全員経営で高齢者が望む本物の介護を支える

経営

2ヶ月程前、ちょうどNHKの全国放送で同施設が「バリア‘アリー’で介護に革命」のタイトルで30分間紹介されていた、山口県は山口市と防府市で通所介護施設(ディサービスセンターDSC)を経営している夢のみずうみ村を訪問しました。

同施設の創業者である藤原茂代表から、創業時の苦労話などを聞きながら直接施設の案内を受けましたが、まさに「百聞は一見にしかず」でした。

まず山口DSCですが、この施設は藤原代表が2000年に最初に手がけたところで、地元の信用金庫から借りた3000万で建設。その後、様々な苦労はあったものの利用者が増え、大規模施設として増築を行い、現在では1日平均100名の高齢者が利用しているそうです。

同施設は、藤原代表の「高齢者の自立心を失わせない」という介護に対する思いが強く反映されていて、自分で出来ることはなるべく自分でやってもらう工夫が凝らされています。

ハード面では「バリアフリー」ではなく「バリアアリー(有り)」です。実社会で出会うバリアアリーに高齢者自身がカラダを動かし、対応策を学習することが社会生活を円滑に送ることに繋がることとなります。
 
ソフト面での工夫は高齢者に自己選択・自己決定方式を提供していることです。朝9時、送迎バスで利用者が続々到着。利用者は今日一日、自分が何をするかを自分で決めます。

温水プール(立派な設備であった)、パン焼き、陶芸、木工などの他、カジノ・麻雀、ゴロ寝など、ユニークなリハビリメニューが用意されていて、利用者の一日はメニューボードの自分の枠に何をするか時間単位のメニューカードを張ることから始まります。
 
筆者が現場を案内されたのは、午後2時頃ですが、温水プールでは10名程の人が水中ウォーキングをしていました。麻雀をしている4人組も。パン焼きをしている10名弱の女性もいました。

ちぎり絵をしている数名の女性もいて、壁に掛けてあった作品は見事な出来栄えでした。筆者には高齢者一人ひとりが、好きなことを楽しそうにやっている雰囲気が伝わってきました。
 
山口DSCの次に、漁港の近くの高台にある防府DSCも訪問。施設のリハビリメニューはほぼ一緒ですが、利用者は山口DSCより多く、毎日110名の高齢者が利用しています。

山口DSCとの違いは海辺に位置するので景色の良いこと、漁港に係留されている施設所有クルーザーでの魚釣りがメニューに加えられていることでした。
 
山口・防府のDSCを見学した後、「職員の皆さんがそれぞれの持場で働いていますが、担当割はどうなっているのか」と尋ねたところ、藤原代表から次の様な説明を受けました。
 
「スター制度という仕組みがある。スターは職場のその日のプログラムリーダー役で、全員が毎日交代で務める。このスターが翌日の施設の職員各人の仕事の予定を30分単位で決めている。予定表は慣れてくると1時間程度で作ることができるようになる」と。考える職員を育てることが狙いだそうです。
 
山口・防府のDSCの玄関には「人生の現役養成道場」という大きな看板が掲げられていました。

これこそが、藤原代表の介護に掛ける思いであり、このことに共感し、自分達で生きがいと働きがいを育む多くの職員が夢のみずうみ村を支える全員経営です。
 
今、藤原代表は新たな取り組みとして「夢のみずうみ村おおつち」を岩手県大槌町に建設する為の一億円募金運動を始めています。
 
この運動には東日本大震災の後、東日本の沿岸で悩み苦しんでいる子供や高齢者が緊急避難的にいつでも飛び込んでこられる場を提供したいという、藤原代表の思いがあります。
極めて社会性の強い事業です。経済的に成り立たせることが困難であることから建設資金の募金運動を始めたそうです。
 
そもそも夢のみずうみ村の事業は、超高齢化社会を迎えた日本の問題解決型事業であり、本来は国が手掛けてもおかしくない事業です。

こんな中で経済的には厳しい現実ですが、民間の施設として事業を運営している藤原代表はじめ全職員の頑張りには本当に頭の下がる思いです。

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
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