「赤字体質企業」の危険度!~2019年版「中小企業白書」はこう読む

経営

白書から見る中小企業の動向

今年も4月に2019年版「中小企業白書」が公開されました。毎年どんなテーマが話題になるのか、楽しみに眺めています。

今年の白書は、大きく3部構成になっています。

第一部は平成30年度(2018年度)中小企業の動向
第二部は経営者の世代交代
第三部は中小企業・小規模企業経営者に期待される自己変革
と結構面白そうな話題でした。

第二部は、後継者問題を取り上げており、最近の世情を反映していると思います。
また、第三部は、IoTやフィンテック等の活用事例を取り上げ、中堅中小企業にとっての活用方法を教えてくれるところは、なかなか読みごたえがありました。

是非、経営者の皆様には毎年一度は見ていただきたいものです。

財務データから見た中小企業の実態

その中で特に私が興味を持ったのは、第一部 第三章にある「財務データから見た中小企業の実態」です。

その中の一つに2007年度と2016年度の2期間にわたり財務データを比較できる会社63万社をピックアップして、自己資本比率の変化をみた表がありました。

その表によると、2007年度の自己資本比率(純資産÷総資産)がマイナス20%未満だった会社(マイナスということは債務超過である、言い換えれば資産より負債の方が大きい状況)の内、2016年度も自己資本比率がマイナス20%未満だった会社は、78.6%であったというものです。
マイナス20%未満だった会社の内、自己資本比率が10年後にプラスに転じた会社は、11%しかなかったということです。

逆に2007年の自己資本比率がプラス40%以上だった会社の内、70%もの会社が10年後の自己資本比率も40%以上だったようです。
プラス40%以上だった会社で債務超過に陥ってしまった会社は6%程度だったそうです。

自己資本比率が0%未満マイナス20%以上の企業の内、10年後も自己資本比率が0%未満マイナス20%以上の企業は28%でした。
さらに0%未満マイナス20%以上の企業の内、38%以上の企業が自己資本比率マイナス20%未満になっていました。
67%の企業が、実質自己資本比率マイナスの世界から抜け出すことができないという状況です。

やはり、赤字だから
→投資ができない
→顧客ニーズを捉えられない
→売上が上がらない
→結果として連続赤字
の構図が容易に想像できます。

企業は、一度マイナスのループに入っていくと、そんなに簡単に這い上がることはできません。

このマイナスのループに入らないようにするためにはどうすればいいのでしょうか?

設備投資が財務パフォーマンスに与える影響

そのヒントが同じく白書の第一部第三章の後半に記載されている「設備投資が財務パフォーマンスに与える影響」にあると思います。

売上、総資産営業利益率(企業の総合力を示す指標で、営業利益÷総資産)、現預金、従業員数において、設備投資を積極的に行った企業が5年後はどんな成長率だったかを分析したものです。

結果はすべての指標において、設備投資直後は悪化したがその後は順調に成長していました。
設備投資というのは、将来に向けて自己を変革し続けることの覚悟だと思います。
その意識を維持できれば負のスパイラルに入ることなく、企業の生き残りを図ることができると思います。

この話は、感覚的には読者の皆様もわかっていることだと思いますが、こうやって客観的なデータで示されると、リアルに負け組に入ってはいけないということを意識させられます。

アタックスグループも、企業が負のスパイラルに入らぬよう、先を見据えるための中期経営計画策定サポートや、経営感覚のある管理職を育てる人財教育を行っております。
 

中期経営計画策定

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー
株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役会長
公認会計士・税理士 林 公一
1987年 横浜市立大学卒。KPMG NewYork、KPMG Corporate Finance株式会社を経て、アタックスに参画。KPMG勤務時代には、年間20社程度の日系米国子会社の監査を担当、また、数多くの事業評価、株式公開業務、M&A業務に携わる。現在は、過去の経験を活かしながら、中堅中小企業のよき相談相手として、事業承継や後継者・幹部社員育成のサポートに注力。
林公一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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