新型コロナ常態化に備えた経営~生き抜くための3つの計画とは?

経営

本年3月期における上場会社の定時株主総会は、6月26日(金)に最も開催が集中することが見込まれており、特定日の集中割合は、例年と大きく変わらない傾向にあります。

ただし、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、例年と大きく変化していることが、2つあります。

本年における定時株主総会の傾向

三密の状態を避けて開催

まず、例年通りに定時株主総会を開催した場合、会場において、いわゆる三密の状態が生じることは避けられません。

そのため、株主に向けて事前に株主総会の内容を通知する招集通知内に、「株主の数を一定程度限定する」ことを想定した場合や「原則として会場への来場をご遠慮いただく」ことの記載をほとんどの企業が行っております。

これが大きな変化の1つ目です。

ほとんどの企業が今後の業績予想を未定と回答

次に、上場会社においては、定時株主総会開催前に、決算の速報版である「決算短信」が発表されます。

「決算短信」は基本的に決算日から30日以内、遅くとも45日以内に発表するルールになっており、その期限である5/15までに決算を発表した3月期決算企業の約6割が2021年3月期の業績予想を「未定」としたことです。

これが2つ目の変化です。

業績予想は、義務ではありませんが、例年であれば9割を超える会社が予想値を開示しています。

本年度においては、上場会社といえども、来年3月までの先の業績を見通すことが困難になっていることを表しています。

先を見通すことが難しい時代に計画はいらない?

業績予想が立てられないという点では、中堅中小企業においても同様の傾向が見られます。

新型コロナウイルス感染拡大前に作成した年度計画は、コロナ感染の影響を考慮していないため、直近月の月次決算は、大幅に計画利益の未達となっています。

計画修正を行おうにも、新型コロナウイルス感染症の収束時期がみえないため、「計画がなくてもやむをえない」と考える経営者が多くなってきています。

しかしながら、このように経営が厳しい状況だからこそ、計画を持たない成り行き経営では、ますます企業継続の危険性が増大します。

厳しい環境下でこそ立てるべき3つの計画

そうした危険を回避するためには、次のような計画が必要です。

1.安心した経営を実現する短期資金計画

企業が危機になったときに一番必要なものは「資金」です。

最低でも今後半年間、資金不足が起こらないことを確信できる短期資金計画が必要になります。

2.他社動向等も勘案した超短期収益改善計画

新型コロナウイルス感染拡大による消費消滅は、私たちが今までに経験したことがないものであり、どの会社も手探りで、今後の収益改善策を模索している状況です。

このような状況の中で、現時点で有効と考えられる収益改善策を考える際に、過去の経験は通用せず、確実性の高い施策を策定することは困難です。

そのため、同じような状況に陥っている同業他社の優れた取組事例で、良いと考えられる施策は全て実施することとし、施策毎に、まずは1ケ月程度の収益改善の数値目標を明確にし、それを具体的な計画にします。

その振り返りを通じて、効果があるもの(ありそうなもの)は継続し、効果のないものは次の施策に切り替えることにより、短い期間で経営サイクルをまわしていくことをお勧めします。

3.シナリオ・プランニングを活用したリスク対応化計画

シナリオ・プランニングとは、未来の経営環境に関して、起こりうる複数のシナリオを描き、それが実現した場合の対策を明確にすることで、将来におけるリスクに備えるための分析手法です。

このシナリオ・プランニングを活用した代表例として、石油会社のロイヤル・ダッチ・シェルがあげられます。

同社は、第一次石油危機を迎える前に、石油危機が訪れることを前提にしたシナリオに基づいて準備を整えていたため、すばやい経営陣の意思決定によって危機を乗り越えました。

現代のように不確実性の高い時代においては、単一の計画だけでなく、リスクに応じた複数の対応化計画が必要になります。

そもそも現代社会は、VUCA(ブーカ)※という言葉どおり、あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が次々と発生するため、将来の予測が困難な時代であるとの認識でした。

※VUCA(ブーカ)とは、
「Volatility」(変動性)
「Uncertainty」(不確実性)
「Complexity」(複雑性)
「Ambiguity」(曖昧性)
の頭文字を取り、
環境の変化が速く、先の予測が困難な現代社会を表した言葉。

今後、VUCAが常態化する可能性が高いと思われます。

どんなに経営環境が変化しようとも、将来の自社のあるべき姿を実現するためには、その道筋となる計画は非常に重要だと考えています。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 錦見 直樹
1987年 富山大学卒。月次決算制度を中心とした業績管理制度の構築や経理に関する業務改善指導を中心としたコンサルティング業務に従事。グループ7社を有す中小企業の経理・経営企画部門出向中に培った豊富な経理実務経験を武器に、経営者、経理責任者の参謀役として活躍中。
錦見直樹の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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