有事になって初めて問われる平時の経営管理能力

経営

日清製粉、日本製粉、昭和産業の製粉大手3社が、食品メーカー向けの業務用小麦粉の価格を10%強引き上げるという。

国内消費量の大半を米国や豪州からの輸入に頼る小麦は、政府がほぼ全量を買い付けて製粉会社に売り渡す。その政府の売り渡し価格は、国際相場を反映して決定される。新興国の需要増や投機マネーの流入で相場が高騰したことにより、政府は小麦の売り渡し価格を引き上げた。

近年は原料価格や資源価格等の乱高下が激しい。記憶に新しいところでは、2008年前半の原油等の資源価格や食品原料価格の急激な上昇と、2008年秋の俗に言うリーマンショックに端を発した大幅な価格の下落がある。

リーマンショック後は、多くの企業が大幅な需要の減少に見舞われ赤字に陥った。しかし、筆者が直面した企業再生の現場においては、上述の価格上昇時に利益管理をきちんと行い即座に販売価格の転嫁を行っていれば多額の損失を免れた企業や、会社が定めたリスク管理方針に基づいてデリバティブ取引を行っていれば価格下落後の多額の損失計上を避けられた企業等、本来行うべき経営管理を行っていれば会社の窮状を回避できたと思われる事例を多く目にしている。

管理という業務は直接的な利益を生み出さない。また、管理は将来問題が生じることを未然に防ぐために行われるものであり、平時にはその効果が目に見えない。そのため、管理という業務は平時には軽視されがちであり、有事に損失が顕在化して初めてその必要性が実感されるものである。

過去を見ても分かるとおり、原料価格や資源価格等はずっと右肩上がりということはなく、短期的には必ず上昇と下落を繰り返す。リーマンショックから約2年半が経過しているが、当時の教訓を忘れて貴社の中で管理という業務がおざなりにされていないか、いま一度確認をすることも必要なのではないだろうか。

<参考記事>
「小麦粉10%強値上げ」2011年4月22日(金)日本経済新聞 朝刊

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 中小企業診断士 伊原 和也
1996年 武蔵大学卒。大手ノンバンクを経てアタックス入社。中堅中小企業を中心に企業再生支援、M&A支援、中期経営計画策定支援および株式公開支援等を中心にプロジェクトマネージャーとして活躍中。
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