新型コロナウイルスをのりきるために正しい資金繰り表を作ろう!

経営

自民党は、新型コロナウイルスの影響に苦しんでいる中小企業の支援のため、金融機関による返済猶予措置の継続を政府に提言したようです。

これは、昨年4月の緊急事態宣言以降、中小企業の資金繰りを支えるため金融機関の借入金返済の一時停止、もしくは緩和を可能にする措置です。

中小企業が個別に金融機関に要請をするほか、各都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会の「新型コロナウイルス感染症特例リスケジュール」(以下、「特例リスケ」といいます)という制度を利用して金融支援をえることもできます。

この特例リスケでは、向こう1年間の損益計算書の予測とそれに基づく資金繰り予定表を計画書として作成し、その計画書を取引金融機関が承諾することで金融支援が行われます。

資金繰り予定表の中には、金融機関の返済の一時停止や緩和、場合によっては新型コロナウイルスの制度融資による資金調達等の金融支援策が盛り込まれることになります。

正しく資金繰り予定表を作れていますか?

ここで重要になってくるのが損益計算書に基づく正しい資金繰り予定表の作成です。

中小企業では、損益計算書と資金繰り予定表を別々で作成することがよくあります。

そうすると損益計算書と資金繰り予定表が整合しなくなり、利益がでているのに資金がたまらない、利益がでていないのに資金は減っていない等、なぜそうなるのか疑問に思う場面が多々あります。

中身をみると、設備投資があったり資金調達や返済があったりと整合性があるケースもあります。

しかし、損益計画よりも資金繰り予定表は売上や仕入れを保守的にみていたり、回収や支払いの条件を固めにみていたり、損益計画と資金繰り予定表を作成する前提条件が異なっているケースがほとんどです。

このような資金繰り予定表ですと正しい資金予測ができているとはいえません。

本当に資金繰りに必要な資金総額やタイミングをつかむことができず、適切な資金調達策や金融支援策が判断できないことになってしまいます。

損益計画に基づく正しい資金繰り予定を把握し、金融機関と共有することが金融支援をえるためには重要となってきます。

正しい資金繰り予定表の2つのポイント

私が損益計画と資金繰り予定表をもらい、真っ先に確認するのは以下の2点です。

税引き後償却前経常利益(経常利益+減価償却費-法人税等)
 経常収支(経常収入-経常支出)に大きな差異がないか

損益計画
 資金繰り予定表に基づく売上債権、棚卸資産、仕入債務の予測残高
 異常値がでていないか

①は資金繰り予定表の経常収支は、財務的には税引き後償却前経常利益+運転資金の増減ということができます。

短期間に運転資金構造が変わらない、売上や仕入れ、在庫が年単位では同じトレンドで推移するという前提であれば、①の視点で大きな差異がでてこないはずです。

大きな差異がでている場合には、

  • 運転資金構造の変化が影響していないか?
  • 特別利益や特別損失といった臨時的な項目が影響していないか?
  • 臨時的な支払いをする項目(例:労働保険や固定資産税、消費税の支払い等)が
    正しく反映されているか?

等をチェックします。

①を確認した後に②を確認します。

運転資金のチェックには、簿記の考え方であるT勘定(総勘定元帳)の構造を利用します。

例えば、売上債権のチェックであれば、貸借対照表の月初売上債権の残高に損益計画の月次売上高(税込)を加算(借方側)し、資金繰り予定表の月次売上回収額を減算すると理論上の月末売上債権残高が試算(貸方側)できます。

この残高がどんどん増加していたり、どんどん減少していたりすると想定売上が損益計画と資金繰り予定表とずれていたり、回収条件が固すぎたり、甘すぎたりするのかが把握できるようになります。

このような過程を経て正しい資金繰り予定表が策定されると、この月にこれ位の資金不足に陥るから、この時までにこの対策をしよう、あるいは、特例リスケの制度を利用して借入金の返済を止めて欲しい、という正しい対策の立案が可能になるのです。

昨年からの新型コロナウイルスの影響や今年に入ってからの豪雪など、外部環境の異常時には損益計画に基づく資金繰り予定の把握は、財務戦略を検討する上でも非常に重要です。

経営の視点からの損益計画に基づく、正しい資金繰り予定の把握に努めて、この厳しい難局を乗り越えましょう!

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次
1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
池ヶ谷穣次の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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