資金調達の要!金融機関を選ぶ時代の到来

経営

昨秋、帝国データバンクより「全国メーンバンク調査(2014年)」の結果が公表されました。

結果は、地銀がシェアを拡大する一方、それ以外のメガバンクなどの都銀をはじめ、第二地銀・信用金庫・信用組合などのシェアが減少するものでした。これは、調査を開始した2009年以降見られる趨勢です。

この背景には、メガ(都銀)が海外指向を強める一方、信用組合や信用金庫が受皿となっている中小・零細企業が起業の減少や廃業の増加などもあってシェアを落とし、その隙間を埋める形で地銀のシェアが拡大しているのではないかと推察します。

これらを踏まえて、今回は取引銀行の選び方について少し考えてみたいと思います。

起業の頃は政策公庫に融資を受け、その後事業の安定・拡大につれて信組・信金と取引し地銀を経て、最後にメガ(都銀)と取引する。

このように企業の成長ステージによって取引銀行を変え、最後はメガ(都銀)と取引できる企業になるのが一種のステイタス、という考え方はまだまだ根強いようです。

実際にコンサルの現場では、取引銀行を減らそうとすると、メガを含めた大手金融機関を残そうとする傾向が多々見られます。

それだけメガ(都銀)との取引にはメリットがあるということになりますが、そのメリットとして考えらえるのは、次の3項目です。

(1)大規模な資金需要への対応、
(2)高度な金融技術や国内外の情報網、
(3)相対的に低い金利

以下、順に見ていくことにします。

(1)大規模な資金需要への対応

銀行の規模が大きい方が当然大口の資金需要に対応しやすいですし、銀行の自己資本に応じて1社あたりに貸せる上限が決まっているので、制度上も、大手の方が大きな資金を貸し出すことができます。

もっともこれは、メガなら数兆円、地銀上位で数千億円、信金・信組上位で数百億円、通常の信金・信組で数億円から数十億円程度となるため、この上限まで貸すのは極めて例外的と言っていいでしょう。

さらにこの数分の1程度の貸出であれば、通常の各金融機関における相応の大口融資先に該当することになるかと思います。

つまり、数億円程度なら地銀はもとよりある程度体力のある信金・信組でも対応できる金額であり、現に信金等が数十億円単位の融資を実行しているケースもみられます。

しかしながら、これらを上回る資金が必要となった場合は、やはり大手の金融機関との取引がないと円滑な資金調達に支障が出る懸念も出てきます。

(2)高度な金融技術や国内外の情報網

日常的な取引に限れば、今や大手と中小金融機関との間で然程の差はないように思えます。

一方で、高度な決済サービス、デリバティブ等の金融技術、全国的・グローバルなM&A情報等については、やはり大手の銀行の方が充実しています。

(3)相対的に低い金利

相対的には規模の大きい方が経費効率等の観点から低い金利を提供しやすくなりますが、金融緩和の影響からか、昨今は大手金融機関と中小金融機関との差異は比較的小さくなっているようです。

さて、こうしてみると大口の資金調達や海外情報が必要な会社には大手金融機関と付き合うメリットがありそうです。

それでは地域金融機関と付き合うメリットは何でしょうか。 一つは地域に対するコミットです。

国内市場の伸び悩み等を背景に、メガ(都銀)等の大手金融機関は海外指向を強めています。

合計資産が3メガだけで日本のGDPの6割を超えるような、大手金融機関にとってはやむを得ない行動でしょう。

一方で、地域金融機関は、その経営スパンや地域における歴史的な経緯もあって、地元の個々の中小企業の運命を経済合理性だけでは決めず、ある種の親身さを持って対応することも少なくありません。これは、言い換えるならば人間関係の深さとも言えるでしょう。

先述しましたが、そこそこの取引規模でも、地域金融機関にとっては重要な大口取引先になります。

そうなれば、当然、支店の担当者や支店長だけでなく、本部の関連部署の担当者・責任者・役員、場合によっては地域の繋がりの中で経営者と面識を持つことになります。

面識があるからと言って、無理な融資を期待する訳にはいきませんが、組織の下から順番に稟議を上げるのに比べ「判断が早い」「組織として対応をしてもらいやすい」などは、中小企業が融資を受けるにあたって、大きなアドバンテージとなり得ます。

今後は、自分の会社が今必要としている、又は将来必要となる、金融サービスのレベルと規模はどの程度かをしっかり見極めることが大切です。

会社にとって一番必要な機能を安定的かつ円滑に提供してくれるという観点で、取引する金融機関やメーンバンクを選択する時代が来ています。

銀行との取引での疑問や悩みなどあれば、ご遠慮なくご相談ください。
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筆者紹介

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株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
松野賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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