会計系コンサルティングファームの現場(2)

会計系コンサルティングファームの現場(2)

前ページへ戻る
(以下、資格の学校TAC発行『TACNEWS』2016年8月号より転載)

アタックスグループの西浦道明と林公一

「特殊な世界」、でもそこが「おもしろい」

Q.アタックスの経営理念に「経営者の相談相手」とあります。これを全面的に打ち出しているだけあり、創業当時から経営コンサルティングに軸足を置いてこられました。西浦さんが「経営者の相談相手」になられた経緯をお聞かせください。

西浦 司法試験の世界で例えるなら、「監査」は検察か裁判官の仕事で、「税務」と「コンサルティング」は弁護士の仕事。つまり我々のあるべき姿勢は、徹底的に相手の立場、長期繁栄の立場に立つことであると私は解釈しています。アタックスはコンサルティングからスタートしましたが、幸運にも9年後に、当時名古屋で一番大きかった税理士事務所と合併できたので、税務も兼ね備えた形になりました。

私は若い頃から経営に興味があったので、社長になりたい、またはもし社長になれないなら、社長の相談相手になりたいと考えていました。財務のノウハウやツールがあれば、若いうちからでも社長とフラットに話ができるし、指導やアドバイスもできる。「そんな職業ならおもしろい。それが私のライフワークだ」と思ったのです。

何より中堅・中小企業は圧倒的に経営のわかる人材が不足しています。そこで大企業並みの人材を私たちが専門家として育て、中堅・中小企業をサポートすることによって成長を支援する。中堅・中小企業のことを理解し、悩みを解決する専門家として、経営者が何を求め、どうすれば喜んでもらえるのか。そのサービスラインを自分がやれるところから揃えてきました。絶えず新しいことにチャレンジして、人材も揃えていく。そこからのスタートでした。

Q.林さんは最初から中堅・中小企業の経営コンサルティングをやりたいと考えて、アタックスに入られたのですね。

 やりたいというより、経験してみたかったんです。私はずっと資本の論理の世界で生きてきて、海外と大企業のM&Aの経験から、資本市場とどう向き合いどうやっていけば良いのかは肌身にしみていました。だからこそ、そうではない世界――対置の概念として「資本と経営が一致していて、資本の論理が通用しない世界」がどういうものかを見てみたかったのです。そこを経験すれば、新境地に入っていける。自分で言うのも何ですが、資本の論理が話せ、かつ、オーナーの資本の論理ではない非合理的部分の話もできる――そんな会計士は、世の中にそう多くはないですから。

私は西浦とは入り口が違って、経営というものには全く興味がなかったんです。M&Aやデューデリジェンスで徹底的に企業分析をして、「この会社の良いところ・悪いところはどこか」ということを数字で分析するのがすごく楽しかった。ですからアタックスに入った頃も、その延長線上でものごとを考えていたんです。

ところが、実際に中堅・中小企業の社長と相対すると、分析だけでは何も解決しない。実際にアクションを起こし、行動に踏み出さなければ意味がないなと感じ始めたんです。加えて、中堅・中小企業の社長相手の仕事のほうがより「人間味」があって、自分の性分に合っていると思うようになりました。多くの中堅・中小企業の社長は、会社のために多額の個人保証をやっている。つまり「会社の破産=自分の破産」です。だから真剣度が全然違うんです。常にそうした厳しい局面にいるから、たまに羽目を外したいという社長の気持ちもわかるようになってきたのが楽しいですね。

西浦 部下は言うことを聞いてくれないし、世の中は思うように回らないし、大変なことだらけ。引きこもってしまったら自殺したくなってしまいそうなので、自分から楽しく明るくしていかなくてはいけない。倒産しそうでボロボロだけれど、日焼けサロンに通って元気に見せているような社長もいます。特殊な世界ですが、でも、そこがおもしろいんですよ。

 

いま何をすべきか、「選択肢を並べろ」

Q.大変興味深いお話ですが、実務を経験していない若い世代には、どう伝えられるでしょうか。

 上場企業のコンサルティングは「べき論」を押さえることが重要です。ところが一般的には人材不足である中堅・中小企業は「べき論」を言っても動きません。動かすためにはどうすればいいのかを考えないと、コンサルティングはできないのです。ですから私は自社の採用面接で「なぜ中堅・中小企業のコンサルティングをやりたいか」が明確でない方はお断りしています。

「べき論」だけを言う先生ではクライアントとの関係が長く続かないからです。それくらい「コンサルティング」とは泥臭いんです。時にはただただ社長の飲み相手になって話を聞くだけの日もあります。でもそういうこともやりながら、言うべきところではしっかりと「べき論」もぶつける。この駆け引きができないと、現場ではやっていけません。どうやって若い方にそこを理解してもらうかというと、実際に社長とぶつかり合ってもらうしかないですね。

西浦 はっきり言えば、社長によっては企業コンプライアンスという意識さえなかったりします。「まずは何よりも、儲けなければ話にならないだろう」。そんな考え方の社長はたくさんいます。経営は弱肉強食の世界です。ですから若い方には、時々その弱肉強食の世界に入ってもらうしかない。ひどい言い方をしていますが、中堅・中小企業の社長は誰からも守ってもらえないんです。少しでも気を抜くと潰されてしまう。その中で生き延びていかなければいけない方々なので、お付き合いをしていると、煮え湯もいっぱい飲まされますが、ものすごく鍛えられるんです(笑)。

Q.中小企業経営者との関わりの中で印象に残るエピソードはありますか。

西浦 ある時、まだ社員が数名しかいない企業の経営者から電話がかかってきて、「すばらしいビジネスを見つけた。これで2年後に上場したい。手伝ってくれないか」と言われました。そこで名古屋本社から10数名をサポートとしてその企業に送り続け、2年後に見事上場を果たしました。その後どんどん大きくなっていき、今ではすっかり著名な企業になっています。
あるいは、「このままでは生き残っていけない」、「助けて欲しい」と言ってきた数社の小売業を集約して上場サポートをしたこともあります。

Q.そうした企業と相対する時、アタックスとしてどのようなサポートをするのですか。

 一番大事なのは、徹底的に話を聴くということでしょうね。税理士法人とコンサルティング会社というフィールドで私たちができるのは、結局、社長にとっての「選択肢を並べる」ことです。とにかく社長の話を聴いて、この会社がやるべきことは何かを判断して選択肢を並べ、社長が決めやすいようにゴールを明確にしてさしあげるのです。

私たちは「社長がAというゴールを望むのであれば、そこまでの道をサポートしていきます」というスタンスですね。私たちはあくまでも「社長の最良の相談相手」であって「決定者」ではありません。社長が決定できるように、もれなくきちんと選択肢を指し示してさしあげて、社長の望む方向にサポートする。あくまでお客様の声・ニーズをきちんと聴いて、伴走する。それが私たちのやるべきことだと思っています。

前ページへ(1/4) 次ページ(3/4)へ

TAC NEWS掲載記事一覧へ

LINEで送る
Pocket

ページ上部へ戻る