事業承継税制について

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事業承継税制について

2 自社株の承継コストを検討する

自社株を後継者に承継する場合に大きな障害になるのが「高い株価」です。特に、子どもなど親族内で事業承継する会社は、業績も割りと良い会社が多いでしょうから、必然的に株価も高くなっているものと予想されます。ただ、非上場株式は、上場株式のように第三者に売却できるわけではありませんから、後継者に自社株を渡す前に何らかの手を打つ必要があります。
もちろん、自社株承継の対策が事業そのものに悪影響を与えてしまったら元も子もありません。あくまで後継者が引き継ぐ事業の価値を維持、成長させるための合理的な戦略という視点で考えていただく方が良いでしょう。

1)配当を検討する

一つめは、株主配当金の検討です。類似業種比準方式の計算方法で確認したとおり、株主配当金は株価決定要因の一つです。単純なことですが、1株あたりの配当金が低くなれば、類似業種比準方式により計算した株価が下がることになります。
ここでの配当金は基本的に普通配当金が対象ですから、この配当率を抑えて、創業記念配当金など特別配当金を導入すれば、1株あたりの配当金の額は下がります。もちろん、配当政策の変更については株主の理解が必要になります。

2)利益・純資産を検討する

二つめは、利益・純資産の検討です。これは株主配当金の見直しほど簡単ではありません。というのも、利益ある長期的成長に反するものではいけないからです。それでは、短期的な視点と中長期的な視点から確認していきましょう。

短期的な視点

代表的なものが、現社長の役員退職金です。現社長もどこかで必ず勇退時期を迎えますが、その時には、これまでの功績と労苦に見当った退職金が用意されることになるはずです。この退職金支給後のタイミングこそ絶好のチャンスなのです。
役員退職金は基本的に損金(税法上の費用)になりますので、その支払い時には現金という資産の減少とともに、その期の利益(所得)を大きく圧縮します。利益と純資産をともに減らす効果がありますから、純資産方式による価格も類似業種比準方式による価格も引き下がることになります。

中長期的な視点

代表的なものが、高収益部門(事業)や成長が見込まれる新規事業を別会社化するものです。そうすることで、今後の純資産への利益蓄積をある程度防げますし、別会社に移す効果が期待できます。
高収益部門(事業)や成長見込み事業を分社化する方法としては、後継者中心の株主による新会社への事業譲渡や会社分割制度を活用した子会社化などがあります。
これらの対策について、税務上の検証を十分に行ったうえで、経営力を高める方向で取り組めれば効果の高い方法になりますし、その別会社を後継者に任せることで後継者育成や後継経営体制の準備ができます。

図表 自社株承継のコスト戦略

配当 ・普通配当の削減、特別配当の導入
利益純資産 短期 ・役員退職金の活用
・遊休資産の処分
・設備投資による特別償却の活用
・本社等の新築
中長期 ・高収益部門の別会社化(組織再編)
会社規模 ・合併等による規模のランクアップ
少数株主活用 ・中小企業投資育成、従業員持株会などによる第三者割当増資、売却

3)会社規模の変更

会社規模を変更することで、オーナー社長が持つ自社株の株価を引き下げる効果が出る場合もあります。
例えば、グループ経営組織の見直しや経営効率化の一環として2つの会社を合併するケースで、合併の結果、会社規模が中会社2社から大会社1社に変わる場合があります。
会社規模が大会社になれば、類似業種比準方式か純資産方式のいずれか低い価格が自社株の株価になります。もし、合併前の2社が純資産方式より類似業種比準方式の株価の方が低い場合には、合併で自社株の株価が引き下がることが見込まれます。

4)増資の検討

最後は、増資により発行済株式数を増加する方法です。増資の方法は株主割当増資ではなく、社長一族以外を引受け先とする第三者割当増資です。
第三者に新株式を引き受けてもらうことで会社の発行済株式数が増加しますから、1株あたりの利益などが引き下げられることになり、社長一族が持つ自社株の価格総額が下がることになります。
第三者割当増資の引受け先としては従業員持株会が考えられます。持株割合のバランスを考えたうえで従業員に株式を持たせることで、安定株主対策になりますし、従業員のモチベーションアップにつながる効果も期待できます。

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