となるような中心選手については、元々の才能が練習と本人の努力によって開花したと思われがちです。特に天才と思われているような選手にはコーチの存在など、あって無きようなものとさえ思われているかもしれません。しかしどんな選手にも何がしかの欠点はあるようで、才能によって人並み以上の成績は上がっていても、その欠点を的確に修正できれば超人的なレベルにまで成長できるということもあるのだと思われます。

その典型的なケースが今年からニューヨーク・ヤンキースに渡った田中将大投手です。

田中投手にとっての運命的なコーチはプロ2年目のシーズン終了時での秋季練習で出会った佐藤義則コーチだったようです。佐藤義則氏は阪急ブレーブス(後オリックス・ブルーウェーブ)の主力投手として通算22年間の現役生活で数々のタイトルも獲得され、44歳まで選手生活を続けられた方です。現在は楽天でコーチを勤めておられますが、行く先々のチームでチーム全体の防御率をアップさせておられる、まさに名コーチです。

そんな佐藤コーチは日本ハムのコーチ時代に、プロ野球選手としてのスタートを切った田中投手に対してこんな印象を持っておられたようです。上半身の強さだけで投げており、下半身がついていかない状態、しかも着地の時に左ひざが割れてしまうため、貯め込まなければならないパワーを逃してしまっている。そんな欠点を抱えていても1年目は11勝をあげて新人王、素材は誰もが認める素晴らしいものなのですが、2年目は9勝に終わってしまい二桁に到達しませんでした。

そんな時期に田中投手と新たに楽天の投手コーチに就任された佐藤コーチは出会います。2年目の成績が二桁に達せずプロの壁を感じていた田中投手の耳には、佐藤コーチのアドバイスが素直に聞き入れられたようです。佐藤コーチはフォームの改造を勧められたようですが、その取り組みと共に下半身の土台作りを行なおうということで、内転筋を強くする練習と走り込みが徹底されたようです。やらされて行なう練習と納得の上で目的意識を持って行なう練習は全く違うようで、練習の成果は成績(2009年15勝6敗)に結びつきます。しかし田中投手自身の練習に力が入り過ぎたからか、ウエィトトレーニングによって上半身を鍛え過ぎ、全体のバランスを崩してしまい、少し遠回りをされたといったこともあったようです。

二人が出会った2009年シーズンには、試合中に田中投手がベンチの佐藤コーチをチラチラ見ることがあったようですが、体が出来てフォームが安定してくると、もうそういうこともなくなり、完全に一本立ちしていかれ、その集大成が昨シーズンの24勝0敗という結果だったのだと思われます。

佐藤コーチは、コーチという仕事は選手を観察してその特徴を記憶しておき、相手から質問がきた時には即座に答えられる高い技術理論を持っておかなければならない、併せて不調をピンポイントで指摘し選手を納得させてあげなければならない、と語っておられます。また体の仕組みに逆らった無理なフォームは故障に直結するが、コーチは故障しやすいフォームの欠点を見つけ、選手にわかるように説明し改良してやることが大切な役割だとも語っておられます。その説明に合点がいけばどんなに厳しく接しても選手は納得するでしょうし、選手とコーチの間の信頼関係は強固になるに違いありません。

田中投手と佐藤コーチは話し合いを繰り返し、コミュニケーションを深めることによって課題を克服していかれたのだと思われます。ビジネスの世界においても一人一人に合った指導をぜひ心掛けたいものです。会社の中のあちらこちらの部署でそんな上司と部下の人間関係の輪が広がれば、徐々に組織の体幹が鍛えられ、会社は強くなっていくような気がしてなりません。

 
(ご参考:永谷脩氏の書かれた「超一流の育て方」という本に佐藤コーチのコーチ哲学が余すところなく詳しく描かれています。ご参考にしていただければと思います。)

(おわり)
2014/03/10

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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