戦う土俵を見極める!スカイマークの決断を他山の石としよう

経営

北米の好景気や円安、原油安を背景に、各上場企業の業績発表は好調なものが多いようです。一方で、シャープなどなかなか以前の輝きを取り戻せない企業もいくつか存在します。

この差はどこから来るのか?と探ってみても、各企業の、それぞれの業態に応じた努力の結果ですので、一概にこれだ!ということはできません。

イメージしかし、「経営判断が正しかったのか?」という観点は、今の時点で判断できるポイントだと思います。

今回は、先日、民事再生法適用を申請したスカイマークの事例でこの点を検証してみたいと思います。

スカイマークは一時、売上営業利益率が19%(2012年3月期)と、世界3位の高収益な航空会社でした。

致命的な判断ミスとなったのは、エアバス社から超大型機「A380」と豪華中型機「A330」の購入を決めたことです。

この後、A330導入によるコスト上昇と搭乗率の低下、及び円安の進行によるドル建てリース料の負担増や燃料費の高騰もあって、A380の支払いのめどが立たず違約金を請求される事態に陥ったのです。

その後の迷走はよくご存じの事と思います。スカイマークが起こした「経営判断」は決して他人事ではありません。

私は、多くの企業再生のお手伝いをしてきました。その中でも不調に至った原因をみると、設備投資の失敗がかなりの割合になります。

そのような会社の経営者は、リーマンショックや大震災を原因にあげてお話されます。それはそうなのかもしれませんが、根本的な原因はリーマンショックや大震災前に行った「大きな設備投資を決断したこと」だと思います。

つまり、大きな設備投資をした後の「リスクの予測」がほとんどされていなかった、これが原因だと確信するケースが多いのです。

話をスカイマークに戻せば、どのような判断でA380を6機とA330を10機の導入を決断したのか?です。

スカイマークの存在意義は「羽田空港を拠点に、低運賃で効率のよい航空会社を実現した第三極」だったはずです。

機材を燃費効率の良いボーイング737に絞って、価格競争を仕掛けてシェアを伸ばしました。この戦略に磨きをかけ続けるべきではなかったのでしょうか。

A380で国際線に参入するとかA330で国内線の大手に対抗することが存在意義なのでしょうか?

確かに、LCCの台頭で価格競争が激化したため、別の路線に活路を求ようとした考え方は十分に理解できます。

しかし、その選択がANAやJALと同じ土俵に上がり戦うという判断で正しかったのでしょうか?

これは結果論ではありません。
「戦略」とは自社の生き抜く場所を決めることから始まります。

折角優位に作り上げた土俵にLCCが上がってきた。この対抗策として、もっと強力な大手ライバルがいる土俵に上がり込んで勝負を挑むことを選択してしまったのです。

本来は、従来の土俵でLCCをものともしない強固な土俵にすべく、機内サービスや料金体系そして、予約システムなどに磨きをかけるべきだったのでしょう。

私は、会社の競争力を高めるまたは維持するのは、徹底した「トレードオフ」だと考えています。

顧客価値を高めるために、やるべきことは徹底してやるが、余分なことはやらない、という集中と選択です。これを、重要な経営判断の軸にすべきだったのです。

スカイマークの浮沈は、中堅中小企業の経営に多くの示唆を与えてくれます。

経営判断だけでなく、その後の提携や資金調達に関しての迷走は、営業や銀行との付き合いなどに経営者が心すべき多くの示唆を与えてくれています。

その中でも、自社の限られた資源の中で、どうビジネスの力を上げて競争を勝ち抜くかという経営判断において、「トレードオフ」を無視した事業拡大や選択をしてしまったことは、大いに参考にしたいものです。

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筆者紹介

株式会社アタックス戦略会計社 代表取締役会長 片岡 正輝
1952年生まれ。アタックス税理士法人の前身である公認会計士今井冨夫事務所に入社。現在は、アタックスグループの統括マネージャーとして、広範囲な知識と豊かな経験という両輪を武器に、経営・財務・会計業務を中心に計画経営の推進、経営再構築、事業承継等のコンサルティング業務に従事、経営者の参謀役として絶大なる信頼を得ている。
片岡正輝の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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