落合博満監督~上に立つ者が持つべき覚悟とは?【第8回】

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落合博満監督~上に立つ者が持つべき覚悟とは?【第8回】

昨今ホテルや百貨店における食材の偽装事件が相次いで報道され、今やどさくさまぎれにウチも発表しておこう、という会社すらあるのでは、と疑いたくなるような状況です。

そもそもの発端となった関西の大手ホテルの社長さんの最初の記者会見はいかにもまずかった、と感じておられる方は結構おられるのではないでしょうか。私もその一人ですが、企業における不祥事や何か不具合が起こった時に、担当者ならまだしも、経営トップが会見してかえって火の手を大きくしているようなケースがまま見受けられます。

何故このようなことが起こるのでしょうか。理由はさまざまとは思われますが、私はそこに、自分の後には誰もいない、会社の責任のすべては自分が背負っているのだという覚悟のようなものが欠けているように見えて仕方ありません。

プロ野球の世界でも、私は指揮官の覚悟を見せつけられたように感じたシーンが一度あります。

それは2004年シーズンの開幕戦における中日ドラゴンズの試合でした。2004年の中日ドラゴンズは落合博満氏が新監督として就任された最初のシーズンです。落合氏は現役引退後、監督はおろかコーチの経験すらなく、指揮官としての力量はその時点では全くの未知数でした。三冠王を三度もとられた名選手ではありますが、現役時代から「オレ流」を通しておられ、指導者・指揮官として一部マスコミから懐疑的な見方をされていたことも事実です。

そんな落合監督が監督就任第一戦目の開幕投手としてマウンドに送り出したのが、ヤクルトスワローズからFAで中日ドラゴンズへ移籍して四年目、先の三年間は肩を痛めて一試合も投げていない川崎憲次郎投手でした。中日ファンならずとも皆が「エッ」と驚いた投手起用でした。

結論から先に言うと、その試合川崎投手は1回3分の2で5点をとられてノックアウトされました。(ただし試合は打線の反撃もあって8対6で中日の勝ちでしたが・・・・) 即二軍行きを命ぜられ、

再調整の後、約一ヶ月後に再び一軍マウンドでの登板チャンスを与えられますが、結果は又もやノックアウト。そのまま二軍降格となって、実質的にこの試合がプロの投手としての最後の登板となってしまいました。

では何故落合監督はこんな起用をされたのでしょうか。ここから先は素人の想像です。長いシーズンをにらみ、まず選手の心を掌握する為の起用ではなかったのかなと思えます。川崎選手が二軍の練習場で復活へ向けてどんなにつらい練習をされてきたか、大半の野球ファンは知りません。しかし選手は知っています。今度の新しい監督は一軍だけではなくファームの選手も見ていてくれる。もしそう思わせたとしたら、それだけでもファームは活性化し、それがチーム全体の活性化と戦力アップにつながるに違いありません。

玄人の方から見れば、そんな単純なことじゃないと言われるのは百も承知です。でもこれを8年間で四度のリーグ優勝と日本一を一回という、輝かしい実績を積まれた後の落合監督がされたのなら、ああ何か深謀遠慮なお考えがあるに違いないとまわりは勝手に思ってくれたはずです。しかし何の実績もない、監督就任の最初の試合でとられた采配であったところに、言い知れぬ凄みのようなものを感じたことを鮮明に覚えています。ビジネスの世界でもこんな決断を下せるマネジャーは滅多にいません。大半の方は皆が納得できる無難な策を選びがちです。それは失敗した時のリスクが少ないからです。

開幕戦の川崎投手起用は、試合には勝ったものの、打たれたという結果から見れば失敗だったと言えるでしょう。でもそのことがチーム全体を落合監督の手の内に入れ、その後の名将への道を歩んでいかれる第一歩になったのだとしたら、実に見事な采配であったと思えてしまいます。

そこには失敗の責任やまわりから聞こえてくる雑音のすべては自分が背負うという、とても強い覚悟のようなものが透けて見えてきます。マネジメントの立場にある者がぜひ見習いたい一面とは思いませんか?

(おわり)
2013/12/17

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筆者プロフィール

fukuyama福山義人氏 元 (株)CSKホールディングス社長
株式会社マネジメント・サポート 代表取締役 福山義人氏1949年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現(株)SCSKに入社。創業オーナー大川功氏に師事し、新規顧客開拓担当、営業マネジャー、管理部門マネジャーを経て、2005年代表取締役社長に就任。退任後、(株)マネジメント・サポート設立。現在は、創業オーナーに仕えた経験と自らの社長経験をもとに、若手経営者へのサポート及び講演活動等に従事。

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