新規事業立ち上げ 経営者の仕事は“次の一手”~3つの方向性と種蒔きの重要性

経営

一昨年から続いているコロナ禍により経済環境の低迷が続いてきましたが、今年の3月にまん延防止等重点措置が解除されて以降は、経済環境は徐々に回復してきており、筆者の顧問先企業の業績も回復傾向にある先が増えてきました。
※ただし、足元では再び感染者数が増加しており、今後も予断を許さない状況かと思います。

コロナ禍での厳しい環境の中では、いかに売上を維持するか、いかに固定費を抑えるかといった守りの経営を考えなければなりませんでした。

一方で、業績が安定しているときに考えるべきこととしては、新事業の種蒔きが重要であると筆者は感じています。

新規事業を立ち上げる際の3つの考え方

どのような新事業を立ち上げるかを検討する際の考え方として、以下の3つから整理しています。

①水平型
今まで行っていた事業と同じ機能を、他の市場などへ拡大する
②垂直型
今までの事業のバリューチェーンの川上や川下に進出する
③無関連型
自社のノウハウを用いて、まったく異なる事業を立ち上げる

筆者のクライアント先では以下のような事例があります。

事例:①水平型

自動車部品メーカーのケースです。
それまでは国内工場のみでしたが、10数年前に中国工場を立ち上げました。

立ち上げ後、数年間はなかなか収益化できずにいましたが、幸い国内事業が堅調であったため、持ち堪えることが出来ました。

その後、国内事業は東日本大震災などの外部環境の影響により収益が悪化しましたが、その頃には中国事業が黒字化しており、逆に国内事業の収益悪化を補填する役割を果たしました。

事例:②垂直型

美容院を運営している会社のケースです。
当時美容業界は右肩上がりで、クライアント先も運営店舗数を増やし業績を伸ばしていました。

川上への事業拡大として、美容院で使用する美容商材の卸売会社を買収しました。

また更に川上である美容商材のメーカー事業まで事業を拡大しました。

現在は、少子化や足元でのコロナ禍などで美容業界は縮小し、当社の美容院事業も縮小を余儀なくされておりますが、メーカー事業が収益の柱となり経営を支えています。

事例:③無関連型

冬のイベント商材を企画し、海外の協力工場へ製造委託している会社のケースです。
当社ビジネスは冬に集中していたため、夏の閑散期対策が重要な経営課題となっていました。

そこで、当社の企画力や海外協力工場を背景としたモノづくり力を活用し、夏物商品を開発しました。

それにより閑散期であった夏場にも売上が上がるようになり業績が安定しました。

現在は、どちらも季節商材で波があるため、通年で売上を上げられるアイテムの立ち上げを行っています。

3つの事例に共通していること

①②③いずれの企業も、業績が安定している時期に新規事業を立ち上げ、新規事業が軌道に乗るまでは既存の事業が支え、既存の事業が低迷したときに種蒔きしていた新規事業が花開き、既存事業の低迷を支えるというサイクルで、経営の安定化を図ることが出来ました。

中小企業の場合、新規事業の立ち上げをミッションとする部署を設ける余裕が無いケースがほとんどだと思います。

そのため、中小企業における新規事業の種蒔きについては、経営者が考えていかなければならない重要な経営課題です。

事業にはライフサイクルがあり、いつまでも好業績が続いていく保証はありません。

本業の業績が悪化してからでは、新規事業の種蒔きをする余裕が無くなってしまいます。

そのため、本業の業績が安定している時期だからこそ、新規事業への種蒔きを意識すべきではないかと思います。

以上、今回のコラムでは、新規事業への種蒔きの重要性について解説しました。

弊社では、新規事業の立ち上げを検討するための経営計画策定のサポートなどのコンサルティングサービスを実施しています。
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筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員
中小企業診断士 辻 裕之
銀行系システム会社、NRIデータサービス(現野村総合研究所)を経て、アタックスに参画。中堅中小企業を中心に、企業再生、M&Aサポート、計画経営推進、管理体制整備、経営顧問業務など幅広い業務にあたるオールラウンダーなプロジェクトマネージャーとして活躍中。
辻 裕之の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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