田中マー君を通して見えてきたこと【第12回】

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田中マー君を通して見えてきたこと【第12回】

2013オフシーズンの最大の話題はマー君こと、楽天・田中将大投手のメジャー挑戦表明とその後に起こった米国大リーグ各球団による争奪戦であったように思います。田中投手がニューヨークヤンキースと7年総額1億5500万ドル(約159億円)で契約を締結したことは皆さんご存知のとおりです。

年俸2200万ドル(約22億円)という金額がいかに凄い金額かというと、選手会発表データによる2013年シーズンの球団別年俸総額(外国人選手を除く)の5番目に相当しています。ちなみに一位は巨人の38.2億円、以下中日、ソフトバンク、阪神と続き、日本ハムの21.8億円の少し上に当たります。

この金額を見ただけでも田中投手に対する期待がどれほど大きいかがわかりますが、一方で現在大リーグで活躍しているダルビッシュ投手、黒田投手、岩隈投手を見ても、日本で沢村賞を獲るレベルの投手なら大リーグで十分通用することが既に実証されており、今後も日本を代表するようなエース級投手が続々と海を渡ることが予想されます。

日本人選手が大リーグで大活躍してくれることは、それはそれで嬉しい反面、日本のプロ野球界にとっては経営的にも大きな問題をはらんでいるように思えます。ただ我々の感覚では、田中投手にこんな年俸を支払って果たしてきちんと球団経営が成り立つのか、ちょっと不思議な感じさえしてきます。

そこでそのカラクリを少し調べてみましたが、現在のような暴騰とも思える状況は4~5年前から始まっており、その大きな要因はテレビマネーと呼ばれる放映権料の上昇によってもたらされているようです。

日本では既に地上波の放送ではプロ野球の中継はたまに放映されるだけ、という状況になっていますが、アメリカではそんなに皆が野球放送を見るの?という疑問が湧いてきます。大リーグの全米中継の放映権を持つFOXテレビの視聴率は2%前後で、しかも年々緩やかながら低下しているような状況ですから皆が見ているようには思えません。

しかしテレビ局が大リーグ機構(MLB)あるいは各球団と締結している放映権料は複数年契約で金額も暴騰しており、それが選手の年俸高騰という形に反映されているようです。なぜこんなことが起こるのか? ここに日本とアメリカのテレビ視聴のスタイルの大きな違いが影響しているようです。

アメリカは国土が広いため、アメリカ国内でテレビを見る場合、まず住んでいる地域のケーブルテレビ会社と契約するというのが通例のようです。

その場合視聴者は見たい番組だけを選ぶことはできず、いくつかの選択肢の中から自分の見たい番組の多いパッケージを購入するのですが、一番安いものでも100番組以上が含まれているようで全く見ない番組であっても抱き合わせで契約せざるを得ない状況になっているようです。

そういったパックをいくつか契約し、一世帯あたり月間80~90ドルのケーブルテレビ料金を支払うのが一般的なようです。しかもアメリカでは各家庭にハードディスクが内蔵されたDVRと呼ばれる録画機器が広く普及した結果、DVRに録画した番組を見る人の多くがCMを早送りしてしまう傾向が益々強くなっているようです。

その結果CMスポンサーは、視聴率は多少低くても人々が生で見る確率が高い番組へ広告予算をシフトし始めています。その時魅力的に映ったのが大リーグをはじめとするスポーツ中継だったようです。スポーツ中継だけは結果がわかってから録画を見るより、生中継を見たい人の方が圧倒的に多いからです。その結果大リーグ中継の放映権料が高騰し、球団の懐がうるおい、それが選手の年俸高騰につながっているようです。

田中将大投手の2013年の年俸は4億円だったようですから、2014年の年俸が5倍以上になる流れを見る限り、手をこまねいて何もしなければ大リーグで通用する一流選手はアメリカに流れ、日本のプロ野球はアメリカへ渡れない選手のリーグに成り下がってしまいかねません。

そうなると魅力は薄れ、日本のプロ野球全体が衰退の道を歩んでいくことになります。隣(アメリカ)のマーケットに魅力ある商品(選手)が吸い取られる危機に立ち向かうには、こちらのマーケットの魅力を徹底して高める以外に道はないはずです。

その際すごく参考になるのはアメリカのプロフットボールリーグ(NFL)の事例です。かつて二つのリーグが選手の争奪戦を繰り広げ、年俸の高騰、放映権の乱売で疲弊したところから、個別のチームの繁栄ではなく、NFLというリーグ全体の繁栄、共存共栄型のビジネスモデルに生まれ変わったようです。今や放映権料、関連商品の売り上げ、スポンサー料や一部の入場料までがNFLに取りまとめられ、32チームに均等に配分されています。

戦力の均衡も図られ、どのチームにもプレーオフ・スーパーボールへの出場チャンスが生まれるように設定されています。どのチームにも勝ち上がるチャンスがあるがゆえにコンテンツとしてのゲームの魅力が高まり、テレビ放映権料がNFLの経営の根幹を支えるビジネスモデルが成立しているようです。

2月2日(日)の夜に行なわれた全米NO.1を決めるスーパーボールは世界200ヵ国・地域以上で放映されており、日本でも2月3日(月)の朝8時からの放送に、有休や半休を取得して生中継を視聴した方がかなりいるとの報道を目にしました。これだけ成功しているNFLですが、更なる世界市場の開拓を目指して二つのリーグのうちの一つの本拠地をロンドンに移す構想まで練られているようです。

日本のプロ野球にも頑張って欲しいものです。せめてクライマックスシリーズと日本シリーズは日本プロ野球機構が管理し、テレビで生中継されるようにして欲しいですし、日本のプロ野球全体のブランド価値を高めて欲しいと思います。関係各位のなお一層のご努力を願っています。

(おわり)
2014/02/25

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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