“安いニッポン”でいいのか?~コロナ後、サービス業の浮沈を決める価格戦略!

経営

海外から見る日本のサービス業とは

“日本のいいところはここ”を情報発信する動画サイトがあります。

その動画では、各国を訪れた結果、日本に定住している外国人が、日本の居心地の良いと思うポイントを列挙しています。

よく聞くポイントかもしれませんが、大きく分けると、
① サービスが高水準・安定・低価格
② インフラ・治安・衛生環境が良い
③ 自由度が高い
が挙げられています。

この中で、特に興味を引いたのは①に関して、“これではサービスを提供する側が大変なのではないか”との発言が複数回あったことです。

やや我田引水ではありますが、これらの発言は、日本では当たり前でも、外国人から見ると“快適ではあるが、価格対比で提供者側に何らかの負担がかかっているに違いない”とサービスを受けている側が思ってしまうような価値を提供していることに他なりません。

1980~90年代頃に、よく言われていたのは、日本の製造業は生産性が高いが、サービス業の生産性は低いということです。

為替相場は、海外取引可能な製造業の製品で為替が決まるため、円高になるが、海外と価格競争がなく、生産性の低い国内サービス業のコストを負担するため、競争力が高い筈の製造業がしわ寄せを受けている、という論調でした。

ところが、既に(海外との製品の売買の結果である)貿易収支は近年、ほぼトントンで推移する一方、サービス収支は改善傾向(旅行収支は黒字化)にあります。

つまり、製造業は平均的には往年の競争力の優位を失ったが、国際旅行客の増加に伴い、“日本のサービス”の価値が国際的に認識され、むしろ現在は、製造業で決まる為替が円安になるため、日本のサービス業がしわ寄せを受け、国際相場的に安いサービスを提供するようになった状況と考えても良いと思います。

日本は、冒頭の外国人の発言にもあるように、全体でみるとどこでも比較的安定した水準のサービスが受けられることが素晴らしいメリットであるにも関わらず、個別にみると差別化しにくくなり、結局価格競争に陥り、提供者自らがデフレスパイラルを招いているような気がしてなりません。

私たちの生活にデフレはどう影響する?

ちなみに、デフレと言われますが、色々なものの値段は本当に下がっているのでしょうか?
そこにも疑問があります。

iPhoneの現在の最高機種であるiPhone12Pro Maxは12万円程ですが、10年程前に販売されたiPhone4は5万円でした。iPhoneだけではありません。

多少、筆者の趣味も込めてピックアップすると、スバルのレガシィの(2Lターボ、限定車除く)は1989年発売当時の265万円から、2009年の最終型では360万円に、SONYのコンパクトカメラRX100は、2012年の発売から現在(最新型は2019年発売)迄に7回バージョンアップをしていますが、価格は約7万円から15万円に上昇しています。

因みに、いわゆる物価(消費者物価指数)の1990年から直近までの上昇率は12%程度なので、上述のiPhoneやレガシィ、RX100等は、(性能も上がってはいますが)明らかに“インフレ”です。

傾向としては、日常品や汎用品ではデフレ傾向がみられるものの、趣味・嗜好品等では上述のように、バージョンアップ等の機を捉えて、実質的な値上げを行っているようなものも多くみられます。

興味があれば、多少高くても構わない、と言う層が相当程度存在することを示唆しています。

製品と異なり、特に対面型の対人サービス等は、見えるような形でのバージョンアップや、大幅な生産性の上昇等には一定の限界があります。

サービス業は価格引き上げのチャンス!

一方で、供給に限界がある中で、コロナ後、世界の人々による需要が拡大することが予想され、それは、日本人では気づかない価値に気づいてもらえる機会が増えることにもつながります。そこに価格引き上げのチャンスが存在すると考えます。

今現在、コロナ禍もあり、来日旅行客が大幅に減っています。

特にインバウンド需要を取り込んでいたサービス業は、非常に厳しい状況に陥っています。

ただ、いずれは終息を迎え、海外観光客の足も徐々にではあれ、戻ってくることでしょう。

その時に“日本はなんでも安い国だ”と思われるのか“多少高いが、このサービスならその対価を払う価値がある”と思われるのかで、日本のサービス業の行く先は大きく変わってきます。

“良いサービス”を“正しい対価”で購入してもらう。

一企業の取り組みで出来ることには限界はありますが、コロナでインバウンドが壊滅したこの危機を奇貨として、コロナ後の価格戦略をしっかりと見つめなおすべきではないでしょうか。

筆者紹介

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株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
松野賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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